ポートハウス救出作戦決行
通り向こうの監視役。
軒下の男の元へ黒装束の女が飛び降りて来た。
「何長い事頭付き合わせて話してるんだろうね。飽きてきたよ」
「だな。ホワイトゴッドネスにガルカク兄妹が合流した時は焦ったが」
「今でもかわりゃしないよ。本当に全員、中だね」
「護衛じゃ無いんじゃないか?」
「いや、さっきまでは四人が二人一組で回っていたからね」
「もしかしてハルサーラの護衛とか?」
「デービッシュがいただろう。それにCランクのスカッシュも。金払ってまで護衛が必要とは思えないね。ボスに報告した通りさ」
「おっ。オルデイルとシャレン。ミレッシュ。それに少女か?玄関に向かった」
「ガーリッシュやガルカクは一緒じゃないねぇ」
「表に出るぞ」
「行くよ」
「了解」
玄関の外に出てきた四人。
フジミヤは玄関の方に向かって立った。
オルデイルが。
「木こり君。いきなりなんだい。みんなの前でミレッシュが欲しいとか」
「あなた。往来で声が大きいです」
「誰もいねぇ。黙ってろ」
「はい」
「初対面の木こりなんざに娘はやらん。しかも旅人とか。幸せにできるはずがねぇだろう。
傾いちゃいるがまだまだやれる。
世間の冷てぇ風に負ける俺達じゃねぇ。
ハルサーラ様を連れて来ていきなりなに言いだすかと思えば、冒険者の客の前で
「お義父さん
「あんたの親じゃねぇ。
何がお父さんだ。道で会って一目惚れするような浮ついた輩にはやらん。
客だからと言っていい気になるな」
「僕は色々旅をしてきました。ミレッシュちゃんみたいな子もいっぱい見てきました。
でも、こんなに可愛くて仕事真面目でご両親思いの子は見た事がありません」
「まっまぁな。
まぁ間違っちゃいないな。見る目はあるようだ。世界一の私の娘だ」
「ご提案があります。この宿を僕に売ってください。経営はお任せください。お店の方はお義父様とお義母様で切り盛りして頂きます。
僕も腰を据えてお手伝いします。
エマルサーラ商会のハルサーラ様もご協力いただけます。
旅人の僕の知り合いも沢山います。ここのお店を拠点にすればお客さんは絶える事が有りません。いかがですか?
明日にはデービッシュさんのお仲間が来て店番兼給仕係もしていただけます。安定するまで給与は全て僕が支払います。
ここに金貨百枚有ります。僕からミレッシュちゃんへの支度金と思って受け取って下さい。箱の中を見てください」
「本当に在る。金貨十枚が十束。見た事ねぇぞこんな大金」
「いかがですか。僕をミレッシュちゃんのお婿さんにしてください。
両親思いのミレッシュちゃんが大好きになりました
「えへへへ」
必ず幸せにします。この通りです」
「娘を売るようで
「あなた。ミレッシュに借金を残す気ですか?背負わせる気ですか。それで幸せになるのですか?
友人のハルサーラが連れてきたお方です。素性も解っていて、一目惚れでここまで出来ませんよ。
騙すような事をすれば、ハルサーラの顔に泥を塗る事をこのお方はよくご存じです」
「お父さん。お母さん。たのしいお兄ちゃんがとっても大好き。今まで付け回して来たおじさん達はだぁぁい嫌い。
お兄ちゃんとずっと一緒にいたい」
「いかがでしょうか?」
「あなたぁ」
「あぁぁもぉぉ勝手にしろぉぉ。俺は寝るぅぅ後はやっておけぇぇ
「ごめんなさいね。あの人も混乱していると思うの。
抵当権の方もエウマイアーギルド長に確認するわ。
それも含めて明日の朝にはちゃんとしたお返事をするわ。これでいい?」
「僕の方も突然で申し訳ございませんでした。良いお返事をお待ちします」
「恐らく。お店ごと、わたくし達ごとになると思うわ。期待していて」
「はい」
「お兄ちゃん。中に入ろう。喉乾いちゃった」
「はい。入りましょう」
「一緒に寝よ」
「えぇぇ。い 今はまだぁぁ」
扉を閉めたフジミヤ。
小声で。
「しっかり聞いていました。必ず今夜動きます。配置に付いてください」
「了解」
「ミレッシュ。姉ちゃんとカスミナ姉ちゃんと寝るぞ」
「はい」
「久しぶりに一緒に寝るね」
「カスミナお姉ちゃんと寝るのは、おひさなのです。嬉しいです」
「ミレッシュ可愛い」
「むぎゅぅ」
「聞いたかい?」
「ボスに念話送った。
『一緒に寝る』でブチ切れた。念話で意味不明な言語でわめいている」
「そんな事あるの?」
「俺も初めて」
「抵当権て何だい」
「知らねぇ。確認しようとしたがブチ切れて聞いてねぇな」
「まぁいいさ。今夜かい」
「二十人送るって」
「豪勢だね」
「そりゃ店ごと持って行かれちゃ手も足も出なくなる。相手がいなくなった今、今日しかねぇだろうさ」
「ドラ息子も少しは脳みそが残っていたようだね」
「店も親もいらねぇ。火を放って連れ出せってさ。救出を演じて」
「本当かい?火着けは問答無用で火あぶりだよ」
「酔っぱらった奴隷に蝋燭持たせて路地に行けだと」
「何とも穴だらけの作戦だねぇ」
「ガキ・・・ボスの作戦だ」
「火魔法は下手すりゃ痕跡が辿れるからねぇ」
「ガーリッシュ達が出て来た」
「ありゃ夜涼みだね。オルデイルのあの調子じゃぁ息が詰まるだろうさ」
「作戦時間。三時間後だと。飯食って仮眠だ」
「十二時かい。草木はまだ起きてるよ」
「一緒に寝られたら元も子も無いってさ」
「手遅れになる前かい」
「だろうよ。
奴隷君に今から飲ませたら眠くなるだろうさ。俺も眠くなってきた。
集合場所で詳細打合せ。食って寝る」
「あいよ」
アイファウストが少し玄関を開けて。
「ガーリッシュさん」
玄関を背にしたガーリッシュ。
「おう」
「三時間後。二十二人の予定。裏路地で放火。ミレッシュちゃん以外は殺害。
監視の二人は消えました。
その時間少し前。裏路地に隙を作って下さい。
以上」
「了解」
(人様の念話を盗み聞きでるたぁ世も末だねぇ)
「エリンキ。ドンコ。話しがある」
「はい「おう」




