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 北門のおじさん。デービッシュ

 昼寝をしていたアイファウストのお腹が鳴った。


 「ヤヴァイ。お腹が空いた。今何時?お昼かぁうぅぅんよく寝たぁぁ。完全復活だな。

 あ”っドラゴンのお腹の中?冠雪の山々が見えます。違いますね。

 さてと。ドラゴンちゃんを仕舞いましょうか。凍ってる。標本みたいだ。

 巨大鳥だったのに父さんがドラゴンなんて言うからドラゴンになっちゃたよ。アニメだったら間違いなくワイバーンなのに。でも、あまり群れてないんだよねぇ。

 さてと、お宝と遺骨だな。なんまいだぁぁ。なんまいだぁぁ。ちーん。みんなこれで許して。

 女神の教育を受けててどうなのよ。って、死者を弔うお経が無いのよねぇ。さすが創る事に極振りの創世の女神。

 みんな。家族の元へ一緒に帰ろう。転移」




 アイファウストを追っていた大奥様のハルサーラが。


 「聞けぇぇ。門の向こうに来たぞぉぉ


 「お母様」


 「木こり様だぁぁ」


 マルックが窓の外を腕ごと指を差して。


 「アルッシュ行けぇぇ


 「りょぉぉかぁぁい


 「あのお母様、わたくしも」


 「お前はここに居ろ。必ず来ていただく」


 「はい」


 「リッシュ。アルミスを頼んだ」


 「お任せください」


 「マルック。行くぞ」


 「はい」




 極寒の山から東門の前五百メートル程に転移して来たアイファウスト。


 「やぁぁっぱここは温かいねぇぇ。また眠くなって来ちゃう。お腹空いたなぁぁ。ご飯食べれるかなぁぁって。何あれ?

 砂煙が向かって来るよぉぉ何々?チェルッシュさんとジムさんが先頭?どんな勢いなの?後ろに何かいるの?いないよね。クラウス曰く、やばい時は戦略的撤退。転移」


 森の縁の木の上。


 (ここなら見つからないよね。観察。ん?・・・何でこっちに来るの?えぇぇぇバレてる?なんか殺されそうぉぉ。

 あっ。第六感様が起動。捕縛?イコール断頭台?その後、部品取り?

 怖いよぉぉ一旦全然違う場所に・・さっきの巣に戻ろう。転移)


 ハルサーラが。


 「また消えた」


 「お義母上様。どっちですか?」


 「先程の場所に戻られた」


 「この距離を一瞬で?」


 「ああ。凄い転移能力だ。

 そして恐怖をお感じになられたかもしれんな」


 チェルッシュが。


 「シャイなお方でしたから。

 私を助けて下さったときもおぼろげに覚えていますが肌を見ないようにしていました。

 これだけが走って迫れば危機感を覚えたでしょうね」


 ハルサーラが追従した群衆に向かい。


 「お出迎えの作戦を練るぞ」


 「おぉぉ」


 ハルサーラが、隣を並んで歩くチェルッシュに。


 「ついに消えたな」


 「もう追えないと言う事ですか?」


 「あぁ。ただ、お元気なお姿は確認できた。ひと先ずは安心した」


 「そうですね。戻りましょう」


 いち早く東門に戻ったマルックが手を振りながら。


 「おぉぉい。お前たちぃぃ早く戻れぇぇ。門から三百メートル以上のそこはノルトハン王国の国外だぞぉぉ許可は出してないぞぉぉ」


 「ハルサーラ様。マルック隊長を殴っていいですか?」


 「チェルッシュのパンチは効くからな。今は止めておけ。一応あいつの言う通りだ」


 「はい」




 極寒のドラゴンの巣に戻ったアイファウスト。


 「あぁぁ怖かったぁぁ。こちらに戦う意思が無い戦闘だと、こんなに怖いんだ。デパ地下の奥様方のたくましさが解かった気がする。

 何だったのだろうか。しかも何故、転移の位置がバレた?

 仕方ない携帯食でも食って、調べるか。絶対クラウスは知ってたよねぇ」




 マルックの自宅に戻ったハルサーラとマルック。

 ベッドの上で窓の外を見ていたアルミスが、扉から入ってきたマルックを見て。


 「あなた木こり様は?」


 「一気に全員が駆け寄って行ったのでお逃げになった」


 「お体の方は大丈夫だったのですか?」


 「ああ。元気そうだった」


 「良かったぁ」


 マルックの後から入ってきたハルサーラが。


 「今は元の場所にいらっしゃるがヒールの効果も無くなった。

 恐らく時間的に木こり様の方のヒールが消えたのだと思う」


 「お昼過ぎですものね。リッシュ」


 「はい。奥様。

 大奥様こちらのメモを。

 シーツの交換の折。枕の下に入っておりました」


 「アルミス。木こり様からか?」


 「内容からして恐らくそうだと思います。上質な紙にボールペンです」


 「今では神話級の物だぞ」


 「はい」


 「わたくしはここに書かれているレシピで奥様のお食事を作って参ります。

 恐らく快癒のお食事ではないかと思います」


 「覚えたのか?と言うかこの文字が読めたのか?」


 「はい。少々難解な崩し文字


 「これはへたくそと


 「あぁなぁたぁぁ」


 「すみません」


 「全て解読は出来ました。問題ございません。

 大奥様とマルック様は別の物を御用意いたします」


 「頼む」「宜しく」


 「お母様。このメモ用紙に魔力は?」


 「・・・さすがに無いな。

 大森林の樹木で作られた紙以外は無理だ。

 これは普通の樹木から作られているのだろう。それでもこの白さと張りと腰。一級品だ。

 鉱石や金属などは魔力を帯びるのだがな。

 一応で椅子やテーブルも確認したが駄目だった。ドアノブには触れていらっしゃらないようだ」


 「魔力を乗せて開閉などしませんものねぇ」


 ハルサーラは椅子に腰掛けた。


 「それでお母様、まさかですが」


 「ポーション。貴族以上の転移。トロールを簡単に屠る剣技。回復魔法の最上級ヒール。そしてこの紙とボールペン。

 能力はイサム様とサチ様。クラウス殿を全て足したようなお方」


 「そう考えると、お顔立ちは物資搬送として従軍した時に見たサチ様の生き写しですよ」


 「そうだな。生まれ変わりと言っても過言では無いな。

 わたくしも、今更気付くとは」


 マルックも。


 「今十五歳だと、予想した年齢の丁度中間。

 それにですね。ポーションは従軍時にサチ妃殿下が使用していたガラス瓶の形状でした。アルミスの事で頭がいっぱいで・・聞かなかった事に」


 「完璧だな」


 「はい」


 「いいか。今はここだけの話しだ。いいな」


 「はい「はい」


 リッシュが扉の外から。


 『大奥様。ご長女ユイミナ様の婿デービッシュ様がおいでになりました』


 「ここへ通してくれ」


 「どうぞ」


 扉を入って来たデービッシュ。


 「ようやく着きましたぁぁって。アルミスさん。包帯は?目が


 「お久しぶりです。デービッシュ義兄さん。ご覧の通り目も火傷も髪も完全に治りましたよ」


 「本当に?」


 「はい。

 お母様」


 「デービッシュ。わたくしも何度も確認した。完璧に治っている」


 「よがっだぁぁ。本当によがっだぁぁ。マルックぅぅよかったなぁぁ


 そう言いながらマルックに抱き着いた。


 「ありがとうございますデービッシュ義兄さん。

 色々な所へ薬を探しに行ってくれて。お陰でこの通り。ありがとぉぉ


 「って、何の薬?完璧に治る薬なんて


 ハルサーラが。


 「追々話す」


 「判りました。ちゃんと見える?見えてる?」


 「はい。デービッシュ義兄さん。おでこのほくろが少し大きくなりました?」


 「見えてるんだなぁぁ。良かったよぉぉ。奇麗な髪も戻って。またユイミナに結ってもらう・・・そう、お義母様ユイミナには?」


 「まだだ。完治したのもつい先程でな。

 その上、目まぐるしく色々あってな。まだ、念話も出来ておらん。突飛な事の連続でな」


 「そう言えば。突飛と言えばこれ」


 「金貨か?」


 「はい。私も直ぐには気が付かなかったのですがよくよく見て気付きました。

 トウショウ王国が建国した時に数量限定で発行された記念金貨。当時一枚金貨十枚で発売されました。

 今では一枚で金貨百枚以上とも五百枚以上とも言われるほどの価値が有り、貴族でも持っている者は極少数。市場には皆無。

 カミミヤファミリー涙のバースデーの日に粉砕していますので」


 「この大きさと厚み、重さ間違いないな。表面が剣と刀と弓と槍。裏面は桜吹雪だ」


 「デービッシュ義兄さん。これをどちらでご購入を。まさか無駄遣い?だとしたらお姉様に報告案件ですね」


 「いやいや滅相もございません。これ北門で入国の仕方が解からない、少女のような男の子に聞かれた時の情報料として頂いたんです。

 勿論断りましたが、世にも珍しい物質転送で強制的に私のポケットに。

 いやぁぁ驚きましたよ。初めて


 「その少年の事。詳しく話せ」


 「はいぃぃ


 ハルサーラ。マルック。デービッシュがベッド横のテーブル席に腰かけた。

 お茶を運んで来たリッシュも留め置かれた。




 デービッシュがテーブルに置いた金貨を見つめながら。


 「そうでしたかぁ。サチ様そっくりでしたからなぁ。今言われて気付くようではまだまだです」


 「わたくし達とて同じこと。感謝も述べず我が子を抱きしめた非礼を詫びたい」


 「で、今どちらに?」


 「マルックの話しから考察するに、そのドラゴンの巣に居るのではないか。そう思っている。ヒールの効果が無くなり今は追跡不可能だ」


 「あれっ?お義母様ご存じないですか?」


 「何を」


 「この金貨。一部の者は知っているのでご存じかと思いました」


 「だから何を」


 「この金貨通信機能付きなんです。増幅装置と言えばいいでしょうか。

 この大陸の四分の一から三分の一程度はカバーできる代物です。

 Cランク以上で念話距離が百キロ以上できる魔力の持ち主でギルドカードの持ち主であれば通信可能ですよ」


 「何だとぉぉ。知らぬぞその様な使い道」


 「市場にあまり出ませんでしたからねぇ。イサム様とサチ様の技術です。

 最後に触れた者が魔力を乗せ渡した相手と直接でしたら会話が可能。勿論渡す側も金貨を持っている必要があります。

 この金貨は物質転移の魔法を掛けられたので、魔力が載っています。

 ただ、貰った相手が誰か第三者に渡った時点で通信は不可能になります」


 「わたくしが触れてしまったではないかぁぁ」


 「問題ありません。私の手元にこれば戻ります」


 「通信は可能なのか?」


 「一番確実な方法でやってみます。収納に入っていても呼び出せる方法です。余分にお持ちであることを願ってください。

 この金貨を私のギルドカードの上に乗せ。この金貨を魔力を這わせた爪でつつきます」


 「他に繋がったりは?」


 「絶対ありません。言ってみればこれと対になります。

 まだ反応がありませんねぇ」


 「マッドジョイ陛下やイフィス妃殿下も持っているだろう。

 クラウス様と繋げたりは出来なかったのか」


 「恐らくクラウス様。もしくはマッドジョイ陛下。イフィス妃殿下から双方でお渡しにはなっていないのでしょうね。念話が有りますから」


 「なるほどな。念話も切っていれば鬱陶しくもないか。

 呼び出しの方、諦めずに続けてくれ」


 「はい」

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