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 座学。最終章

 カミミヤファミリー涙のバースデーから十年。


 現在の大陸の状況は、魔王国の大森林の北の山脈の北側に大陸最大の領土を持つホルカイ帝国。

 領土の凡そ北半分は極寒で永久凍土の土地。鉱物資源は豊富だが食料は輸入に頼っている。


 魔王国の大森林の西の山脈の西側には大陸二番目の領土のノルトハン王国。

 穏やかな気候で麦などの穀物類や酪農、漁業も盛んで大陸随一の食料国家。


 魔王国の大森林の南側には巨大な湖が在り、その南側に三番目の大きさを誇るキューレット王国が在る。

 国内事情はノルトハン王国に次ぐ国家だった。


 そして一番小さな東の王国。トウショウ王国。

 今では大森林東側から東の海まで五百キロほど。南北に千キロほどの小国になってしまった。




 魔王国の大森林の奥。

 最終章のお勉強会が始まって数か月後の夕刻。

 小屋のキッチンのテーブルを挟んで向かい合うアイファウストとクラウス。


 「なぁクラウス。本当に行っちまうのか?」


 「もう。若様にお教えできるものの、持ち合わせがございません」


 「いや、まだまだあるだろう。

 最終章以降のながぁぁいお勉強会でも疑問も沸いた」


 「すべて終わりがけは寝ておいででした」


 「だからじゃぁぁん」


 「もう冒険者としてはCランクの上。Bと言っても過言ではございません。十五歳の初期登録で登録時はFになりますが。

 一般常識から一般教養に貴族の風習から嗜み、ダンス迄。それに帝王学。この大陸の文化から風習。地理や地政学全て。

 大陸全体の現在の情勢と今後の予測。

 冒険者の全て。

 イサム様とサチ様から頂いた日本国の文化と技術。まぁ若様も五年前に前世の記憶がお戻りなった転生者ですから、わたくしめよりお手のものでしたが。

 それに魔法の全て。

 全ての魔法が上位ランクで行使可能。本来はあり得ませんがエルファサ女神様に直接お会いになって恩恵を賜っているので当然と言えば当然。

 この上、この老骨に何が出来ましょうか」


 「ほら。一緒に居るだけでも楽しいし」


 「町での振舞も幼き頃からお教えいたしました。ゴロツキをパンチ一発でのした五歳からです」


 「こんな可愛い俺をここに一人置いて行くの?寂しいなぁぁ」


 「お可愛いは否定しません。ですが、わたくしが一月調査や仕事で帰らぬ時でも立派にお過ごしでした」


 「ほら。クラウスが帰って来るって解かっていたし。ねっもう少し。頼む」

 (拝んどこ)


 「なりませんな。若様が成人するまでとイサム陛下とサチ妃殿下とのお約束でございます。

 本日、この後は寝るだけ。丁度良いです。わたくしめを終の棲家に笑顔で送ってください」


 (はいダメでしたぁぁ)

 「じゃぁさ。俺もそこに行くよ」


 「はぁぁ。仰ると思いました。

 わたくしめもそろそろ結婚がしとう御座います。そこに良い人を待たせております故、お連れすることはできませんな」


 「そうなの?」


 「はい。ですから、こう致しましょう。

 冒険者登録をなさり、わたくしめと同じ冒険者でSランクに成って、一年が経過したらおいで下さい。

 ささやかながらお祝いをさせていただきます。

 アバターと言う名の偽名の使用は止め、新たな偽名を使いますが、Sランクともなれば住居は一発でお解りになるでしょう。

 いかがですか?」


 「言ってたねぇ。冒険者登録をノルトハン王国でってこと?」


 「さようです。キューレット王国でわたくしめがSランクになりました。

 それにお伝えした通り現地の者は若様に無視を決め込まれます」


 「クラウスがSランクとして居たから俺が可愛いがられた」


 「さようでございます。わたくしと懇意にするために若様を可愛がることが一番手っ取り早いですからね」


 「嫌だねぇぇ」


 「自身を利するための最善策は何か。弱者の生きる本能でしょうな」


 「まぁねぇ。やっぱり人様は怖いよねぇ」


 「アイファウスト様を未だに血眼で探しているトウショウ王国やホルカイ帝国ではお止めください」


 「あぁそれは判っているよ。でも、そろそろ諦めてくれないの?」


 「無理です」


 「即答なの?」


 「はい」


 「理由は?」


 「カミミヤファミリー涙のバースデーの日にエルファサ女神様が仰いました


 『アイファウストが認めた者達、その周りの者も国王。貴族以上に何不自由無く大いに幸せにしてやる。

 使徒であるアイファウストが認めれば、創世の女神であるわたくしの正式な信徒となるのだ。幸せにならないはずがない』

 

 こちらがございますので国はおろか、民衆も必死」


 「何よそれぇ。そんなこと口外しちゃったのぉぉ」


 「ホルカイ帝国は慢性的な食料不足を改善したいために若様を飼い殺しに」


 「はっ?ちょいと待っておくんなまし」


 「どないなさいました?」


 「一人旅は?」


 「行くこと自体に問題は無いでしょう・・ただ、身バレなさらないように。

 知っている者が大半ですからな。せめて部品でもと手足がもぎ取られるかもしれませんな」


 「あ”ぁぁぁ・・部品?」


 「手足の一部でも持っていれば【勝組】。幸せになれる。そう思っているでしょうねぇ」


 「俺は【なおいぎれ】じゃねぇぇ」


 「ナオイギレ?」


 「忘れて」


 「それでトウショウ王国はアイファウスト様を国王にし、幼馴染のアイミーナ様を妻にと画策しております」


 「うんなもん顔も覚えていないって。

 それに間違っていたと言え仇の娘さんだよ。無理無理」


 「そうは思っていないようです。殺されて当然。お気が済むまで如何様にでも。と、思っておいでです」


 「好きとか嫌いとかじゃないじゃん。なにそれ」


 「その思いで十年を過ごされておいでです」


 「それにだよ。なぁぁんで自分達がしでかした事を娘ちゃんが責任を負わなきゃダメなのよ。自由に生きさせてあげればいいじゃん」


 「わたくしもそこが解かりかねます。

 色々な詮索や想像は出来ますが全てが中途半端。理解できないと言った方が良いでしょうな」


 「俺が許すっ。だから忘れてっ。て、言えば?」


 「同じでしょうね」


 「そうだ。書簡を送ろう。そうすれば諦めてくれるかも」


 「アイファウスト様が生きている確証を得て、大陸全土が湧きたつでしょう」


 「世界の人達が


 「部品取りに血眼で向かって来るでしょうな」


 「怖いよぉぉ。死んじゃうよぉぉ。

 はぁぁ。関わりたくねぇ。

 ってさぁ。何で部品なの?俺生身の人間だよね」


 「どの様に表現すれば良いのでしょうか?」


 「体の一部。頭の部分。上半身。下半身。足


 「部品と言えば」


 「確かに判りやすいけどさぁ。俺が機械で出来たロボットかサイボーグ。アンドロイドになっちゃうよ」


 「Vtuberではございませんでしたか」


 「それはちっがぁぁう。父さんに聞いたの?」


 「地上から宇宙空間で戦う巨大な人型ロボットに人が乗り込み操作。

 思考はそのままの改造されたサイボーグ。

 完全な機械でありながら人のような知能を搭載したアンドロイド。

 全てサチ妃殿下の受け売りでございますよ」


 「母さんそっち方面に興味が有ったのねぇ」


 「医学を学ぶ為に人型戦闘ロボットの【プラモデル】なる物をご購入し


 「それ嘘だから。全く医学に関係無いから」


 「おかしいですなぁ。イサム陛下はその【プラモデル】から建築構造を学んで、こちらの世界で数多の構造物をサチ妃殿下とお造りになっていらっしゃいますよ」


 「張りぼて。ではないよねぇ。

 あぁあれか。俺の知っているプラモデルの意味とは違うのか」


 「それはどうかは解かりかねますが、サチ妃殿下の人体構造から医療知識は本物でございました。

 それをわたくしに伝授してくださり、若様に継承しているのですよ。

 『人の体など小さな部品の融合体』

 そう仰り、ヒールや各種ポーション。回復魔法の医療知識に必要な医学の時にお教えいたしました通りでございますよ」


 「なるほどねぇ。母さんってお医者さんだったの?」


 「大学の専攻と仰っておりましたな。メカトロニクスと情報通信と仰っておりました。

 ギルドの冒険者カード発券機などはそれの応用とか」


 「医学に全く関係ないじゃん」


 「イサム陛下は同じ大学で建築と地質学を学んでいらっしゃったとか。そこに土魔法が発現しておりますので正に適材適所」


 「母さんのヒールは全く別物じゃん」


 「回復魔法やポーションの知識は【異世界アニメ】と言う教材が役にたったと仰っていらっしゃいましたなぁ」


 「嘘ぉぉん。あぁいや。あながち嘘でも無いかも。

 俺も記憶の中で参考にしている部分は多い。

 特に魔法に関しての物質の化学反応なんかを使うと言う知識」


 「イサム様もそうおっしゃて居りました。

 『魔法とはいかに物質の化学反応や物理特性をリアルに思い描くことが出来るか』と。

 わたくしにもお二人が物理現象や化学反応の基礎知識を伝授下さり、一気に上達いたしました。

 これは秘伝で門外不出。マッドジョイもイフィスも知らない魔法の基礎と応用でございます。

 若様も他言なさいませぬよう。

 異世界人と判ると解剖実験の実験体にされるかもしれませんぞ」


 「いぃぃやぁぁ。

 あれっ?父さんと母さんは?」


 「初代異世界人の能力を知らなかった。

 その息子が異世界人ならもっと凄いかも」


 「のぉぉぉ」


 「それでサチ様はご近所に【ベップ】や【イブスキ】と言う【温泉】が有ったようで『無意識にヒールを習得したのかしら』と、仰っていらっしゃいました。

 その上、イサム陛下の学術研究の現地調査にご同行して、万能の効能を持つ【クサツ】まで行っていらっしゃったようです。

 『クサツの湯で能力が倍増されていたかも』と、ご考察されておりました」


 「絶対に違うとは言い切れないよねぇ。うんうん」


 「その現地調査の夜はお二人で医学知識の習得の為、人体調査と人体実験にも勤しんでいらしたようです」


 「あ”ぁぁ全てが崩れ去ったぁぁ。

 あのねぇクラウス君。両親の生々しいそれを聞く息子の気にもなってよぉ。

 でも凄かったのね」


 「はい。建物が揺れて賄い様達が


 「ちっがぁぁぁう」


 「お二人の存在が無くなったことは、この世界にとって大損失でございました。

 地上を創造していくうえで、創世の女神エルファサ様の右腕と言っても過言ではございません」


 「なるほどねぇ。

 部品取りに関わらないようにしなきゃねぇ」


 「はい。その時は戦略的撤退が一番でございます。下手に対応したり交戦すれば」


 「すれば?」


 「『ご登台を心よりお待ちしておりました。

 長きに渡る逃亡生活でさぞお疲れでございましょう。ゆっくりお休みくださいませ。

 さぁさぁこちらへアイファウスト・カミミヤ王子殿下様』

 と、磨き抜かれた刃煌めく断頭台様が大歓迎」


 「いぃぃやぁぁ死んじゃうぅぅ」


 「逃げるが勝ち。で、ございます」


 「分かったぁ。理解したぁ。とにかく逃げます。逃げ延びます。

 戦略的撤退だね。うん、判った。理解した」


 「はい。怪しいと第六感様がお告げしましたら、全てを顧みず脱兎の如くお逃げ下さい」


 「ラジャー。

 って、死んでバラバラにされない?」


 「それを避けるために逃げるのですよ。恐らくみじん切りでしょうな」


 「イエッサー。

 でさぁクラウスぅ。もう一度確認するけど、この大陸以外に他に島や大陸は無いの?」


 「お勉強した通りでございます」


 「あぁぁ逃げ道が無いぃ。そうだ。ダンジョンに引き籠ろう」


 「冒険者を諦める。それも有りでしょうな」


 「いやいや、諦めないよ」


 「ですからトウショウ王国での冒険者登録はお止めください」


 「帝国は女神の話しを信じて、俺を利用して女神の力を借りようと」


 「はい。すでに数十名の嫁候補や妾候補を選抜し、発見に備えております。もう十年になりますまぁ」


 「娘さん達が可哀そうでしょう。婚期も逃して」


 「それがそうでも有りません。何とかして女神様の使徒様のご寵愛を受けようと、それこそ磨きまくって玉の肌のようです」


 「凄いねぇ。嫌だねぇ。しかも俺、断ったから使徒様じゃねぇし」


 「お戯れを。

 ですからノルトハン王国がお勧めです。先程の女神様のお話しもあまり伝わっておりませんから。

 偽造の通行券も使用できる事はもうお解りですね」


 「これね。最後に見たのは何時の事でしょう。俺の名前がフジミヤ。食堂みたいな名前。もっと他に無かったの?」


 「偽名はカミミヤとイサム様からお聞きした美しく気高い富士山から取りました。大きく育ってください。

 ただ、更新がされておりません。十年前のままですから早めにギルドに行って更新してください」


 「役所じゃないの?」


 「日本国ではありませんよ。役所など存在しません。そう言った住民系はすべて冒険者ギルドが扱っております。

 イサム様が元々あったシステムを利用なさり、今では円滑に運用されております」


 「なるほどねぇ。教えて貰っていないんですが?」


 「自分で調べるのも勉強の内です」


 「今教えてくれたじゃん」


 「うっほん」


 「で、この絶対バレない偽造カードはクラウスが作ったの?」


 「まぁ色々御座います」


 「ほらぁぁ。俺がまだ知らないことまだまだ有ったじゃぁぁん」


 「知らない方が楽しい人生が送れます」


 「これバレてないからいいようなものの。当時、黒目黒髪が疑われていたよ」


 「日本国のように指紋認証もDNA鑑定もございませんからご安心を。

 それにそれらを躱す事も冒険者の嗜みです」


 「またまた難しいお言葉をぉ。お貴族様から指名が入ったらどうするのよ」


 「Sランクは拒否権も有ります。そこに至るまでが厄介ですが」


 「ほらほら」


 「何ですかそれは。もっと自信をお持ちなって人生を謳歌してしてください」


 「あぁ逃げたぁぁ」


 「逃げではございません。戦略的撤退です」


 「クラウス好きだよねぇその言葉。

 物は言いようか?で、ノルトハン王国以外で使ってたレマン君はどうなうっちゃうの?」


 「レマン君は案外有名人となっております。ですからレマン君は消滅します。

 これからは全ての国でフジミヤ君です」


 「聞かなかったからレマン君で通してたじゃないのぉぉ」


 「そろそろもうろくしてきましたかな?」


 「介護する奥さん大変だよ。若い力の俺が必要じゃない?」


 「妻と成るお方はお若いです。必要御座いません。若様に取られる危機感さえあります」


 「えぇぇそんなに若いの?幾つ幾つ?」


 「もう質問は御座いませんね」


 「いや、今質問したじゃん」


 「プライベートはノーコメントです。若様とは言え、プライバシーの侵害です」


 「誰に聞いたのよ、それ」


 「サチ様でございますよ」


 「判ったよ。でさぁ俺ここ三年間町に行ってないじゃん。魔物退治の修行の毎日で。まぁクラウスが居る時は賊退治もしたけど。

 でね、これも教えて貰っていないんだけどぉこの世界のレベルってどうなってんの?素朴な疑問」


 「そうでしたねぇ。必要ではございますな。

 ただ、冒険者ギルドの初回登録時にご説明がございますが」


 「あのねぇ。俺、極端に言えば対人恐怖症じゃん。そりゃ少しは改善はしてるけどさぁ。

 それに絶対ギルドの受付よりクラウスの方が詳しいでしょ。

 俺の大好きなクラウスは天才だもん」


 「仕方御座いませんな。おだてられて木に登りましょう。

 各個人が持つレベルは様々です。魔法。剣。弓など様々な分野でレベルの値や価値が違います。個人特有のスキルも加味されます。

 それらが合わさって集計されたのがレベルとなって冒険者ギルドのカードの他人には見えない裏表記となって現れます。

 その値はギルド職員の一部を除き、見る事は出来ません。本人がお話しすれば別です。ほとんどはその値を口にすることはありません。

 ご参考までに固有スキルは表記されません。


 それでその個人が剣が好きだ。と、仰ってもカードの表記が魔法士となる事もあります。またその逆も然り。

 本人の得意不得意で職種が決まるのではなく、カードの表記が職種となるのです。冒険者登録時にその職種に於けるテストがなされます。

 適応できていなければ講習や実技を経て、再度試験が行われます。これは死亡率を下げるための処置です。

 期間は一か月程度。その期間の食と住はギルドが保証します。最長は二か月。二か月目からは半額自己負担。それ以降は全額自己負担になります。

 二回目以降は全額自己負担。邪な者の防止処置でございます。

 テストの結果で、場合によっては冒険者に不向きとされる事もあります。

 もし、若様が不向きであったとしても大丈夫です。職業斡旋のサービスも整っております。

 合格すれば晴れてカードが貰え、冒険者としてクエストの受注が行えます。


 よくここで勘違いをされるのですがカードが無くても得物の換金は可能です。若様もご存じの通り、若様が狩った動植物でも換金出来ていましたよね。

 もともと存在する狩人や漁師、農夫などまで冒険者登録をしていたら大混乱になります。

 かといってどちらが優先とも限りません。

 一応の線引きと申しますか、暗黙の了解と言うものが存在します。冒険者はクエストを受ける。これが基本姿勢。

 その旅先での狩猟は食い扶持分まで。乱獲をしますとカードに記載されます。


 また特例も存在します。クエスト中に受注していない危険因子が存在している場合はそれを討伐して良い。人命が関わる場合は可能な限り対処する。

 その様な場合に冒険者が逃げていては本末転倒ですから。冒険者とは力を持たない者を救うのが本来の目的。そこに報酬が乗っかているのです。


 カードの特徴をお話しました。

 そのギルドカードに功績が自動的に蓄積されて行き、ランク表記が変わります。ギルドが承認することによって正式なランクとなるのです。

 ですから嘘偽りの報告やクエストの失敗など、全てがギルドで見透かされます。

 イサム様とサチ様がお創りになったシステムです。誰がどうのこうのできる代物ではございません。これは女神様も破壊いたしませんでした。

 もちろんこのシステムに異を唱える者も十年前までは闇ギルドとして存在しましたが、カミミヤファミリーの日にこちらは女神様が全てを破壊。少なからず死傷者が出て今では存在していません。


 少しずれましたな。

 例えばですが若様の今のレベルが一万だとしましょう。

 十五歳で初期登録。カードに表記されるのはFランク。何がどうしてそうなるのかは誰にもわかりません。

 魔力の量や経験値と言うものが関わっているという意見もございます。わたくしもその意見に賛成ではあります。

 しかし、それが一概に当てはまらない事例も多く存在します。

 わたくしは経験値プラスそのランクに見合った精神構成や礼儀、立ち居振る舞い、正義感も加味されているのではないかと思っております。

 女神様のご寵愛をお受けになったお二人がお創りになったのです。容易い事であったとわたくしは思います。

 実際、登録して一年にも満たないレベル二百程のFランクの少女が受注していたクエスト以外でゴブリン十体を倒し、襲われていた人を助けてレベル五百に成りDランクになった。と言う事実もあります。

 何人もが真似をしましたがレベルもランクも上がりませんでした。

 まぁほとんどがやらせのようなものでしたから、逆にレベルとランクが下がったりカードの剥奪、処刑と言った処罰も下されています。

 ランクだけAで精神はゴロツキでは無法者の集まりになってしまいますからな。

 ですからレベルと言うものにこだわらず冒険者と言うものを楽しんでください」


 (俺その一万越えで二万ちょいなんですが?知ってて言ってる?クラウスさん)

 「ちなみにクラウスの今のレベルは?」


 「必要な情報でしょうか?」


 「いやほら、テストで百点が満点なのか千点が満点なのか分からないと困らない?

 他の人は町で暮らしているから知らず知らず耳に入っていると思うの。

 俺がそこで突飛な事言ったらクラウスが恥ずかしくない?俺、恥ずかしくて悶え死んじゃうよ」


 「それもそうですねぇ。

 わたくしの事はさておき、自己申告ですが知り合いのAランクの最高値のお方が九九九でしたな。

 あと一が上がらないと三年程ぼやいていましたな」


 「Sランクのクラウスは千越え?」


 「さぁぁて、どうでしょうか。

 それでもその辺りはざらに居ります。威張れるような値でもございません。

 ですが、レベルに関してはそう気にすることもございませんよ」


 (もしかしなくても俺やばくない?チートなの?暴君なの?魔王なの?もしかして邪神とか?)


 「いかがなさいましたか?」


 「いや何も。教えてくれてありがとう」


 「どういたしまして。ご参考になさってください」


 「ちなみに父さんたちが倒した魔王ってどれくらいだったの?」


 「サチ様の鑑定でハテナ。?印が五桁であったと聞いております」


 (うがぁぁ魔王決定じゃぁぁん)

 「父さんや母さんは?」


 「伺っておりませんが勝てた。と、言う意味では魔王以上を有していたと思います。

 マッドジョイ陛下とイフィス妃殿下も確か一万越え。

 まぁそう考えると一万越えは他にも多数いらっしゃるでしょうな」


 (良かったぁぁ。魔王回避ぃぃ)

 「あいつも強かったんだ」


 「ん?あいつとは魔王の事ですか?」


 「そっ。そう。魔王の事」


 「前世か何かでお知り合いでしたか?」


 「夢。かな?」


 「イサム様達がお残しになったやも知れませんな。武勇伝は一切仰らないお方達でしたから」


 「この世から事実を消し去らないための記憶の継承かな。

 もう一個だけいいかな?」


 「仕方ありませんな。どうぞ」

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