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 上から目線だったマウレス・ジルミナ宰相

 守衛の中。アイファウストの隣にハルサーラ。

 テーブルを挟んでマウレスが座った。


 「どうぞお掛けください」


 「失礼いたします」


 「どうです?ホルカイ帝国ジルメイダ・イヲ・ホルカイ皇帝陛下とお会いした時ぐらい緊張なさっていますか?」


 「はい」


 「大丈夫です。女神様さえ愚弄しなければ何も致しません」


 「先程は申し訳ございませんでした。近衛兵達への教育不十分でした。謝罪いたします」


 「お茶ですどうぞ「お茶ですどうぞ」


 「ありがとうございます「ありがとうございます「ありがとう」


 「マウレス宰相様。一点確認なんですがいいでしょうか?」


 「何なりと」


 「アイファル姫様は五歳。で、合っていますか?」


 「はい。五歳です」


 「そうすると宝石などにはまだご興味が無い?」


 「はい。奇麗と仰るのみです」


 「文字はお読みに?」


 「はい。かなりお勉強をなさっておいでです」


 「判りました。お茶はお嫌いでしたか?」


 「いえ。失礼します」


 「ではわたくしも。頂きます」


 「やはりイサム様達の頂きますを」


 「はい。三つ子の魂百までです。美味しい」


 「正直に申します。ただ、エルファサ女神様を愚弄する訳でも無くまた、疑った訳でも無い事をご理解いただけますか」


 「そうですか」


 「一国の判断として、アイファウスト王子殿下が本当に実在してたのかこの目で確認しておきたかった。これです」


 「まぁそうですねぇ。十年も音信不通で所在も判らない。とても良く判りますよ。

 傀儡や人形。名前だけではないか?そう思ったでしょうね。十年も女神様からなんの音沙汰も無ければそうなりますよ」


 「ご理解いただきありがとうございました」


 (あのねぇ宰相様ぁそれ女神様のお言葉を信用していないって言ってるんですよ。判ってますかぁ)

 「で、教会の方の偵察は必要だったのでしょうか?

 ここからでも屋根の部分ですが十分に見えますよ。

 わたくし本人の確認とは別の事象。何をしたかったのでしょうか?」


 「失われたローマンコンクリートの技術の確認」


 (あららぁ。妖精ちゃんからの情報で知っていますよぉぉ。

 あそこに来て初めて見聞きしたんでしょぉ。あたかも知っていたかのように言っちゃってぇぇ)

 「を、盗み見ようと?」


 「はい」


 「ハルサーラ様。盗み見ただけで再現できるのでしょうか?」


 「出来ません。

 見るだけなら粉砕や崩壊した建造物でも確認は可能ですよ。

 しかもあの場に来て初めてローマンコンクリートの存在をお知りになったのでしょ。矛盾を感じますが?


 (さすがはハルサーラ様ぁぁ素敵ぃぃ)


 マウレス宰相様。その技術の機密情報の収集以外の事を正直に仰った方が身のためですよ」


 「軍備他、砦の中の情報収集。

 決してエルファサ女神様が敵対するなどと、疑っているわではありません


 「もういい。帰れっ


 「申し訳ございません


 「帰れと言っている」


 「アイファウスト王子殿下お待ちください。

 マウレス宰相様。あなたは先ほどから疑ってはいないと言いつつ全ての言動がエルファサ女神様を疑っていらっしゃる。信じていらっしゃらない。

 そして使徒様であらせられるアイファウスト王子殿下も。

 エルファサ女神様に直接お会いしておきながら、なぜそこまで疑う必要が有ったのですか」


 「十年。十年前のカミミヤファミリー涙のバースデーの再来が無いか


 アイファウストは怒った口調で。


 「あなたが正にその起因を造っていますよ。

 真意を確かめるためにエルファサ女神様をここへお呼びいたしましょうか?直ぐにいらっしゃいますよ」


 「わ わたくしには国王陛下を国民を守る義務が有ります。突如湧いて出た今の状況にどう対処していいのか解らないのです。

 王城内で多くの貴族や使用人達が燃えました。エルファサ女神様に従わなかった者達のようです。何がどう悪いのか解らないままです。

 今のわたくしですら消し炭になる可能性が有るのです。

 どのように対応すればいいのか。何がお気に召さないのか。それらの情報が砂粒一つでも欲しいのです。

 スパイ活動で有った事は認めます。

 ですが謁見の間だけではアイファウスト王子殿下の件と教会以外、何一つ情報はもたらされませんでした。

 一部の悪事を働いた者の粛清は有りましたが、それ


 「黙れよ。

 あなたを最高幹部にしたのは間違いでしたねぇ。

 一旦与えた最高権限を剥奪したら、陛下のあなたに対する信用は失墜のどん底でしょうね」


 「あ”っ

 「あらまぁ」


 「言い訳の我が儘です。

 お前は身勝手な事をあたかも正論の様に仰っているだけですよ。いい加減にしませんか。

 謁見の間でエルファサ女神様はこの国を亡ぼすと言ったのか?

 お前達を皆殺しにすると言ったのか?

 この俺がお前を。この国の民を殺すと言ったのか?

 この俺がこの国を乗っ取ると言ったのか?

 その事実をお前は疑って確認したかっただけだろうが。

 端っからエルファサ女神様を疑っていたのだろが。嘘だと思っただけだろうが。

 この国の危機を未然に防いだエルファサ女神様を愚弄しただけだろうが。違うのかぁ。言ってみろぉ」


 ハルサーラが。


 「あなたここまでになるともうザイスター宰相。マッドジョイと変わりませんよ。

 エルファサ女神様のお怒りを買いますよ」


 「そのような


 「違いませんよ。エルファサ女神様のお言葉も信じず、アイファウスト王子殿下には盾つき、部下達は無法者。

 若気の至りで済まされるものではありませんよ」


 アイファウストがもう呆れたように。


 「はっきり言いましょう。

 あなた。宰相になるのには若過ぎた。ここまで順調すぎた。

 貴族の悪行をエルファサ女神様に暴かれ焦った。言い換えれば調べていた物をエルファサ女神様に先を越されていい気がしなかった。でしょ?」


 「・・・・」


 ハルサーラは驚いたように、しかし呆れながら。


 「そちら方面でしたか」


 「はい。功績を積んでおきたかった。

 わたくしや教会に関しての全てを知っておきノネジット・ファウス・ノルトハン国王陛下に褒めて欲しかった」


 「子供ですか?・・・はぁぁ。だから若過ぎたと」


 「はい。失敗の。いえ。周りから羨望の眼差しを受け、褒め称えられ、苦難無く死を覚悟することなく、ここまで上り詰めた優等生ですから、功績を横取りしたエルファサ女神様に嫉妬すらしますよ。

 憤りすらあったのでは?

 この国の政でも陛下からお褒めのお言葉を何度も賜ったのでしょう。

 それが嬉しくて、優越感で、本能をくすぐる快感。脳もとろけそう。

 違いますか?」


 「・・・・」


 「どうなのですか?」


 「ハルサーラ様。恥ずかしくて答えられませんよ。

 それが謁見の間でエルファサ女神様に負けた。

 ここで巻き返そうと、わたくしの情報をそれこそ砂粒一つでも取集しようとした。

 ローマンコンクリートの件でハルサーラ大司祭に後れを取った事実が気に喰わなかった。

 あなたはここで矛盾を犯している。気が付いていますよね。

 つい先程、あなたはあたかもローマンコンクリートの存在を知っていたかのように言った。ですが、現地ではこれは何ですか?と。


 (木こりは寝ていたはず。やはり別人なのか。しかし、そこまで読み解かれているとは。もう無理だ。やはり使徒様だった)


 負けた腹いせにハルサーラ大司祭より上の地位を誇示したかった。いえ、遥かに知識人であることを。天才であることを誇示したかった。

 その為にはわたくしの頭上を取ろうが不法侵入しようがハルサーラ大司祭に不敬を働こうが特別司祭のアルミスさんの事などお構いなし。

 違いますか」


 「も 申し訳ございませんでした」


 ハルサーラが。


 「それは正直には言えませんねぇ。指摘されてもはぐらかしたくなります。

 ですが、使徒様のアイファウスト王子殿下に見抜かれましたね。

 創世の女神エルファサ様に対して失礼極まりないうぬぼれ。自信過剰ですよ」


 「申し訳ございませんでした」


 「本来は友好な関係でお会いしたかったのですがいきなりの上から目線。

 事情がどうであれ使徒のわたくしを愚弄した。まぁわたくしなどはたかが十五歳。いいとしましょう。

 ですが、エルファサ女神様に対し不敬を働いたあなたのその自尊心の塊とプライドを今から地面に叩きつけ、踏みにじり、ぶっ潰し地の底まで追い詰めます。

 殺しはしません。あなたにとっては同等かもしれませんね。

 あなたが連れてきた近衛兵達のハルサーラ様への少なからぬ殺意とお嬢様方への物色するかのような目線。

 プーアベッガー隊長などはスカッシュさんを今夜のお相手に選んでいましたよ。療養中のアルミスさんまでもですよ。そして、部下には後は好きにしろ。と。

 巡察は無料で出来るお色気探しの旅だったようですね」


 「そこまでご存じ」


 「アイファウスト・カミミヤ神官長は女神様の使徒ですよ」


 「はい」


 「まぁマウレス宰相様は加わっていなかったようですが止めないと。唯一言える立場でしょう」


 「面目次第も有りません」


 「どれだけの少女が泣き、どれだけの夫が苦しんでいると思っています?

 マウレス宰相様の可愛い妹さん。アウレシアちゃんをわたくしのおもちゃに頂きましょうかね。神官長命令で」


 「うっ。もうすぐ結婚が


 「近衛兵達が強制的に相手にしていた子達の中に居ましたよ。違うんですか?」


 「この身がどうなっても


 「男なんていりません。必要も無いです。

 可愛いですねアウレシアちゃん。二十歳で薄茶色のロングヘアー。少し天然パーマ。珍しいゴールドアイで可愛い顔立ち。

 所作も可愛く。口調は優しい。口癖は兄様大好き」


 「お許しを請えないでしょうか?」


 「あなたが過去にそう言った女性を許したのなら許しましょう」


 「ぐっ」


 「ああ平民と貴族ですね。ならばわたくしは教会最高位の神官長。使徒です。平民のアウレシアちゃんを貰う権利はありますね」


 「何卒。何卒

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