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 預けるハルサーラ達の憂いも断つ

 「端的に申せば息子。恋人。夫。お互いに口付けを交わす中だ。

 サチの許可が出ぬ故、体の交わりは出来ておらぬ。

 わたくしは何時でも準備が出来ておるのに」


 「溺愛しておいでだと」


 「そのような生ぬるい言葉で片付けられるものでは無い。体の一部だ。

 皆の者。よぉぉく聞け。

 本人は拒んでおるがアイファウストは紛れも無くわたくしの使徒だ。

 わたくしの可愛いアイに刃を向け。アイが悲しむようなことを行えば消し炭にしてやる。心しておけ」


 「はっ」


 「まぁ国軍一万、二万相手でもアイには敵わぬがな。

 一つ教えておいてやろう。

 つい先ほどアイは標高八千メートルの雪山の中で八メートル級のドラゴンをたった一人で一秒で殺しておる。

 アイの収納に入っておるから機会があれば見せてもらうがいい。

 ちなみに収納には同等のドラゴンが二桁入っておる。

 もう一点。アイがその気になればこの大陸の三分の一の範囲の自身への殺意が判るスキルを持っておるぞ。

 一瞬で目の前に来るからな。気を付けろぉぉ」


 「うっ」


 「そう心配するな。心根は優しく、小動物や子供にも好かれるアイだ。普通に接していればそこら辺の十五歳の少年だ。

 かなりの人見知りで引っ込み思案でボッチ好きだが超が付くほど寂しがり屋。

 とにかく同年代の女性は避ける。目を合わせることも出来ぬほどのシャイな少年だ。

 五歳以降、女性を救出するため以外に女性に触れた事すらない。わたくしとサチは別だぞ。

 高い教養で造詣にも深く、十年前にわたくしが破壊し尽くした物の全て以上を一人で復活させる知識と知恵と技術を有している。

 この大陸の全ての国の歴史から現在の法律の全てを覚えている。

 戦略思想にも長け、今魔王が出現しても瞬殺であろうな。

 貴族の嗜みも所作もダンスもお主らに引けは取らぬぞ。

 ダンスの指南役はお主らもよぉぉく知っておるクラウスだ。そしてそれを見たわたくしの友人、愛の女神のヴィーナスが絶賛した。

 ただし、酒は勧めるな。暴走してお主らでは手に負えなくなる。死人も覚悟せよ。

 ただ、隔離生活が長かったので一般常識に非常に疎い。故にハルサーラに頼んだ。

 アイの自慢話になったな」


 「もしよろしければ、ダンス用の衣装のプレゼントなど」


 「アイは自分で作れる。

 ネイナ。ウイールちこう寄れ」


 「「はい」」


 「お主らにアイが作ったダンスパーティー用のドレスをやろう。受け取るがいい」


 「えぇぇ奇麗ぃぃ「はぁぁ素敵ぃぃ」


 「色は白が基調でデザインは別々だ。わたくしの見立てで渡したが、気に入ったか?」


 「「はい」」


 「アイの加護が掛かっていて、サイズは着ようとする者に自動で合わせる。

 あまり変わらぬな。知っていたかのようだ。

 後、それぞれに合いそうな靴と小物を収納に入れておいた。後で見ておくがいい」


 「「ありがとうございます」」


 「エルファサ女神様。エマルサーラ商会


 ノネジットの後方から声がして、ノネジットは椅子から立ち上がって振り返り、怒鳴るようように。


 「発言の許可を得て名を名乗らんかぁぁ


 「ノネジット落ち着け」


 「申し訳ございません。

 ジームダーナ伯爵。先ずはお伺いの許可を得てからだぞ」


 「なぁぁに構わん。ジームダーナ・ト・ジジャルタ伯爵。申せ」


 「私の名を?」


 「わたくしの中では有名だからな。顔は知らなんだが。

 ノネジットの横に来て跪いて話せ」


 「はっ。何故、小売店舗以下のエマルサーラ商会なのでしょうか?」


 「聞かぬと判らぬか?他の貴族は薄々勘付いておると思うが?ノネジットどうだ」


 「はい。恐らくは。

 ジームダーナ。ここで下がった方が良いと私は思うぞ」


 「お聞きしとうございます」


 「つい最近判明したことだがイサム達に追従したこの国の若き兵士三十名。

 内、生還した十名を勇者の協力者として褒め称えておきながら十年前、誰かの親父がスパイ容疑を申し立て、ノネジットを騙しぬいて東の地に左遷した。

 誰の父親で有ったかなぁ。ジダーナ。とか言う名前だったようなぁ。

 その勇者の食料調達から武器の補給までの後方支援を買って出て功績を挙げたのがエマルサーラ商会。


 しかし、カミミヤファミリー涙のバースデーの日。商会の頭取と妻。娘のハルサーラの夫が亡くなった。殺傷傷のある焼死体で見つかった。

 この大陸でわたくしが起こした災いの時、その屋敷は無傷だった。半日後に火災が起き崩壊し消失。

 明らかに女神の災いでは無いとノネジットが調査を厳命。

 当然だ。皆も知っておるように教会が放り出したイサムとサチを救い、教育し、魔王を倒すまでに育て上げたのはハルサーラの夫、エイレッツだぞ。

 何故、わたくしの恩人とも言えるエイレッツをわたくし自ら殺さねばならんのだ。

 これに関してはハルサーラの一族を匿う事をしなかったノネジット。貴様にも責任が有るからな。わたくしがこうして出てきた以上報いは受けてもらう。殺しはせぬ。良いな」


 「申し訳 ございませんでしたぁ」


 「それでだ。実行組織の賊が捕らわれた。誰かの父親の配下が事情聴取の際に賊たちは逃走。その後遺体で見つかった。迷宮入り。


 その後、当時誰かが頭取を務めていた商会が販路を一気に拡大。飛ぶ鳥を落とす勢いで、ノルトハン王国で十本の指に入る快進撃。

 なぁぁぜか販路を奪われたのはエマルサーラ商会とその協力者の商会。

 潰れた商会の頭取家族及び従業員は東の地に奴隷落ちで区分は商売に携われない農夫。

 二十歳までの女性は軒並み行方不明。

 両親亡き後一人娘のハルサーラは冒険者C級であること、国家の損失に関わる理由で奴隷落ちを免れ、娘四人と共に事業を受け継いだ。

 十五年前以前から両親が続けていた教会の息の掛かっていない孤児院への支援も。それは今でも続いている。

 ハルサーラの娘四人と婿三人も決して裕福では無い生活が強いられていても、快く協力している。


 それが大変気に入ってな。

 わたくしはこの大陸で唯一の教会お抱え商会とした。

 どうした泣いているのか?床に水溜りが出来ているぞジームダーナ。殊勝な心掛けだ。汗だったか。

 おっといけないなマウレスの前に紙が落ちた。

 すまんマウレス。読み上げてくれるか場合によってはゴミだからな」


 「十年前の奴隷売買契約書。売り手ジジャルタ商会頭取ジームダーナ。買い手ジキルット商会頭取ジームダーナ。

 奴隷売買契約書承認者。ジダーナ・ト・ジジャルタ伯爵。

 奴隷となった理由。借金の返済。

 奴隷となった者の名称は端折ります。人数五十二名。十歳から二十歳まで。すべて女性。

 売買金額金貨十枚です。

 二枚目。

 販売先の売買契約書。

 店舗から今は討伐されたボスの名まで。

 も 申し


 「構わん。涙を拭いてからでよいぞ」


 「失礼いたしました。他にジームダーナのサイン入りのエマルサーラ商会屋敷の襲撃指示書もあります。

 近衛兵囲め」


 「はっ」


 「ジダーナの名も有ります。貴族と賊の繋がりは問答無用で捕縛。

 ジームダーナの明確な殺人命令。こちらは時効前です」


 「ジームダーナ。わたくしを誰だと心得るかっ。この大陸の全てを創り出し、全てを破壊できる創世の女神エルファサであるぞ。騙し、隠し果せるとでも思ったかぁぁ。ドアホウがぁぁ」


 ノネジットが立ち上がって。


 「ひっ捕らえよぉぉ」


 「はっ」


 「口も塞げぇぇ


 「了解」


 ノネジットは跪いて。


 「エルファサ女神様。わたくしの国王令で奴隷落ちの件は抹消させていただきます。

 売られた子達もわたくしの方で行方を調べます。

 全てが後手になり申し訳ございません」


 「わたくしも色々あってここに至るまでに時間が掛かった。

 その子らに申し訳なく思う」


 「女神様が頭を下げる事ではございません。

 全てを見抜けなかったわたくしに非がございます。お直り下さい」


 「ありがとう。後はよしなに頼む」


 「お任せ下さい。王命だ全ての術を破壊し、地下牢に放り込め」


 「はっ。立て。行くぞ」




 「そろそろ時間だな。

 ここに詳細を置く。熟読せよ」


 「はっ」


 「各国への通達は止めはせぬが内容を吟味せよ。

 ネイナ。ウイール。またな」


 「「はい」」


 「いかん。言い忘れておった。

 アイファウストは王になることを心から強く拒んでおる。わたくしもイサムもサチも根負けして諦めた。

 地位も名誉も名声も金にも興味が全くない。先に言ったように女にもだ。

 神官長もわたくしが勝手に授けただけで、上に立つ気はないだろうな。実質ハルサーラ大司祭が教会の運営者となるな。

 それと命を助けた者からの礼も謝礼も全く受け取らぬ。無理強いすれば転移で逃げて二度と会えぬ。

 ただ、それをいいことに一般常識に疎いアイを騙し利用したらわたくしが許さん。

 アイのしたいようにさせてやれ。ではな」


 玉座が光に包まれ、光の粒が天井へ消えていった。

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