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 大混乱に陥るノルトハン王国王城

 「陛下お戻りください」


 「そうだな」




 「マウレス。男爵の遺体は?」


 「今処理しています。お力は学校時分に聞いた通りでした」


 「そうだなぁ。ジームダーナの件は一歩遅れたな」


 「申し訳ございません。ですが全ての事案が時効前で助かりました」


 「だな。消し炭以外に、他に変わったところは?破裂する音が響いておったが」


 「エルファサ女神様のお怒りのお声で調度品や陶器、花瓶等が破壊しました。

 調査が必要ですが、恐らくジームダーナから購入した備品ではないかと思われます」


 「この王城内や王宮などにも有ったな」


 「今調べに向かっています。が。ご報告が」


 「申せ」


 「男爵と共にもう一人


 「ぎゃぁぁぁ「ぎぇぇぇぇ「ぎょえぇぇぇ


 「三人追加か。これで五人になったな」


 「まだ追加があります。男爵と同時に扉の外で三人。天井裏で二人。庭で十人です。計二十人です。あぁまだまだ増えそうです


 「何もできん。止まるまで放置だ」


 「はい。こちらが詳細ですね」


 「分厚いな。おそらくなにかしらの術が込められておるであろうな」


 「城外不出と破損の修復。故意による場合は死。ですね。後は判りません。

 いかがいたしましょうか。この大陸の宝物となりました」


 「少し待ってくれ。少々疲れた。腰も抜けて動けぬ」


 「エイレッツ様の件で何かお体に?」


 「いや、そうでは無い。いや、そうかもしれんな。

 今思えば何故わしはあの時救済しなかったのだろうな。とんでもない罪を犯していた。その恐怖で体が硬直したのかもしれぬ」


 「後程対応を考えましょう」


 「そうだな。宜しく頼む」


 「畏まりました。ネイナ君。ウイール君。体に変調は?」


 「ございません。ですが、とても温かく優しく包まれているようです」


 「わたくしもそのように感じています。とても幸せです」


 「二人共。それがエルファサ女神様の祝福だ。良かったな」


 「「はい。陛下」」


 「お二人共エルファサ女神様の側仕えのお役目ご苦労様でした。

 今日は父上と共に都内の屋敷に戻りなさい」


 「「はい。宰相様」」


 「確認ですが履歴書にも書いていなかった通り、転移は持っていなかったのですね」


 「「はい」」


 「それが突然使えるようになった」


 「マウレス。創世の女神エルファサ様だぞ。全てをお創りに成れる。ゼロからだ」


 「本物の御力なのですね。

 そのドレスは大切に扱うのですよ」


 「「はい」」


 「マウレス。今日は閉会としよう」


 「皆聞け。エルファサ女神様は他国への開示は制限されなかった。

 しかし、この部屋で念話を使用したものが五人。扉の外で三人。天井裏で二人。庭で十三人が炭となった。

 わたくしへの念話報告では、まだまだ増え続けている。

 国としても他国へ通ずる事を制限しないが一切を自己責任として国は一切関知しない。故に死亡保障など家族への支援も行わない。

 異議異論を申し立てても創世の女神エルファサ様の行いである。国として抗うことは無くまたその術も知らない。

 かの魔王ですら女神様がご加護を与え、派遣したイサム陛下とサチ妃殿下で討伐された。

 皆も知っての通りカミミヤファミリー涙のバースデーの時のように到底人が抗えるものでもない。

 その御力は大陸全土に一瞬で同時に及んだ。

 もし女神様に異を唱えるのであれば新たにできる教会で異議申し立てを行うが良い。

 もしくは御使い様でいらっしゃるアイファウスト王子殿下に謁見を賜り直訴せよ。

 改めて言う。女神様及びアイファウスト王子殿下の件とそれにまつわる災いに関しては国は一切ノータッチである。関与を持たない。

 これを以って閉会とする。散会せよ」


 「はっ」


 「マウレス宰相」


 「コルレット子爵。何か?」


 「国民に対しお触れも出さないのですか?

 非常事態に国は国王は国民を見捨て放置した。そうはなりませんか?」


 「出せば逆に興味を持ち道端に炭が転がると思うが?

 各個人の思想をまで国は管理できん。それこそ女神様の意に背き、アイファウスト王子殿下が悲しむ国家が行う国民への弾圧となる。

 先程も仰っていらしたが、既に十年前。女神様は他の神を信ずれば災いを起こすと信託を下された。しかし、今の今まで大きな災いは起きていない。

 これはひとえに大なり小なりエルファサ女神様を信仰している証だ。そしてご慈悲だ。

 それに国を挙げてエルファサ女神様を信仰せよと弾圧じみた事をすればアイファウスト王子殿下が神官長としてお勤めになる真教会が浮き彫りになり民の思想があらぬ方向へ向かう。

 実質、忌避されておられる王となってしまう。

 だが、あまりに女神様を恐れれば民達はそれを望みクーデターの要因となる。本末転倒だ。

 念話を飛ばしただけ。心に思っただけで炭になることに国としてどう対処できる。どう、書き記せば正解かコルレット子爵はご存じか?」


 「いえ」


 ノネジットが。


 「この中。いやこの大陸全土で女神様を心からから信仰している者がどれほどいるのか?

 無信者も多いであろう。しかし、その全てが炭になったのか?

 わたくしは今まで通り平穏な日常を送れば災いは無いと確信する。

 民に向け 平常心で日常を送れ そう打診すればよいか?」


 「深慮に欠けた発言をお許しください。陛下。宰相」


 「構わぬ。コルレット子爵が民を思う思念は良く伝わった。

 しかし、私とて今の現状どのように対応するのが最善か思慮が追い付かぬ。

 この後、マウレス宰相と対応を協議し報告しよう。その時、貴君らの知恵を借りるやもしれぬ。その時は頼むぞ」


 「はい」


 「マウレス。動けぬ」


 「担架を持てぇぇ」


 「はい」


 「公爵閣下と侯爵殿は陛下とご一緒に」


 「判った」「畏まりました」


 「ハウラサ侍従長」


 「マウレス宰相様。ここに」


 「ユーミルナ妃殿下とアイファル姫様の御身は?」


 「今、こちらにいらっしゃいます」


 「マウレス。ここに居ります」


 「御身に変化は?」


 「なにもございません。アイファルも元気です。

 途中からでしたがアイファルを抱いたまま、エルファサ女神様のご神託を聞いておりましたよ」


 「結界で中には入れなかったのでは?」


 「エルファサ女神様より直接こちらに来るようにとご指示がございました。

 そして、中に入る事が叶いました」


 「そうでしたか」


 「妃殿下。アイファル姫様をわたくしがお預かりいたします」


 「ハウラサ侍従長。お願いね」


 「姫様、こちらへ」


 「うん」


 「お疲れではありませんか?」


 「だいじょうぶぅぅ。

 まうれる。お父上はどうしたの?」


 「女神様と一杯お話ししてお疲れになってしまいました。横になればすぐに良くなりますよ」


 「ハウぅぅ。お父上がおつかれだったぁぁ」


 「さようでございますね。一杯お仕事をなさいましたので」


 「まうえる。お父上のだっこはあとから?」


 「はい。その時はまたお呼びいたします」


 「うん。わかったぁぁ。お父上。わたくしはおとなしくしてまっています」


 「ああ。後でな」


 「はい」


 女神の行いとマウレスの言葉でこの日の出来事の一切が外部に漏れる事は無かった。

 ただ、貴族の突然の死に抗議が起きたがそこでも災いが起き、目に見えない女神の怒りとして認識されていった。

 そして、燃えた貴族らは貴族間でも煙たがられる者らだったので当然の天罰と認識されエルファサ女神を怨む者は居なかった。

 ノネジットもマウレスも意に介することなく宣言通りに粛々と処理を行っていった。

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