マウレス宰相と近衛兵達が現る
休憩の後、キングが押さえていたエルドラット村の入り口を馬を連れて抜け。
アイファウストが。
「サーチをかけましたが人や魔物は居ませんね。小動物すらいません。
食べ尽くされているのでしょうね」
「そうですわねぇ。少々匂いがきついです。完全に住処になっていましたね。
この屋敷の中はどのようになっているのでしょうか?」
「キングが住んでいたのでしょう。ぶち抜けの箱だけになっています」
「使えませんわねぇ」
「これは使えませんね」
「ハルサーラ様」
「あらデービッシュ。向こうはもういいの?」
「はい。問題はりません。が、こちらに来るまでの古い道が整備された街道より奇麗になっています。
既に馬車のすれ違いすら可能な状態です。
ゴブリン討伐と並行して整備したのですか?」
「木こり様。説明を求めます」
「伏兵回収の折に整備しました。あっ。許可なくダメでしたか?戻してきます」
「お待ちください」
「はいっ」
「デービッシュ。後ろのお方と近衛兵がここへ来た理由」
「はっ。どうぞ」
騎乗したままのマウレスは地面に立つハルサーラに向かって。
「お初にお目にかかります。ハルサーラ様。
わたくしこの国ノルトハン王国国王ノネジット・ファウス・ノルトハン陛下の宰相を務めるマウレス・ジルミナでございます。
以後、お見知りおきを」
「エマルサーラ商会頭取。ハルサーラでございます。
紹介が遅れましたこと。平にご容赦を」
(うわぁぁお貴族様だぁぁ逃げよぉぉ)
「木こり様。どちらへ?」
(うへっ)
「えっとぉ
「マルック隊長。抱き締めて逃がさぬように」
「了解」
(うごぉぉ今度はおっさんに抱きしめられたぁぁトラウマになるぅぅ)
「喜んでんのか?」
「違いますっ」
「それでマウレス宰相様はお城を空けてまで何用でこのような辺境の地に?
他の領地は巡察していらしていたと聞き及びますが、一度もいらしてはくださらなかったのでは?」
ハルサーラの言葉を聞き近衛兵の一人が騎乗したまま一歩前に出た。だが、マウレスが右手を横に出して。
「隊長。構いません。事実です。
手厳しい御指摘です。その通りで弁明の余地も有りません。
エルファサ女神様が城にご降臨なされました」
「既に直接聞き及んでおります」
「もう報告が?直接?」
「わたくし共の目前にご降臨なさり、些少ですが聞き及んでおります」
「こちらノネジット・ファウス・ノルトハン陛下からの書簡にございます。
謝罪と感謝と許可証になります」
「このような場所で見せていただくものではございませんね。
場を改めましょう。
門の守衛でいかがでしょうか」
「一点の確認と一点の許可内容のみ。発言を」
「どうぞ」
「いらっしゃいますか?」
「いらっしゃいます」
「許可内容は後程地図にて示しますがジード村の北暫くからこの廃村の南暫く。
国境砦から西、五キロ地点までを教会に無償貸与。
ここの領主。ガウレシア・ト・シャウトリーゼ辺境伯爵も陛下に申請書を提出。受理されております。
その書類の中にございます。後ほどご確認を」
「畏まりました。税金さえ納めれば教会の自由にしていいと」
「さようです。今まで通り教会の資産、運用資金、寄付等に関しては非課税となります。
詳細はそちらに」
「お早い対応ですね。何か不都合でも?」
「お耳を」
「はい」
「およそ五十名の裏切り者が消し炭になりました」
「では、守衛の方へ。
向かうのはわたくしとデービッシュ。
マルック隊長。ここは自由に開拓しなさい。
ここに教会が在ると良いでしょうね」
「了解」
「マウレス宰相様。近衛兵は誰一人残さず。森の中の五人も城壁上の三人も引かせてください」
「なぜ?」
「死にます。敵と判断され確実に」
「判りました。隊長。全員です。門に向かいます」
「よろしいのですか、あのような言動。しかも見張りを引かせろとは言語道断の
「隊長。命令です」
「了解。全員。行くぞ」
「はっ」
「我々近衛隊が先頭を誘導する。冒険者ども邪魔だ。道を開けろっ。
あぁ左遷隊長。門の使えねぇ兵達を近衛の隊長の俺がじょぉぉずに使ってやる。ありがたく思え」
「宜しくお願いいたします」
「マルック隊長」
「木こり君よ。今は黙ってな」
「はい」
(腹立つぅぅ。めっちゃむかついたぁぁ。ハルサーラ様やマルック隊長に無礼千万。許さん。妖精ちゃん達。お願い)
アイファウストの頭の上に誰にも気づかれない小さな光が数個生まれ、それぞれの方向へ消えていった。
「木こり君。近衛兵の奴らはみんな行ったか?」
「はい。残っていませんよ」
「じゃぁおっぱじめようか。なんか道具有るのか?」
「じゃぁですね。僕以外の全員。先ほどのテーブルまで戻ってください。
絶対にそこから動かないように。巻き込まれます」
「何すんの?」
「いいですから」
「判った。全員。テーブルまで後退」
「了解」
一瞬で国境砦と同じ高さの五メートルほどの壁が真横に立ち上がり周囲を囲っていった。
マルック達はポカーンと口を開け立ち尽くし。
「なんだぁぁ」
馬達は平然としている。
三十分ほどで転移でテーブル横に現れた木こり。
「久しぶりでちょっと疲れました。座って休憩します。あぁもう夕方ですねぇ
「木こり君?」
「隊長寝ています」
「シーツ持ってないかぁ
「あります。木こり様からお借りしたシーツです。洗って奇麗です」
「チェルッシュ。掛けてやってくれ。
ジムと両脇に座って倒れねぇように」
「「了解」」
「他は周囲警戒」
「了解」
十分ほどしてハルサーラとマウレス。近衛兵達が血相を変えて馬で乗り付けた。




