身元を隠すための変身
アイファウスト達はマルックのキッチンで遅掛けの昼食を終えていた。
その間にハルサーラの娘三人と夫一人が転移で現れ、アイファウストへの挨拶は後程として、アルミスの全回復を抱き着き涙しながら喜んだ。
ハルサーラとマルックでテーブルを囲んでお茶の時間。
ハルサーラが。
「アイファウスト王子殿下に娘達のご紹介をしたいのですが」
「は はい」
(やっべぇぇ聞いただけ緊張して来たぁぁ。食事も喉を通らなかったのにぃぃ。冒険者じゃダメだな。貴族ぅぅあれ?着替えるのぉぉ。能力が上がったの?仕方ない)
「良いでしょうか?」
「この木こりの格好では失礼と思います。着替えて参ります」
「どちらで?」
(ああこれも一瞬で着替えられるのね。私服の着替えとは別口なのねぇ)
「訂正いたします。ここで。僕がいいよ。と言うまで目を閉じて頂けますか?」
「判りました。みな従いなさい」
「はい」
「では閉じて下さい。はい。いいですよ」
「えぇぇぇ?」
「魔法ですか?」
「はい。一瞬で着替える事が可能です。
こちらの装いは母が残してくれたものです。少々派手ですがご容赦を。
上下黒の衣装は母の国の学生が着ている男子用詰襟学生服を元にしたデザインで長ランタイプの隠しボタン。何故か縁取りは金の刺繍です。
ズボンの横には金の縦一本ライン。
中はこのように濃い青のスタンドカラーシャツ。
こちらは愛刀で両親が名付け親。アイコウユウ。と申します。
前ボタンを閉じても柄と鞘尻の方はスリットにより出ています。
クラウスより、高貴なお方と正式なご挨拶の時に着るようにと教育を受けております。
初めて着ましたが問題は無いでしょうか?」
「その場で回って頂くことは?」
「はい。では」
「とっても素敵ですよ」
「ありがとうございます。ハルサーラ様」
「もしかしてその服をお召しになると貴族調になり、お顔立ちも可愛いから凛々しく。髪の毛も真っ黒で少し長くなるのかしら?」
「身長も高くなりましたよ。二十センチくらい」
(リッシュさん。マジっすかぁ。二十センチって事は百七十五ぉぉ。おぉぉ理想の高さぁぁ)
「初めてなので自らの容姿を見た事がございません。そのようになっていますか?」
「リッシュ。鏡を」
「はい。どうぞ」
「銅板ですか?」
「全て壊れています」
「少々お待ちください。これでこう。できた。あぁちょっと寂しいな。こうしてこれだな。うん。後は伺おう。
こちらをハルサーラ様にお譲りします。使ってください。
鏡の大きさは直径で二十センチ。少々大き目で手持ちも、置くのも可能。
台座は金。装飾はダイヤとルビー。一部に大森林のドラゴンのブレスを浴びた巨木を使っております。
デザインはわたくしが施しましたのでお気に召さないかもしれません。変更も可能なので申し付けて下さい。
被せて有るシルクの布を取り、蓋を開けますが最初に映ったお方の魔力を感知して絶対に離れません。失礼な言い方ですがお墓まで追いかけて行きます。
落としても叩いても壊れませんし、万が一火災に遭っても変色すらしません。ドラゴンの炎に耐えるくらいですから。アルミスさんに失礼でした。申し訳ございません。
ハルサーラ様。お手を」
「良いのでしょうか?」
「貰ってください。医術と武器以外の物を女性に手渡しするのは女神と母を除き初めてです。少々手が震えて恥ずかしいですね」
「その様な物は頂けません。これは初めて好きになったお方にする事です」
「そうですか。出した品物を元に戻せと仰るのですね」
「判りました。男に恥をかかせてはいけません。ありがたく頂戴いたしますが、確認です。
わたくしに対しての恋愛感情ではありませんね?」
「今後世間知らずがお世話になります。嫌いでいてもらうより好きになって頂きたいです。わたくしもそう努力いたします。
申し訳ございませんが初対面で言葉で解って頂くのは難しい。
今、わたくしに出来る最高の物をお出ししました。
ハルサーラ様が止めど無く要求されるお方では無いと判断しました。また、大切に扱って頂けると確信しております。
この回答でいかがでしょうか?」
「頂戴いたします。テーブルに後ろのつっかえを出して立て」
「絶対に何方もハルサーラ様の後ろに立たないで下さい」
「このシルクの布袋を取るのですね」
「はい。上に」
「この木の扉を両側に素敵ぃぃ。素晴らしいですわ」
「お気に召して頂けましたか?」
「とても気に入りました。何より鏡です。昔見た鏡です」
「喜んでいただけて光栄です」
「リッシュに見せても?」
「はい。もう魔力の感知は終わっています。どうぞ」
「御覧なさい」
「本当に素敵です。わたくしこのような顔に育っていたのですね」
「何言っているの。可愛いわよ」
「ありがとうございます」
「アイファウスト王子殿下は鏡をお持ちでは無いのですか?」
「はい。ですが成人してクラウスに置いて行かれてから色々覚醒しています。鏡もその一つです」
「そちらに向けますね」
「いえ。自分用を一緒に作りました。わたくしのはこれです。
約五センチ八センチのこの胸ポケットに入るサイズでミスリルのカバー付きです。
やはりあまりいい顔立ちではありませんね。
今、ご貴族のわたくしぐらいのご子息の髪型は?」
「油で固めた七三。右分けが伯爵以上。それ以外は左分け」
「こんな感じですか?」
「えぇぇ。手で撫でただけで?」
「はい」
「でもあまりお似合いではありませんね。大奥様」
「そうねぇ。先程のわしゃわしゃっとしているけど纏まっていて、おでこを隠した雰囲気が良かったわね」
「こうですか?」
「もう少し後ろが長いと良かったのですが」
「こうですか?」
「長さも変えれるのですか?」
「はい。魔法で自由自在です。わたくししか出来ませんが。例えばアルミスさんの金髪ロング」
「おいおい全くそのまんまじゃねぇか」
「凄いわねぇ。パーマネントなんかも?」
「はい。そうですねぇ金髪ですとこれですかね」
「あぁぁ斬新。両脇の前髪が縦にクルクルですぅぅ」
「それは何て言う髪型なの?」
「金髪縦ロールとでも呼んでください」
「他は?」
「そうですねぇあまりレパートリーは有りませんが。これはどうでしょうか?
金髪をそのままで束ねて左肩で太めの三つ編みです。母に聞きました」
「大奥様」
「アイファウスト王子殿下。長女のユイミナはケーキ屋と理髪店を営んでいます。
お教えくださいとは言いません。見せて頂くことは可能でしょうか?」
「はい。ですがこの格好ででしょうか?」
「はい。そのままで。
リッシュ。皆をここへ。いえ。あちらに行きます」
「はい。伝えて参ります」
「デービッシュ。表で警備をしているナルッシュを呼んで来て」
「はい」
デービッシュと男が入って来て、男は跪いて。
「次女マインシュの夫ナルッシュにございます。
エマルサーラ商会の護衛隊の指揮隊長を務めています。護衛隊の長になります。
以後お見知りおきを」
「少々髪型が変ですがアイファウストです。宜しく」
「はい。で、その髪型は?」
「ナルッシュ。気にするな。戻って良いぞ」
「はい。失礼いたします」
「デービッシュはここでマルックと警備せよ」
「了解「了解」
「参りましょうか?」
「はい。少々恥ずかしですが」
アルミスの部屋で長女ユイミナ 次女マインシュ 三女スカッシュ の紹介を受けて感謝を受けた。
その後、雑談後、髪型の話しに移り。
三女のスカッシュが。
「お母様。町中や屋敷で身を隠すのであれば女装という手もありますよ」
「そうねぇぇ
「あのぉぉ少々お待ちいただけませんか?本人の意思とか
「主達。面白い話しをしているな」
「エルファサ女神様」
アイファウスト以外が傅き。
「創世の女神エルファサだ。宜しくな」
「はい」
「皆の名のは知っておる。故に紹介は要らぬ。立って良いぞ」
「はい」
「でだ、スカッシュ。何と申した?」
「身を隠すには女装が良いのではと」
「許す。許すぞ。わたくしも見たい
「女神ぃぃぃ
「アイよ。収納を見せよ。ふむふむなるほど。
「覗きは犯罪ですよ」
「上から下まで知っておるぞ。何なら水晶の
「申し訳ございません」
「素直でよろしい。
でだ、注文だ。パーティードレス。ワンピース。乗馬服。メイド。町娘を町娘から着なさい。
胸も膨らませ、下は無くしなさい。下着も付ける事。
髪型と色。靴は任せます。
いいですね。返事は?」
「はい。町娘は少々お待ちください。縫製が間に合いません。
メイドから。はいっ」
「可愛いじゃないかぁぁアイぃぃ
「むぎゅぅぅ
「滅茶苦茶可愛ぃぃ
「おリボンの付いたカチューシャが斬新だわぁぁ
「完全に負けました」
「気を落とさなのリッシュ」
「奥様ぁぁ胸が胸が大きいい
「凄いわよねぇぇ何処から見ても女性よ。付いてないのですよね」
「ないぞ。ほら」
「あうっ。どこに手を当てているのですかぁぁ
「アイファウスト王子殿下。このスタイルでお名前を決めていらっしゃるのですか?」
「いえ。全く。このような事になるとは思っておりませんでした。大奥様。あら?」
「アイ。スキルを見て見なさい?」
「これは。もしかして服装に合わせた口調と所作でございますか女神様」
「アイの行動と話し方がすべて自動変換されている。
皆様にご挨拶を」
「はい。この度ハルサーラ様のお屋敷のメイドとしてお仕えする事になりました。サクラと申します。
お嬢様皆様。以後、宜しくお願いいたします」
「母上。わたくしが頂きます」
「マインシュお姉様の所には優秀なメイドが沢山いるじゃありませんか。
わたくしがお預かりいたします」
「何を言っているのかしらスカッシュ。今の紹介聞かなかったの?
わたくしのお屋敷に入るのですよ。
家事一般から貴族の所作。護身術から護衛まで。全てが世界一。
エルファサ女神様それで身を隠せますがいかがでしょうか?」
「そうねぇ。全て見てから考えましょう」
「はい。お茶のご用意」
「「はい」」
その後はアイファウストのこちらの世界での黒歴史となった。
最終的にはTPOに合わせ身を隠す事になった。
アイファウストの女装を堪能した女神は王城の話しをして帰っていった。




