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 木こり君の宿屋に初外泊で初クエストを依頼

 ウリットの土地に関する全ての税金をアイファウストが納付、差し抑えの難は逃れ、他の方面の借金も全て返済し終えた。

 そのままの足でギルド内の土地取引所でウリットの土地をハルサーラが仮押さえとして誰の手にも渡らないようにした。

 申請内容は教会孤児院建設予定地。

 スカイメインの一件で、既にそのようなことを想定していたマウレス宰相が手を回していた。


 ようやくギルド二階のギルド長の応接に呼ばれたアイファウスト一行。

 双方の疲れた表情を察知して、双方が理由を説明した。

 ギルド長のエウマイアーが。


 「もう五時を回りました。一応、終了の挨拶がありますので少々お待ちいただけますか?」


 「ああそんな時間か」


 「もう終わりなんです?」


 「木こり君はご存じなかったですか?

 二十四時間は開いていますが五時を過ぎるとほとんど誰も来ません。

 王都周辺の町のギルドは今頃からが勝負です。

 王都内や周辺で魔物はここ二年ほど出没していません。

 動物に関しては周辺の店に持ち込まれますので、実質ここは登録所になっています。

 すみません。少し行ってきます」


 「はい」


 入れ替わりでカリーナが入って来て。


 「失礼いたします。デービッシュ殿。女の子が尋ねて来ていて。

 サンドダックに追われていた木こりのお兄さんに会いたいと申していますがいかがなさいますか?」


 「素性は判るか?」


 「ここから少し東に行った宿屋ポートハウスの一人娘でミレッシュ。十二歳です。

 恐らく呼び込みが目的かと」


 「行きます」


 「仕方ありませんわね。行きましょう」


 「ありがとうございます」

 (と。言ったはいいものの緊張するなぁ。冒険者【中】)




 先程のテーブルに掛けて。


 「さっきはごめんね。木こりです」


 「あぁうん」


 「どうしたの?」


 「うん。やっぱりハルサーラ様達のお知り合いだったんだ?」


 「そうだよ。えぇぇっと君は?」


 「用件は終わった。ごめんなさい」


 「お名前は?」


 「ミレッシュ」


 「一応用件を言おうよ。ちゃんと聞くよ」


 「えっとぉぉ。お兄さん今日泊まるところは?」


 「決まってないよ」


 「本当?」


 「うん。ハルサーラ様の所でご厄介になる予定だったけど、急遽一杯お仕事が入ったみたいで忙しくなっちゃったみたい。

 内容を教えてくれる?」


 「お店の名前はポートハウス。すぐそこだよ。

 とっても仲がいいお父さんとお母さんが作るお料理がとっても美味しいの。

 私もお掃除を手伝っていてお部屋も奇麗だし、シーツも毎日欠かさず天日干ししているからお日様の匂いがするよ。

 お一人様一泊二食付きで大銅貨三枚。お風呂も使っていいよ」


 (両親思いがもう可愛い。僕泣いちゃう。

 そしてお仕事熱心な所でも決定ですよもう。宿屋初外泊。うってつけです)


 ハルサーラが。


 「破格です。母親はわたくしの友人です。悪い噂も聞きません」


 「この六人泊めてくれるかな?」


 「本当にいいの?」


 「じゃぁ


 「皆さん。そんなボロ宿屋はお止めになった方がよろしいかと。

 わたくしどものお宿はそこのボロ宿とは大違いですよぉぉ


 (突然何だぁぁ?このおじさん。こっちにも、もみ手は有るのねぇ。

 って、そんなこたぁどうでもいい。両親思いのミレッシュちゃんを傷つけた。許さん)

 「デービッシュさん。僕はもうミレッシュちゃんに決めました」


 「はいよ。ヤブヤの呼び込み。もう決まっている。帰んな」


 「そう仰らずデービッシュ殿。いい子もいますよぉぉ」


 「何がデービッシュ殿だ。いつものゴミ扱いはどうした」


 「いやいや、お客様となって頂けるのでしたら


 「必要無いと言ったはずだが?」


 「詫びますんで、そこを何とか」


 「ギルド内で執拗な客引きは関心しないな。出禁になるぞマジル」


 「ちっ。木こりはエウマイアーの旦那のお知り合いでしたか」


 「大事なお客人だ」


 「小娘覚えていろ」


 「うっ」


 (これは何かありますねぇ。ここからミレッシュちゃん一人を帰すのは危険ですよねぇ。お宿の方も騒がしくなりそう)

 「デービッシュさん。クエスト依頼。この子とこの子の宿屋を今夜一晩警護。

 エウマイアーギルド長さんの信頼のおけるCランク以上の四人パーティー一組。報酬金貨二枚」


 「だってさエウマイアーさん」


 「多い方で破格ですよ」


 「デービッシュさん。クエスト依頼に価格の上限があるんですか?」


 「聞いたことはねぇ。な。エウマイアーさんよ」


 「はぁ仕方ありませんねぇ。通例になるのが怖いのですが、護衛、警護の場合、冒険者に金貨二枚ですとギルドの手数料が銀貨四枚になりますが」


 「問題ありません。今必要ですか?」


 「可能であれば」


 「金貨二枚とぉぉこれはちゃんとした金貨ですよね。あと銀貨が四枚。はい、どうぞ」


 「少々持っていてください。ガーリッシュ。聞こえていましたか?」


 「バッチシ。遠征帰りで暇こいてたのよ。一晩金貨二枚ったぁぁ大盤振る舞いだね兄さんよぉ。

 おめぇらいいか?」


 「おうっ「あいよ「リーダー。大助かり」


 四人の中のたった一人の女性が。


 「ドンコいい事言うねぇ。あの女にケツの毛抜かれてるからな」


 「シュベッタ、うるっせいよ」


 (かっけぇぇ。本物の冒険者だぁぁ)


 「木こり様?眼が虚ろですよ」


 「ハルサーラ様。冒険者ってカッコイイですねぇ。惚れ惚れしちゃう」


 「それあたしの事だろう」


 「はい。お姉さんもカッコいいです」


 「も?」


 「が」


 「解ってるねぇ」


 「はい。身なりがとても素敵で冒険者ぁって感じでカッコいいです」


 「だろぉ。あっちの裸同然は掟破りなんだぜ」


 「やっぱりそうですよねぇ。確か禁止だったようなぁ」


 「なぁ。エウマイアーギルド長様ぁ」


 「カリーナ君。クエスト依頼書」


 「「あれぇぇ?」」

 「あぁぁはっはっはっは「くすくすくす」


 「もう書きました。どうぞ」


 「ガーリッシュ。サイン」


 「ちょぉぉぉっと待ったぁぁエウマイアー」


 「はぁぁ。何ですかイデピッド」


 「その仕事俺達には回せねぇのかよ。そのガキのクエスト依頼なんだろう。

 一晩四人で金貨二枚。いい仕事じゃねぇか。

 俺達四人もCランクだぜ」


 木こりが立ち上がり。


 「お酒飲んで女性に絡んで何が仕事ができるんですか?

 大体依頼主に対してジョッキー片手にガキとは何ですかガキとは。

 そして指名依頼です。エウマイアーギルド長の


 「ガキは謝る。だがなぁエコ贔屓じゃねぇか」


 「依頼主の僕が言っているのですよ。文句が在るのですか?」


 ガーリッシュが。


 「シュベッタ」


 「あいよ。それっ。

 イデピッド。酔っぱらい過ぎだ。

 あたしの速度に追いつけていないよ。ほら。あんたのベルト返してやんよ。

 あと、そのだらしないパンツ何とかしな。女の子に逃げられちまうぜ」


 木製のジョッキを持ったままのイデピッドのズボンは足首にまで落ちていた。


 「シュベッタぁぁてめぇぇ


 「依頼主さんをガキ呼ばわり。と、言うパーティーさん達ですよ」


 「シュベッタてめぇいいかげんに


 「イデピッド。これ以上絡むならギルド長命令で、王都のギルドを出禁にしますよ」


 「わぁぁったよ」


 「イデピッド。今度闇討ち掛けて来たらタダじゃおかねぇからな」


 (えぇぇ?何しちゃってるのぉぉおっさん。妖精ちゃんお願い)


 「ちょおめぇここで言うかよぉガーリッシュ」


 「はぁぁ。やっぱりそうですか。

 ガーリッシュ。良いのですか?」


 「次は無い。命も保証しない」


 「わぁぁった」


 「エウマイアーギルド長。聞いたな」


 「はいはい。警察と国軍に注意喚起しておきますよ」


 「くっそぉぉ。おめぇぇら、飲み直しだぁぁ」


 「で、ガーリッシュ。サイン」


 「おう。おら」


 「依頼発注完了。報酬料をお預かりします。こちらが受領書。未達成の場合は全額返金」


 「ギルドさんの手数料は?」


 「こちらのパーティー。ホワイトゴッドネスから木こり様へお支払いする違約金も含めて、きっちりいただきますよ」


 「なるほどぉ」


 「木こり君でいいのか?」


 「はい」


 「俺はガーリッシュ」


 「僕はエリンキ」


 「あたいはシュベッタ」


 「最後の俺がドンコ」


 「で、今からミレッシュちゃんの護衛とポートハウスの一晩警備。でいいんだな」


 「勿論悪漢に対応はしていただけますよね」


 「勿論。それに命を張るのが冒険者の醍醐味だ」


 「カッコイイ」


 「だろ。痛てっシュベッタ何しやがる。背中が手形で燃えてるだろうがぁ」


 「女の子にその鬼みたいな顔を近づけ過ぎなんだよ。怯えっちまうだろうが。ねぇ。ごめんねぇ。怖かったろう」


 「おめぇ聞いてなかったのか?(くん)だ」


 「君なの?」


 「はい。君です。男の子です」


 「驚いたねぇ。どっから見ても女の子ちゃんだよねぇミレッシュちゃん」


 「私は最初からお兄さんって呼んでました」


 「言うようになったね」


 「はい。シュベッタお姉ちゃん」


 「お知り合いですか?」


 「たまにだけどお世話になっているんだ。ミレッシュいい子なんだぁ。

 ガーリッシュ」


 「ミレッシュが選んだ。ハルサーラのお連れ人。知ってか知らずがポートハウスまで護衛対象。相当勘が良くてキレるだろうよ」


 「君よ。耳貸しな」


 「こうですか?」


 「本当に君かい?いい香りがするねぇ。

 ポートハウス。とあるお貴族様に理不尽に潰されっちまうんだ。知っていたのかい?」


 「そうなんですか?」


 「やっぱりかい。

 その貴族様がミレッシュの母親が気に入ってな。店ごと奪おうとしている。

 いいかい。らしい。じゃなく、しているだ。

 旦那のオルデイルは何度も闇討ちを受けている。

 警察が動いても犯人が判らん。大方のお貴族は判っていても繋がらないんだ。

 あたしたちも助けたい。でも貴族相手じゃ両方潰されちまう。その上、冒険者に払う金も無い。

 あんた頭が良くて、凄そうだ。何とか繋がりを暴いて警察へ。

 ミレッシュを助けてやってくれねぇか。頼む」


 「何故僕に?」


 「さっきガーリッシュが言っていた事。

 それにあたしやあの三人の冒険者の勘。女の勘。それが間違っていたらあたし達はここに居ないよ。

 それとハルサーラ達じゃ顔が割れすぎてる。君はここが初めてだろう」


 「はい」


 「君なら、意味は分かるだろう?」


 「お貴族様は?」


 「確証はないがガジサーダ・ド・ファドレ男爵」


 「判りました」


 「いいのかい?頼んでおいてなんだが、報酬は無いんだよ」


 「成功したらお姉さんたちがお友達になってくれればいいです」


 「本当にいい子だねぇ。問題は無い。お友達だ」


 「はい。お願いします。

 で、ヤブヤのさっきの態度は?」


 「オーナーのドラ息子が一方的にミレッシュにべた惚れ。

 これがとんでもねぇドラ息子。女癖が悪いってもんじゃないんだよ。

 ハルサーラやデービッシュに聞いてみな。でも、あんまりお勧めはしない。君は無垢で初心そうだからな。

 でな、さっきみたいな輩を使ってポートハウスの外堀を埋めて潰す気だ。

 男爵とはまた別口の悪徳商売のドンの息子。

 可哀そうな家族だよ。可愛いと美人が居ると。

 君。あんたならミレッシュをやってもいいぜ」


 (大森林の勘とでも言うのでしょうかぁ大当たりでしたねぇ。

 あんな輩が我が物顔でうろつく町ではミレッシュちゃんが可哀そうです。

 片方はもう終わっています。ヤブヤも潰しましょう)

 「お戯れを。ミレッシュちゃんにこれ。金貨一枚渡してください。宿泊代金とは別。今夜は豪勢にいきたいので。

 お酒は買ってもいいですが・・・お酒の一抱え位あるでっかい樽ってお幾らぐらいなんですか?」


 「あたしたちの知り合いのとこなら、金貨一枚で十樽以上買えるさ。一樽でいいかい?」


 「足りるのであれば」


 「ポートハウスにも十分ある。足りるさ」


 「それで、夕食時にお酒は無し。その後、皆さんで」


 「まさか、君は下戸かい?」


 「一口で死ねます」


 「あぁぁはっはっは。やっぱそうかい。可愛いねぇ。

 よっしゃ。ミレッシュ。お客さん達一杯食べたいから余分に金を貰った。

 買い物して帰るよ」


 「はい。準備してお待ちしています」


 「お願いしますねぇ」


 「じゃぁ。行くか。ミレッシュ」


 「はい。ドンコおじ様」


 「お兄さん。なんだけど。なぁ」


 「ドンコはおじさんなの」


 「エリンキおじさんもおじさんだよ」


 「ミレッシュちゃぁぁん」


 「あはっ」


 (ほのぼのするなぁ。うんうん)


 「ガーリッシュ。頼みましたよ」


 「任せときなギルド長。願ったり叶ったりの仕事だ。へまなんかしねぇよ」


 「シュベッタお姉ちゃん。

 お兄さん、何が食べたいって?」


 「いろんなもの」


 「お父さんとお母さんのお料理なら、何食べてもおいしいよ」


 「そうだよねぇ。何買って帰ろうかぁ」


 「いっぱいいるね」


 「いっぱいだよ」


 (ミレッシュちゃんとお手手を繋いで可愛がるシュベッタさん滅茶苦茶良い人。もう大好き。

 その前後を守るガーリッシュさん達もカッコイイ。でぇ)

 「ハルサーラ様」


 「存じておりましたが、ミレッシュの母親。友人のシャレンから一切の手出し無用と言われておりました。

 エマルサーラ商会の看板に傷を付けさせないでと」


 「ホワイトゴッドネスのご依頼としておきましょう」


 「ありがとうございます」


 デービッシュが。


 「さてと二階に行きますか?」


 「はい」

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