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 マウレス宰相の近衛兵達の思惑

 ハルサーラ達に向かってマルックが唇に人差し指を当て。


 「お義母上静かにぃぃ。小声でぇ


 「すまない。どうなった」


 「木こり君が寝ています」


 「だから何故だ?」


 「この壁が出来て三十分ぐらいしてからこの通り」


 「ああ。ここからは見えんな」


 「何がでしょうか?」


 「トウショウ王国の崩壊した大教会より大きな教会が中心から西に向かった方に東向きに出来ている」


 「三本のとんがり屋根のやつ?」


 「あぁ。中心のてっぺんは恐らく地上から三十メートルはある。

 その前に少し低いトウショウ王国の城を小さくした建物だ。屋根の構造が全く同じだ」


 「ひやぁぁ


 騎乗したまま壁を見に行った宰相が、小声の会話を無視するように。


 「ハルサーラ様。この壁の素材は何ですか?漆喰や岩ではありませんよ。砂を固めたような素材です。見た事がありません」


 「マウレス宰相様は小さかったかもしれません。無理もないでしょう。エルファサ女神様がすべて破壊なさいましたから。

 多少は残っていますが見慣れてしまって疑問には感じなかったのでしょう。

 その素材はイサム様とサチ様が開発したローマンコンクリートと呼ばれるものです。

 この中には恐らく【鉄筋】と呼ばれるものが立てられていてその外周を塗り固めています。

 剣や槍、矢すら通しません。魔法攻撃の炎や氷攻撃も無理です。恐らくドラゴンの炎すら通さないでしょう。ほぼ岩です

 既にその技術の一切が消滅。工房主たちからの記憶も削除されました。ガラスなどと同じです」


 「誰がこれを」


 「今はまだです」


 騎乗している近衛兵の隊長がハルサーラに一歩近づいて、真下を見下ろすように。


 「マウレス宰相が質問しているのだ。口答えできる立場に無いと心得よ。答えろハルサーラ」


 隊長の横に戻って来たマウレスが。


 「隊長。いいのです」


 「はっ」


 「ハルサーラ様。トウショウ王国は貴重な技術を失ったのですね」


 「大犯罪ですよ」


 「木こりと仰る方もゴブリン戦で疲れたのでしょう。一旦引き上げませんか?」


 「マウレス宰相様の仰る通りですね。

 マルック隊長。木こり様をわたくしの馬に」


 「はい」




 近衛兵の隊長が。


 「その白馬は誰の馬だ。隊長様の俺が使ってやるぞ。その鞍ごと寄こせ」


 ハルサーラは騎乗し、木こりを前に抱きマウレスの横に並んだ。

 ハルサーラが語気を強め。


 「マウレス宰相様は一体こちらへ何をしに来られたのですか?

 先程もプーアベッガー隊長は民を困惑させるほど色々と物色をなさっていました。

 それをご存じで注意もなさっていません。

 まさか、物を奪いに来られたのですか?

 ノネジット・ファウス・ノルトハン陛下の命令とお聞きしましたが、物品を巻き上げろと王命ですか?

 それとも立場を利用して国民から物品を奪う事が目的のご来訪でしたか?」


 「貴様ぁぁ何たる不敬をぉぉ。不敬罪だぞぉぉ」


 「たかが一介の近衛兵の分際で、わたくしに対し貴様と来ましたか」


 「なんだとぉぉ」


 「ほほぉぉ。剣に手を掛けましたか。

 こちらが下手に出ていればいい気なりよって


 マウレスが慌てて。


 「お待ちくださいハルサーラ大司祭様。

 ブーアベッガー隊長。その手を下ろせ。命令だ」


 「は は い」


 「プーアベッガー隊長。先程お話ししたわたくしの地位をご存じですよね。

 改めて言いましょう。

 わたくしはエルファサ女神様より直に使命を受けた使徒様であるアイファウスト王子殿下神官長の直下ハルサーラ大司祭です。

 ご存じ無ければ申しましょう。

 わたくしの立場はそちらのマウレス宰相の上。ノネジット・ファウス・ノルトハン陛下とほぼ同格ですよ。

 これはエルファサ女神様のご承認も得ています。

 あなたは先ほど来からわたくしを敬称無しでお呼びですが、マウレス宰相様は一貫して様付けです。

 そして今は貴様呼ばわり。

 いい加減にしないと、あなたが不敬罪の適用を受けますよ。もしくは城内で起こったように魔力が体内で燃えますよ。いいのですか?」


 「うっ」


 「プーアベッガー隊長。止めなさい」


 「はっ」


 「マウレス宰相様。それだけで済むとお思いですか」


 「謝罪が必要と」


 「マルック隊長。宰相を肩書敬称無しで呼び捨てにしろ。

 プーアベッガー隊長もそこの近衛兵達も貴様と呼んで良いぞ」


 「も 申し訳ございませんでした」

 

 「なんですか?プライドが許しませんか?それとも陛下から頂いた名誉にですか?」


 「陛下から頂いたこの名誉ある宰相の名において、階下から敬称無しで呼ばれることは、陛下に・・・


 「わたくしは創世のエルファサ女神様から賜っていますよ」


 「申し訳ございませんでした。ハルサーラ大司祭様。

 プーアベッガー隊長。

 首が刎ねられたくなけば馬から降り、ハルサーラ大司祭に謝罪をなさい」


 「うっ。しかし


 「マルック隊長。

 エルファサ女神様神聖軍騎士団マルック団長としてエルファサ女神様の身許での不敬罪で捕縛せよ。抜剣も許可」


 「はっ」


 「お お待ちください。

 う 馬を降ります」


 「マルック団長。待て」


 「はい」


 騎乗するハルサーラに対し、肩を震わせ、体をこわばらせ、奥歯を鳴らしながら少し震えながら頭を下げ。


 「ハルサーラ大司祭様。数々のご無礼。申し訳ございませんでした」


 「プーアベッガー隊長。あなたは認識できないのか、理解が及ばないのか判りませんが、もう一度言いますよ。

 エルファサ女神様神聖軍騎士団から見ればあなた方一国の近衛兵騎士団など一般兵扱いですよ。

 特にマルック隊長の十名は魔王討伐戦参戦者で無傷で帰還。

 その強さはイサム陛下とサチ妃殿下のお墨付きだぞ。

 そこの近衛兵が束になって掛かっても倒せないぞ。布一枚切る事も無理だぞ。

 どうだ。

 エルファサ女神様の誓いを立てているわたくしは燃えないぞ。

 何故この場に左遷されているかも判っているだろうが。

 謁見の間にてエルファサ女神様より直接聞いていてマルック隊長へのあの態度なんだ。アルッシュ達へのあの暴言の数々はなんだ。

 ノネジット陛下でも書簡内で謝罪を述べているではないかぁ。それを先程その耳で聞いておったであろうがぁ。

 無能だぁぁ?

 いったいどいつがどいつに向かって言ったのだ。

 ノネジット陛下のお言葉も理解できぬ貴様の方が無能であろうがぁ。

 その程度で許される行為とでも思ったか」


 「マ マルック騎士団長様。大変なご無礼を致しました。申し訳ございません」


 ハルサーラは更に語気を強め。


 「立ったままでお前は民を許したのか。どうなんだ。

 マウレス宰相。犯罪者奴隷にも劣る者らをよく連れて歩いているな。

 このような部下を派遣したノネジット陛下にわたくしから断罪を


 プーアベッガーは、いきなり五体投地をして。


 「マルック騎士団長様ぁぁ。申し訳ございませんでしたぁぁ」


 「何をしているのだ部下達よ。

 マウレス宰相。聞いていなかったのか?」


 「全員馬を降り、土下座にて謝罪せよ。

 わたくしの言葉に逆らえば問答無用でこの場で処刑する」


 「「「「「はい」」」」」


 「「「「「マルック隊長。申し訳ございませんでしたぁぁ」」」」」


 「次は無い」


 「はい」


 「マウレス宰相。プーアベッガー隊長。そして近衛兵全員に告ぐ。

 今後一切の物色行為は禁止。

 言葉に発した時点でノネジット・ファウス・ノルトハン陛下に報告致します。良いですね」


 「わたくしも一切の行為を許しません」


 「以後、致しません。申し訳ございませんでした」


 「判りました。今回は許しましょう。次はありません」


 「ありがとうございます。ハルサーラ大司祭様」


 マウレス宰相が。


 「お許しを頂けた。騎乗しなさい。東門の守衛に向かいます」


 「はっ」




 森の中を進む一行。


 マウレス宰相とハルサーラの前方を行くプーアベッガー隊長と近衛兵。


 「いつか必ず、ぶっ殺してやる。

 この集落の金目の物や女達は合法的に全て奪い取ってやる」


 「例のあれですか。嫌がらせをしておいて、謝らせる」


 「ああ。それなら問題は起きん」


 「隊長。今夜は楽しめそうです」


 「とにかく今夜は宿泊に持ち込み、いつも通り宰相を薬で眠らせ、全てを奪う。

 今は黙ってろ。順序が有る」


 「了解」

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