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 アイファウストを受け入れたノルトハン王国

 マウレス宰相はまず木こりに会おうとしたが寝ている所を見せられ、諦めた。

 アルミス、マルックへの丁寧且つ心のこもった謝罪は受け入れられ、ノルトハンの王城の謁見の間に飛んだ。

 アイファウストの言った通りプーアベッガー隊長達は床に座ったままで、気絶している状態。

 その周りを重装備の国軍と近衛兵が警備に当たっている。

 マウレスと共に戻った八人も縄から解放されて、極秘案件の箝口令が敷かれた。

 マウレスはノネジットの居間に向かった。


 中に入りユーミルナ妃殿下とアイファル姫に話しかけた。


 「ユーミルナ妃殿下。使徒様よりアイファル姫様に謝罪の品を預かって参りました」


 「何もされてはおりませんよ」


 「お食事の最中、陛下を東門に召喚し家族団欒のお食事を台無しにしたことへの謝罪です」


 「その様な事で?」


 「アイファウスト王子殿下は五歳以降はクラウス様とお二人きり


 「あぁぁご ごめんなさいぃぃ。アイファウスト王子殿下ぁぁお気遣いに感謝いたしますぅぅ」


 「そうだったな。

 わしらが何気なく家族一緒に頂いている食事をアイファウスト王子殿下はしたくても出来なかったのだな。

 イサム陛下とサチ妃殿下もまた然り。

 あの日の朝食が最後。

 五歳の誕生日のケーキは残されたままだったと聞き及んでいる。

 せめて。せめて。誕生日ケーキ位は家族一緒に食べさせてあげる温情が有っても良かったであろうに・・うっうぅぅ


 「あぁぁサチ妃殿下ぁぁ心中をお察しいたしますぅぅ


 「母上?」


 「アイファルぅぅあぁぁ」


 隣の席のアイファルを抱き寄せ、強く抱きしめた。


 「わたくしはここにいますよ。母上」


 「うん。うん。暖かい」


 「父上。母上はどうなさったのですか?

 ハウもまうれるもないていますよ」


 「ああ。みんながお前が可愛いと泣いているんだ」


 「やったぁぁ。母上ぇうれしぃですぅ」


 「はい。はい」


 「アイファウスト・カミミヤ王子殿下がその食事の時間を大切に思うのは至極当然。

 一回一回の食事の時間の大切さを、わしらはあまりにも軽薄に思っていたな。

 我々は変わりない日常。生きている歓びに感謝せねばな」


 「はい」


 「お会いした時はマウレスや近衛兵の言動に余程ご立腹で有ったのであろうな。

 芯はサチ妃殿下のようにお優しいお方であったのだな」


 「はい。先程お話ししていく中で、わたくしもそれを痛感いたしました。

 申し訳ございませんでした」


 「まぁ、こうして色々お聞きできたという事はお前を認めていただけのであろう」


 「ありがとうございます。

 それでユーミルナ妃殿下。こちらです」


 「絵本ですか?」


 「上中下巻の三冊です」


 「まうれる。わたくしにですか?」


 「はい。エルファサ女神様の御使い様。アイファウスト王子殿下からアイファル姫様にプレゼントです」


 「やったぁぁうれしぃぃ。あっわたくしのお名前入り。えるふぁしゃ?いしゃむ?さち?あい あいふぁうしゅと?


 「もっとお勉強が必要ね」


 「母上。あいふぁうしゅと は、じがへたくそです。よめません」




 アイファウストは教会の周囲の町を建設中で、その中でも一際大きな闘技場を建設中。

 たまたま風通しの良い塀の上にいたアイファウスト。


 「はくしゅん。風邪かな?

 早く終わらせて、帰って寝よ。

 って、ハルサーラ様にマルック隊長の家に来なさいって言われていたぁ。

 深海一万メートル?

 ぶわっくっしゅん。

 絶対に女神と父さんと母さんが噂している。

 はいはぁぁい。ちゃんと行きますよぉ」




 「アイファル。使徒様に失礼ですよ」


 「ごめんなさい」


 「ハウラサ侍従長。警戒の方は?」


 「エルファサ女神様の誓約書にサインしている者で固めました。

 寝室も天井裏を含めて全て警戒済みです。

 夜間の警戒も増員して御座います」


 「ありがとう。

 この一冊を持ってベッドに」


 「畏まりました。

 アイファル姫様。お休みの時間ですよ」


 ハウラサはユーミルナからアイファルを抱き上げた。


 「父上。母上。お休みなさいませ」


 「あぁ。おやすみ」


 「後から行きますね」


 「はい。母上。おまちしています。

 ハウぅぅ。よんでくれる」


 「はい。行きましょう」


 「あのような可愛い頃に。サチ妃殿下はさぞお辛かったでしょう。うっ。うぅぅぅ」




 「で、マウレス宰相。何だこれは」


 「わたくしが纏めたお話しの内容です」


 「殺さず生かさずか?」


 「何のお話しですか?」


 「君も見るとよい」


 「はい」


 「マウレス宰相の意見は?」


 「アイファウスト王子殿下の意見に賛成です。

 万が一。公爵を罷免するか粛清すれば敵の思うつぼ。北と南で準備が進んでいたら渡りに船です」


 「少々考える。

 近衛兵達の件はアイファルの件だけではないのだな」


 「わたくしの不徳の致すところ。申し訳ございません」


 「バカな近衛兵達と違い、巡回中お主は思考を巡らせ疲れて熟眠。その間に抜け出し事情を耽った。翌日は何食わぬ顔で」


 「よろしいので」


 「あ奴らに掛ける慈悲は無い」


 「巧妙な作戦ですわね。

 陛下にアイファルへの暴言の数々を見せ、石像の様にして文句も手出しも出来無くし、間を開けて怒りが増幅されたころに近衛兵達の傍若無人ぶりをさらけ出した。

 こうなるのは火を見るより明らか。

 不敬罪で処刑確定。婦女子を襲って公開処刑。理にかなっていますわ。

 それでねマウレス宰相。

 この人ったらわたくしの制止も聞かずに、謁見の間の石像に向かって剣で切りかかって三本がダメになったら槍を持ってダメになり、弓に持ち替え二十本程放ってようやく諦めたのよ」


 「そこまでなさったのですか。アイファウスト・カミミヤ王子殿下の術ですから恐らく何物も通さないでしょう。

 お怪我は有りませんでしたか」


 「ああ。無い。それにまだ怒りは収まっておらんわ」


 お茶を一気飲みして。


 「このわしが直々に処刑してやる」


 「側近の近衛兵が愛娘を愚弄したことはわたくしも許せません。

 それを仲間の証しとし、愉悦を得ていたなど言語道断の所業。

 あなた。その時はわたくしもご一緒に」


 「頼むぞ」


 「はい」


 「マウレス宰相。あの者らの背後は」


 「これから調べます」


 「ああ。頼む。徹底的にだぞ」


 「畏まりました」


 「そしてマウレス宰相。この度の働き。感謝する」


 「わたくしは何も。全てアイファウスト王子殿下ですよ」


 「そうであったとしても、城内をよく知り、知識の貯えでこうなった。感謝しかない」


 「そうです。今はありがたく頂戴しなさい」


 「身に余る光栄。ありがとうございます」


 「それとアキツシマ自治区の管理権限を頂いたのでしょ?」


 「はい。賜りました」


 「凄い事ではありませんか。

 あなた、宰相以外に何か特別な肩書なり、叙勲をして褒め称えましょう」


 「そうだな」


 (こう言う事かぁぁ。叩き落されて・・・わたくしなどまだまだ。子供ですね)


 「この、アイファウスト王子殿下のお言葉をもっと精査し、わしに教えてくれぬか?」


 「はい。どこまで御心を読めるか判りませんが、善処いたします」


 「押し付けて申し訳ないと思います。ですが直接空気の振動を肌で感じお言葉を聞いたのはあなた一人。

 あなたの解釈内容一つで、こちらの出方によっては大きく飛躍もし、終焉に向かう可能性も含んでいます。

 ノルトハン王国の岐路。大陸を二分するもしないもノルトハン王国次第と言っても過言ではありません。

 近衛兵達の処刑方法一つでも国民感情が揺れます。

 慎重かつ大胆に自信をもって陛下の判断が仰げる内容にして頂だい。

 あなたもしっかり吟味してください。たった一文字の違いでアイファルの未来が大きく変わりますよ」


 「解かっている」


 「マウレス宰相。宰相冥利に尽きるんじゃない。一国家ではなく大陸全体よ」


 「周りの反対を押し切って君を採用したわしの先見の明も褒めてくれよ」


 「強く推薦したのはわたくしですよ」


 「そうだったか?

 しかし。

 マウレス宰相は凄いな」

 「マウレス宰相は凄いですわね」


 「あ ありがとうございます」

 (あぁぁアイファウスト・カミミヤ王子殿下ぁぁ心がぁ脳がぁ全身がぁ溶けそうですぅぅ)

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