フジミヤからの依頼と母からのお願い
エウマイアーギルド長が待っていた応接室。
ソファに座るガーリッシュがエウマイアーに。
「で、今聞いた内容でBランクの件は判った。ここへ呼び出した理由」
「もう聞いていると思いますが東門に町が出来ます。
そこへ王都ギルドの支店を出します。これは既に決定してます。
ただ人選が困りましてねぇ。
単刀直入に言います。
支店で後任が決まるまでの間、ガーリッシュ。あなたにギルド長を頼みたい」
「バカも休み休み言えぇぇ
「本気 本気 大真面目。勿論、覚えることが多すぎて大変でしょうから、助っ人です。入っていいよ」
「はい「はい」
「ユリナとカリーナ?ガトリングも?」
「ガトリングは別。
この二人と解体場から三人。銀行部から二人が同行します」
「二人ともここの主戦力だろう」
「つべこべ言わずに持っておいきっ」
「いっでぇぇぇ何しやがるガトリング。背中が手形で燃えてるだろうがぁぁ
「こっちは当面あたしと他で何とかするさ」
「いや、まだやるって言ってねぇんだが」
「おや。そうなのかい。あたしゃてっきり二つ返事かと思ったよ」
「どう言うこった」
「はぁぁ。ガトリング。物には順序ってものが有るんですよ
「あいっかわらず奥手な僕ちゃんだねぇ、一年かかっちまうよ。おら貸しな」
「あぁぁまだそれわぁぁ
「おら。良く見な依頼書だよ」
「なんだよ。早く言えよ
「フジ君の依頼書じゃない
「最長二か月をパーティーで受けてえぇぇ?」
「リーダー。支度金込み。金貨二百枚だと。前金で四十枚」
「わぁぁってるよ。でもこの内容でなんで俺が仮のギルド長に?」
「仕方ありません。脅迫します。やりますか?やりませんか?」
「そんな可愛い脅迫聞いたことねぞ」
「フジミヤ君の依頼なんですがねぇ」
「いくらあいつが凄いと言ってもそこまでの権限はねぇだろう」
シュベッタがエウマイアーを睨むように。
「なぁギルド長さんよ。何隠してる。賊討伐の後、ハルサーラ達も言葉を選びながら濁してんだよねぇ」
「本当に夕べはフジミヤ君にしてやられましたよ。ギルドがひっくり返るくらいでしたから。復讐じゃ無いとか言いつつ」
「そんな約束があったのかよ」
「聞いてるでしょう。ガルカク兄妹の件ですよ」
「あぁなんかフジミヤをギルド長がハメたってハルサーラが言ってたな。それか?」
「まぁね」
ドンコが。
「フジミヤ様。ギルドの中。大立ち回り。殺したのに。死んでない。いきなりギルド。雰囲気変わった」
「それも凄かったんですよねぇ。
で、ドンコはそれを何処で聞きました?」
「俺の。特殊能力。秘剣。闇渡りの術」
「秘剣?それは剣術ではありませんか?
まぁいいです。やって頂けるなら必要事項です。お教えします。
やって頂けないならお帰り下さい」
「いきなり脅迫かよ。デービッシュおめぇも何か言えよ」
「言わない」
ガトリングが呆れるように。
「ガーリッシュ。あんたも岩石並みの頑固だねぇ。
あのなぁ冒険者を辞めろって、言ってるんじゃないよ。次が決まるまでやってくれって言ってるんだ。
その間だって遊びに行ってくりゃいいさ。この娘っ子二人もいる。
ああ。チェルッシュ知ってるだろ」
「ああ。三年ぐらい会って無いな」
「今、東に住み着いている。この前単独で三メートル級のトロールを倒したよ。無傷で」
「まじかよぉぉ」
「ガトリングちょぉぉっと待った。トロールが出たの?」
「出た。そりゃかなり放置されているからいろんなものが育っているらしい。
でもあそこにギルドが無いだろう。しかも廃村ギリギリの寒村だ。ここまで依頼が届かない」
「ガーリッシュ。ここに名前を書くだけの超簡単なお仕事。後はじっとしていればお金が入る」
「シュベッタ何だよその胡散臭い勧誘は。間に合ってるよ」
「ギルド長。もしかしてギルド長権限でこの依頼を受けないと東には行けないってことは無いよね」
「いくらパーティーでも、ガーリッシュ以外は問題無いでしょうねぇ」
「職権乱用かよ」
「ガーリッシュ。あたしたち三人で行ってくるわ。めっちゃ楽しそう」
「姉ご。回復は任せてよ」
「俺。痩せるかも」
「暇じゃなくなるわよぉぉ」
「あぁ言うの忘れていました。ガルカク兄妹はもう向こうで鍛錬に入ったそうですよ」
「えぇぇ
「先越された。リーダー」
「一つ教えろ。サインしたらフジミヤの何が解かる」
「これにもサインが必要です」
「ノルトハン王国。創世のエルファサ女神様の誓約書?」
「フジミヤに関する一切をハルサーラの許可無く口外を禁じるぅぅ?ギルド長サインしたんだ」
「はい。ガトリングと後ろの二人も。後はガーリッシュ次第」
「リーダー。良く見る。国王陛下と宰相様も受諾している。書いてある」
「フジミヤって歩く国家機密か?」
「さぁ?でもフジミヤ君はあなた方を相当信頼し、受け入れているのでしょうねぇ」
「あぁぁもう判ったよ。ぜってぇぇに手伝ってくれるんだろうな?」
「えぇ勿論です」
「はぁぁほら。二枚とも書いた」
「あたしも書いたよ「僕も「俺も」
「はい。全て受託しました。ガトリング。フジミヤ君の冒険者の資料」
「Aランクなんだろう?」
「えっ?ガトリング。本名がアイファウスト・カミミヤ?って
「シュベッタ。十年行方不明だった王子殿下です」
「ぎゃぁぁ死んだぁぁあたし死んだぁぁ
「何を言っているんだいシュベッタ。
あんたはアイファウスト王子殿下の超お気に入りのようだよ」
「本当ガトリング」
「ハルサーラ様からね」
「こんなあたしの何処が良いの」
「ミレッシュちゃんを可愛がるあんたがいいんだとさ」
「あうっ」
「俺、当のご本人様になんてことをぉぉ」
「それも含めて素敵なカッコイイ本当の冒険者の先輩。って、仰って、尊敬なさっていましたよ」
「エウマイアー。本当か」
「はい」
「リーダー。Sが三つ並んでる。レベル25000。数字がバグってる」
「ギルド長。二枚有るって事ですか?」
「エリンキ君正解。カードに関する全ての装置はイサム陛下とサチ妃殿下が作ったのは知っているよね」
「はい。常識です」
「昨日彼はそこの装置で御両親と戦いながら偽装するための低ランクのカードを手にしたんですよ」
「生きていらっしゃるのですか?」
「そうでは無いようだけど、息子様を常に見ているようだね。
実際会話しているようだったし、わたくしに冒険者の不正の暴露資料をリアルタイムで頂いた」
「ギルド長。何かしました?カードが発行されましたよ」
「ここにずっといましたよ。見ていましたよねユリナさん」
「カードに文章がぁぁえぇぇぇあぁぁぁ
「どうしたんです泣き崩れて。カリーナさんまで?」
「おいおいガトリングも大泣きかよ。シュベッタ見て来てくれ」
「なんだろうねぇ。どうしたんだい見せて み
「ミイラ取りがミイラになったぜ」
「仕方ありませんね。見に行きますかぁ。シュベッタさんカードを。うっ
「ギルド長もかよ。あのカード、触るとやばそうだな。デービッシュ。お前読んでくれよ」
「あぁ判った。これわぁぁ。ちょっと待ってくれ
「お前も泣くんかい」
「ふぅぅぅぅ。読むぞ。
【ガーリッシュさん。木こり。もしくはフジミヤと名乗る、アイファウスト・カミミヤの母、サチです。
アイファウストのわがままを受けて下さりイサムと共に感謝しております。
世間知らずのわがままな子ですがホワイトゴッドネスの皆様にならお預けできると確信しております。
出会ったばかりですが、あの子もあなた方を兄や姉のように慕っているようです。
あの子をこの腕に抱きしめられたのは僅かに五年。
本来であればあの子の成長を隣で抱きしめ見守りたいのですがそれも出来ません。
もし宜しければ、あの子の隣で、近くで兄や姉のように可愛がってあげて下さい。
シュベッタさん。あの子はあなたの事が相当気に入ったようです。
本当はお姉ちゃんと呼びたいようですが、その時が来たら受け入れて頂けないでしょうか?母からもお願いいたします。
クラウスと二人で十年暮らすと言う、過酷を押し付けた悪い親です。
ですが、あなた方に甘えます。
寂しがり屋だけど一人が好きなあの子を見守ってください。
独り言を言いながら背中を丸めてこそこそ何かをやっているところを見ると可愛くて。
本人が身分を明かすまで今まで通り木こりとして、フジミヤとして接してあげて下さい。
ガーリッシュさん。エリンキさん。シュベッタさん。ドンコさん。ガトリングさん。そちらにいらっしゃる皆様。
アイファウストをどうかよろしくお願いいたします。
アイファウストの母サチと父イサムより。
暫くしたら、感謝のしるしを贈らさせて頂きます】
以上です。
他に注意事項もありますが割愛します」
「なぁ。マッドジョイを殺してはダメなのかよ。こんなにいい母親じゃねぇか。いい息子じゃねか。
何の権利が有って引き裂いたんだよ。勘違いで済まされねぇだろうが。
母親が息子の温もりを感じられないってどんな罪なんだよ。ちくしょぉぉぉぉぉ
「娘と王城で幸せに暮らしている。魔王討伐をした救世主を差し置いて。リーダー。俺、許せねぇ」
「姉御。イサム陛下とサチ妃殿下は創世のエルファサ女神様に救われているのですね」
「そうだな。カミミヤファミリーの日にお二方も空に立って話しをしていらっしゃったらしい。
フジ君を見守って下さって い いる うっ
「失礼しましました。それで、それらに関する秘匿事項を纏めて有ります。
ここで、読んで頭に入れておいてください。
マッドジョイ陛下。イフィス妃殿下。アイミーナ王女殿下の名はご法度中のご法度。
また、復讐はおろかトウショウ王国での王への復帰も望んでおられません。創世のエルファサ女神様の誓約書にサインしたそうです。
わたくしとしては何もされない。興味も持たれていない方が拷問と思います。
怒鳴られ、なじられ、体罰を受けた方がまだまし、と思います。
大罪を犯した心ある人間に、無視は心が折れます。
今から少し説明しますね・・・・。




