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 孤児院の問題に繋がる怖い人達

 「何やってのあんたたち」


 顔を腫らして正座して並ぶサンドダックのサンドバッグ兄貴に向かってスカッシュが言い放った。


 「それ、ボコボコに攻撃する前に言いません?普通」


 「で、サンドバッグ」


 「あのっ。もしかしてそちらの男の娘はお知り合いでしたか?」


 (なぁぁんか言葉の文字が違っていませんかね)


 「そうよ。それで」


 「俺達冒険者になったのはいいんですけど仕事が無くって」


 「毎日、迷子や猫探し」


 「王都の外に出るとシスターに食料が渡せない」


 「はぁぁ。で、その半分裸のような恰好は?モヒカンのその頭何?」


 「名前の通りモヒカンです」


 「俺達この格好になってパーティー名を変えてやっと先輩冒険者から虐められなくなったす」


 「判ったわ。で、何で誘拐なんてしたの」


 「スカッシュお嬢様の仕送りが一気に足らなくなりました。

 孤児院の子供が急に倍に」


 「教会が孤児の受け入れを突然止めて逆に押し付けてきたんです」


 「俺達聞いちゃったんです。ママシスターにシャラースシスターが身売りするって言っているところぉぉわぁぁ


 「みんな泣くんじゃねぇ」


 「「「「兄貴も泣いてるぅぅ」」」」


 「シャラースが身売り?」


 「「「「「はいぃぃ」」」」」


 「お母様行ってきます」


 「わたくし達も行きましょう」


 「あんたたちもついて来なさい」


 「はい」


 立ち上がった大男のエルダンは何故かアイファウストの首根っこを掴んで持ち上げた。


 「エルダンいい判断よ」


 「ありがとうございます。スカッシュ姉さん」


 (なんでぇ)





 崩れそうな平屋の狭い部屋の中にゼロ歳から十五歳ぐらいの子達がひしめき合っていた。

 スカッシュはサンドバッグらに。


 「あんたたちはここに居なさい」


 「はい」


 スカッシュ達が中に入っていった。


 「ママぁぁこんにちはぁぁ」


 「あらあらいらっしゃいスカッシュちゃん。今日はどうしたの?

 ハルサーラ様。ようこそ。いつも多大な献金を頂きまして助かっております」


 「お気になさらず。紹介したいお方がいまして参った次第です。木こり様。あら?」


 「お母様。あそこ。子供達の輪の中ですでに遊んでいます」


 「あらまぁ素敵なお方。

 子供たちのあのような笑顔は最近見ませんでしたわねぇ。女神様の御使いのお方かしら」


 「「えっ?」」


 「あら。アイファウスト王子殿下?」


 「しっ。ママ」


 「はいはい。解りましたよ。木こり様でいいかしら」


 「そうして。シャラースは?」


 「外の子に聞いたのかしら?」


 「そう。本当なの?」


 「あなたも知っているでしょう。岩にも負けない頑固さを。何を言ってもダメだったわぁ。今来るわ」


 「いつも


 スカッシュはいきなりシャラースに抱き着いた。


 「聞いちゃったの?」


 「バカ」


 「仕方ないよ」


 「もう売ったの?」


 「今から」


 「違う。契約は済ませちゃったの?」


 「まだ。今から行くところ。多分年齢的に高くは売れ無いと思うけど


 「行かないで


 「見ての通り四十人になっちゃったの。これ以上あなたのお小遣いを当てにはできないわ」


 「出す。ちゃんと出すからそんなことは止めて」


 「もうこれ以上あなたに負担は掛けれないわ。お店だって大変じゃないの。だから


 「それは気にしなくていいの


 「行ってくるわね。今までありがとうスカッシュ。大好きよ」


 「いや。いや。ぜったいにいや。行かないで。行かせない


 「シャラースシスター動かないように。動かなくしましたが。

 スカッシュさん。抱き着いて離さないように」


 「はい」


 「本当に動けないのよ」


 「そのまま黙ってて」


 「ママシスターさん。木こりと申します」


 「初めまして木こり様。ここの長をしておりますウリットと申します」


 「ママシスター。ここの土地の契約者は?」


 「ここはわたくし個人の土地でございますが土地税を滞納しておりまして間もなくお取り上げ。

 その資金も無く・・・口が勝手に・・

 聞かなかったことに


 「できませんね。わたくしの術です。ごめんなさい。それで、教会での申請では無かったと」


 「はい。孤児が集まる館でございます」


 「押し付けた教会は?」


 「王都の北の教会でございます」


 「その際の食費などは?」


 「・・・」


 「判りました。ここの全員がここからいなくなって困ることは?」


 「なにもございません。税の未払いが残るので国からの追手が来るやもしれませんが」


 「それは問題ありません。

 ハルサーラ様」


 「御心のままに」


 「一瞬消えますので、五秒間は動かないでください」


 「はい」




 「戻りました。では、動かないでください。

 スカッシュお嬢様。外の怖いお方にも」


 「はい。あんたら動いたら


 「動きませぇぇん」


 「建物ごと転移」


 「おい。空気が変わった?」


 「ここ何処だ?」


 「周りに家がねぇぇ」


 「みなさん。子供達を外へ出さないでください。全員目を閉じて」


 「はい」


 「えぇぇ眩しぃぃ「なにぃぃ「なんだぁぁ「こえぇぇよぉぉ「兄貴ぃぃ何ですかこれぇぇ」


 「終わりました。いいですよ」


 「えっ?お屋敷?の、お部屋?」


 「木こり様。ご説明を」


 「はい。ここはノルトハン王国の東の果て。ジード村です。すぐそこが東の砦の門


 「「「「「え”ぇぇぇ」」」」」


 「サンドバッグ。うるさい」


 「すみません。スカッシュ姉さん」


 「建物は以前の三倍程度で石造り。

 周りを土壁二メートルで囲いました。直径は百メートル。防御魔法で囲んでおきました。

 みんなぁぁお外でお茶を飲みますよぉぉ」


 「「「はぁぁいお兄ちゃぁぁん」」」


 「スカッシュお嬢様、シャラースシスター。収納をご覧ください」


 「「お茶とお菓子?」」


 「外にテーブルと椅子も有ります。

 大きい子たちはもう椅子に座って、上級生たちは赤ちゃんを抱いて木陰の椅子に座って待っていますよ」


 「シャラース。行くわよ」


 「はい。スカッシュ。って、私収納なんか持ってなかったわよ」


 「いいから行くわよ」


 「あぁぁうん」


 「リッシュ。アルミスも手伝って」


 「「はい」」


 「アルミス?アルミスなの?目は?目は?」


 「後で。子供らが待っています」


 「サンドバッグもモヒカンも手伝いなさいっ」


 「「「はぁぁい。スカッシュ姉さぁぁん」」」


 「「俺達も飲んでいいんすか」」


 「後で」


 「「「「「はい」」」」」




 「ねぇウリット」


 「ハルサーラ様そのクリスタル女神像は?」


 「エルファサ女神様より大司祭を賜ったわ。こちらが」


 「アイファウスト・カミミヤです。傅かないで下さい」


 「教会の神官長よ。で、この地の南に少し見える?」


 「大聖堂?何故建立が?」


 「エルファサ女神様の肝いり。真女神様の教会よ。この大陸でこの一か所のみ許可を頂いたの。

 そしてアイファウスト王子殿下。

 もう解ったわね」


 「わたくしはどのようにお仕えをしたら」


 「それは追々よウリット」


 「ママシスター、ここは孤児院としては仮の地です。

 こちらはジード村の村長」


 「マリアティーヌと申します」


 「マリアティーヌ。後は任せもいいかしら?

 王都の仕事がまだ半分も終わっていないのよ」


 「はい。お任せください。ハルサーラ様」


 「ウリットママシスター。税の事はお任せください。マウレス宰相様にきっちり話しを付けてきますので」


 「はぁ?宰相様にぃ?」


 「この孤児院の設備のご説明を軽くいたします。

 お水は地下水を汲み上げていますが、自動で浄水していますのでそのまま飲めますが、危険回避で湯冷ましの方が良いかもしれません。

 奥のキッチンに食材は十分・・・あぁぁ白菜やキャベツにジャガイモが無いぃぃ牛乳もぉぉ


 「お可愛いお方でいらっしゃいますね。元からの分がございますから、今暫くはございますよ」


 「申し訳ありません、ママシスター。

 それで、人数分以上のベッドもシーツも有ります。お風呂、トイレも完備。食器も揃っています。

 小さい子から大きい子までのおもちゃと多少の教育書籍も置いておきました。

 後はご自由にお使いください。

 デービッシュさん。こちらを。食材の搬入をお願いいたしますね」


 「トロールの魔石?」


 「はい。如何ほどになりますか?」


 「この大きさ見た事も無いですよ。これ、キングクラスですよねぇ」


 「どうなんでしょうか」


 「ここが百人として一年分は余裕で有るんじゃないですか」


 「換金して食材や衣服、必要物資に出来ますか?」


 「マウレス宰相に相談しないと。ギルドでは無理です。色々な意味で」


 「ではお願いいたします。

 マリアティーヌさん」


 「はい。今、ジード村から三人。手伝いの女性が来ますのでご紹介いたします」


 「はぁ?あぁぁいえいえ、お支払いできる給金などは持ち合わせて


 「ウリット。既にここはエルファサ女神様教会の傘下に入ったの。教会から全ての運営費が出るわ」


 「あぁぁぁ何と言うお慈悲をぉぉ木こり様ぁぁ」


 「慣れないうちは大変かもしれませんが、よろしくお願いいたしますね」


 「はいはいぃぃ承りましたぁぁ」


 「スカッシュ。アルミス。リッシュ行きますよ」


 「「はい。お母様」」

 「はい大奥様」


 「木こり様。どこへ行きましょうか?」


 「デービッシュさん。税金は何処へ行けばいいですか?」


 「一緒に参りましょう。王城の正門横の徴税局です。支払う分には面倒はありませんよ」


 「位置情報下さい」


 「はい。ここの転移紋です」


 「判りました」


 「サンドバッグ。あんたらここで暫く働きな」


 「「「「「はいぃぃスカッシュお嬢様ぁぁ」」」」」


 「で、その格好だと


 「後で着替えます」


 スカッシュはシャラースに抱き着き。


 「シャラース。もう身売りは考えなくていいからね」


 「うん。うん。ありがとうスカッシュ。

 そしてアイファウスト王子殿下」


 「はい・・あぁぁ


 「もうバレバレですよ」


 「はぁぁ。それでママシスターとシャラースシスターは何故跪いているのですか?」


 「「子供らをお助け下さりありがとうございました、アイファウスト王子殿下」」


 「良いですよ。可愛い子供達の為に僕が率先してやった事です。気にしないで立ってください」


 「「あぁぁ神様ぁぁ」」


 「ウリット。立ちましょう」


 ウリットはハルサーラに抱き着き。


 「あぁぁハルサーラ様ぁぁ神様が・・神様がおいでになったぁぁ」


 「良かったわね」


 ウリットは何度も無言で頷いた。


 「色々大変だったけど、救われたわよ」


 「はい。はい。はい」


 シャラースを抱きしめるスカッシュは。


 「シャラースも泣かないの」


 「アイファウスト王子殿下はわたくし達を怨んではいないの」


 「全然よ。それより理不尽な事を許さないお方よ」


 「本当の神様。本当のエルファサ女神様の使徒様です」


 「そうよ。ここで頑張って。また見に来るから」


 「うん」


 「またね」


 「待ってるわ」


 「木こり様。お待たせ」


 「はい。転移」

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