初外泊宿のポートハウス
ポートハウス。
木造二階建ての三角屋根のしっかりした建物。
全ての窓には今では希少価値の窓ガラスが在る。
東西の街道に面した側が玄関で幅十五メートル。奥行三十メートル程で、街道と南から来ている幅十メートルの脇道のT字路の西の角地。
その建物を見上げながら木こりが。
「ここですか?
もの凄く良い立地条件で、建物も立派です。
お貴族様も喉から手が出るほど欲しいでしょうねぇ。
ハルサーラ様。
ここなら高値で。いえ。言い値で売れたんじゃないですか?」
「シャレンの夫のオルデイルのお爺様の時に購入。
借金も無く購入したようなのですが、十年ほど前に本人達も知らないうちに抵当権が発生。
抵当権を行使している本人は行方知れず。
それでギルドも手も足も出せず、売ることも出来ない状況」
「本人が知らないうちに抵当権って発生するものなんですか?」
「お貴族様相手では何も出来ません」
「ああそれで逆にエウマイアーギルド長が手放さないように裏工作しているのですか?」
「どうして判りました?」
「ガーリッシュさん達との会話」
「あの程度で?」
「勘でしょうか。
その件も中でご本人さん達に伺いましょうか」
「そこまでご協力していただけるのですか?」
「ミレッシュちゃんの今後の事も有りますからね。
そう言った汚いお仕事は僕が請け負いますよ」
「ありがとうございます」
ガルカクが。
「ポートハウスを助けて下さるのですか」
「ガルカクさんもご存じだったのですか?」
「はい。私達もたまに使っていたんです」
「フジミヤ様。ミレッシュ可愛いでしょ」
「カスミナさんもご存じなんですね」
「ここに泊まる時は一緒に寝ているの」
(カスミナさん可愛いってダメですよ。僕ちゃんわっ)
「ミレッシュを助けてください。フジミヤ様」
「「お願いします」」
「はい。頑張りますよ。
その代わり手伝って頂きますよ」
「「「了解」」」
玄関前に来て。
「おうっ。木こり君。待って た よ?」
「ガーリッシュさん。お待たせです」
「ガルカクその首。何をした」
「ギルドでこちらのお方。フジミヤ様に戦いを挑んで一秒で負けた」
「で、チョーカーか?」
「お陰で助かった」
「借金返済か?」
「あぁ。一瞬で終わった」
「木こり君では無く、フジミヤ君でいいのか?」
「はい」
ガーリッシュが深々と頭を下げて。
「ありがとう。感謝する」
「何でです?」
「こいつバカでアホなんだが弟妹思いでよ。根は優しいんだがBランクで・・・おめぇBだったよな」
「フジミヤ様は本日登録でAランクだった」
「すげぇぇ。めっちゃすげぇ。どんな経験を積んで来たらいきなりAランクなんだよ。さぞかし苦労したんだろうな。
どうなんですハルサーラ様」
「この世界の誰も想像が出来ない程」
「だろうな。じゃなきゃいきなりのAは無理だ。そんなお方の護衛かよ。滅茶苦茶光栄じゃねぇか。ありがてぇぇぇ。
いや先ずはおめでとうだな。そしてご苦労様」
「ありがとうございます。
ですが僕の護衛ではなくミレッシュちゃんですよ」
(なんか涙出て来そう。ガーリッシュお兄さん)
「俺の中では二人共だ。
で、マスケットとカスミナもチョーカーしてもらったのか」
「はい「はい」
「バラバラにならずに良かったな」
「はい「感謝です」
「フジミヤ君。本当にありがとう。俺からも感謝を言わせてくれ」
「はい。こちらこそありがとうございます」
「まぁ中に入ろう。おめぇ達は外か?」
「違いますよ。僕たちと同じで中で、お部屋も取りますよ」
「ほんとぉぉに良かったなぁぁ。
フジミヤ君。ほんとぉぉにありがとう」
「ガーリッシュさん。抱き着かなくてもぉぉ」
(なんか少し嬉しいかも。初めてだこんな気持ち)
「すまない。だが、今は感謝の表現方法が判らねぇ。涙が出て来たぜフジミヤ君」
(すごく仲間思い。父さんと母さんが望んだ冒険者がガーリッシュさん達なのかなぁ。こんなお方達なら僕も賛成ですよ)
「呼んだら入って来てくれますか?」
「飯ならもう食ったぞ」
「別件です。このまま抱いていてください」
「抱きしめていて何だが、その言葉に背徳感が」
「目で追わず。声も出さずに」
「おうっ」
「通りの向こう側の東へ五軒目の屋根の上。二人が伏せてこちらを見ています。かなり高度な隠密スキルです」
「へぇぇ。明確にあちらさん?」
「はい」
「男?女?」
「一人づつ」
「何処のどいつか判るか?」
「後程」
「判ったぁ。後でなぁ」
「はい。皆さん、中に入りましょう」
玄関直ぐは食堂。
ミレッシュの一家三人とシュベッタ。エリンキが出迎えた。
「お兄ちゃんいらっしゃいませぇぇ。お待ちしていましたぁぁ」
「ただいま。ミレッシュちゃん」
「お兄ちゃん」
「はい」
「お父さんです」
「オルデイルと申します。娘が無理を
「いえいえ。直ぐに気に入りましたよ。木こりでもフジミヤで構いませんよ」
「はい。フジミヤ様」
「妻のシャレンです。ようこそおいでくださいました。追加の食材迄
(こりゃまた美人様でいらっしゃいますねぇ。狙われるはずだわぁ。大人の色香が凄い。冒険【中】にしておいてよかったぁぁ)
「今日お客様は?」
「六名様のみです」
「お部屋はまだありますか?」
「はい。ございますが。ガルカクさん。こちらのお方に?」
「助けて頂いた。こいつらも一緒に」
(ガルカクさんご兄妹は有名人なんですねぇ)
「フジミヤ様。ありがとうございます」
(あぁぁもぉぉみんないい人ばっかぁぁ。エウマイアーギルド長様ぁぁありがとぉぉ。でも、許さない)
「それで突然ですが追加いいですか」
「二部屋で?」
「はい。追加の
「いいえ。追加食材分のおつりが御座います」
「間違いなく足りますよね?」
「一週間お泊りになりますか?」
「解りました。とっておいてください」
「あのっそれは
「良いですから」
「はぁ」
「主
「カスミナさん。後程」
(ちょっと待ってぇぇ。あるじぃぃ?)
「はい」
「ハルサーラ。今日は
「いいの。久しぶりにあなたの手料理が食べたいわ。シャレン」
「この護衛ってまさか貴族とヤブヤの
「木こり様へホワイトゴッドネスの依頼」
「お金なんて無いわよ」
「シュベッタ達が木こり様のお友達に成る事で契約成立」
「えぇぇ?」
「ミレッシュの護衛は木こり様が金貨二枚をお支払いにはなっているけど
「えぇぇ?」
「ここの件は、エウマイアーギルド長も認めているわよ。
今は気にせず木こり様に美味しいお料理をお願い」
「はい。皆様。もうお風呂もご用意が出来ています。五人同時に入れますよ。お先に入られますか?」
フジミヤが。
「ハルサーラ様。お先にどうぞ」
「では、遠慮なく」
「カスミナさん達も入ってくださいね」
「いいのぉ」
「勿論です。ああ臭いとかじゃないですよ。ゆっくり入って来て下さい」
「シャレンさぁぁん。お洗濯ぅぅ」
「魔法洗浄でいいですね」
「ありがとぉぉ」
(おぉぉ。これが冒険者のお得な特権かぁぁ。クラウス有ったよぉぉ)
「ミレッシュ。お部屋にご案内よ」
「はい。こっちでぇぇす。部屋割りはシュベッタお姉ちゃんが決めてくれたの」
「待ってたよ。で、珍しいのが来たねぇ。いい目付きの男になったじゃねぇか。ガルカク。
後で教えてくれよ」
「ああ」
(シュベッタさんかっけぇぇぇ痺れましたぁぁ。シュベッタお姉様ぁぁ)
「で、カスミナさん。ご用は何でしたか?」
「あたしと一緒に寝るの?」
「寝ませぇぇぇん」
「そこまで強く言わなくたってぇぇ。シュベッタおねぇぇちゃぁぁん」
(あぁぁカスミナさぁぁん抱き着くなんて卑怯ですよぉぉお可愛ぃぃ)
「よしよし。女の魅力を
「ミレッシュちゃんが居るじゃないですかぁ」
「お兄ちゃん大丈夫だよ。お姉ちゃん達と寝ているからぁ四人で一緒に寝よ」
「あぁぁ何言っちゃってるんですかぁ犯罪臭がぁぁ」




