座学。歴史と両親
クラウスの前に転移で生還した若様は肩口とズボンの裾が裂け、ボロッボロになっていた。
剣先が曲がった剣を両手で掴んで杖にして、内股で肩を落とし、俯いた。
「お見事でした。
ブレスを吐く前に上顎から剣を斜めに貫通で剣先を折り曲げて口を閉じ、素手でタコ殴り。後は羽根を引裂き、地上へ落とす。
冒険者Cランクのセオリー通りでした。
そして地上で素材を傷付けずにめった刺し。
冒険者Fランクのお仕事を忠実にできました。
収納迄の後処理。完璧ですね」
「いきなりすぎて、まじで死ぬかと思った。
三十九体目。褒めて」
「イサム様が仰っていたサンキューで、宜しいでしょうか?」
「それは褒めてなぁぁい」
「おや。そうでしたか。もとはと言えば若様の態度が・・・褒めて差し上げるために、もう一体サーチ
「わぁぁごめんなさい。もうしませぇぇん。許じでぇぇ
「まぁ反省したと言う事で。仕方御座いませんな」
「もう飛ばさない?」
「はい」
「ありがとぉぉ。
ねぇクラウス。今までずっとこうやって討伐して来たけどさぁぁ、本当にみんなこうやって戦っているの?」
「Sランクのわたくしをお疑いになる?
仕方ありませんな。
今からドラゴンと戦っているお方達の先陣のサポートに
「ごめんなさい。心底。心底クラウス様を心の奥から全身全霊を以て致しまして信じます。
休憩がしたいです。このまま放り込まれたら死んじゃいます」
「では、小屋に戻りボロボロになった衣服を着替えて
「ほわぁぁ。ありがとぉぉ」
「お勉強の続きです」
「ぬわんでぇぇそれもぉ死んじゃうぅぅ」
「この世界の歴史を知らずに冒険者には成れません。
今日までは戦いの基礎と腕を磨く鍛錬。今日からいよいよ座学に移ります」
「この十年もいっぱい勉強して来たよね」
「今までは一般常識と貴族や王家にまつわる基礎知識です」
「まぁ貴族や王様の方は良いとして、一般常識ってクラウスから聞いたものと俺の前世やここの街で見かけるのと違うようなぁ
「さようでございますか。
では、一度全く見知らぬ土地の町をお一人で散策してみてはいかがでしょうか」
「ごめんなさい。クラウスが居ないと人が怖くて、恥ずかしくて今はまだ一人では行けません。
ボッチ好きの僕には高難易度が超高過ぎてまだ無理です。お許してくださいませです」
「それでいてお一人旅がしたいと?おいたわしや」
「だ だいぶ克服できた。と、思う。
って言うかここ三年ほどお勉強と鍛錬ばっかで町に行っていないんですがぁ?」
「賊や賊に襲われている人と会話をなさっていますよね」
「なんか違うようなぁ」
「なるほど。では確認の為に今から知らない土地へ
「ごめんなさい。僕が悪るぅぅございました」
「それと、歴史の知識が無ければこの世界の成り立ちすら解りません
「えぇぇ?それってぇ必要ぉぉ?」
「確かにお腹が膨れる要素ではございません。
しかし、歴史が有るからこそ
(うわぁぁ。長くなりそうぉぉ)
「非常によく判りました。お勉強します」
「何ですかその投げやりな口調は。
いいですか。今現状、若様ご自身の生い立ちすらお知りに無い状況なのですよ。
転生者の醍醐味と仰った冒険者を諦める?一人旅を満喫しなくてもいいと?
なるほどぉ
「ごめんなさい。是非ともお勉強します」
魔王国の大森林の西の縁の大きな川から近い小屋。
川の向こうは五、六百メートルは在る断崖絶壁。
小屋の周りは整地され畑が在るが周りに人や住居は無く、ポツンと一軒家。
ログハウスのような小屋の中でクラウスのお勉強が始まった。
テーブルに向かい合って座る二人。
「眠いでしょうから先程同様、箇条書き風に申しますよ」
「頭も痛くて、滅茶苦茶眠いんですがどうして?」
「高山病でしょうかね」
「滅茶苦茶寒かったし、空気は薄いし
「なんですと?五千メートルで空気が薄い?はぁぁおいたわしやぁ。
これはまた一からやり直しでしょうか?」
「とっても濃厚で爽やかでおいしゅうございました。ごちそうさまでした」
「たまには上空での深呼吸も良いものでしょう?」
「はい。抜群にお目目パッチリでございますよ」
「それで対処対応法をお教えいたしましたが?」
「いやいや、さっきは転移でいきなりだったよ」
「嘆かわしい。Fランクにも届かぬとは
「頑張ってお勉強します」
「では、先ほどの続きから始めます
「えっ?どこから?」
「エウゲレスタン帝国は魔王軍に対し、初めは果敢に追い詰めました。
しかし、当時の皇帝が勝利を意識し始めてから一気に斜陽化していった。
勝利を意識した皇帝一家は連日貴族を城に呼びパーティー三昧。帝国軍の指揮も衰えた。
元々独裁国家に近かった帝国は他の国より軍事国家に等しい軍事力を有し、他国の支援を拒否し続け、単一で魔王に立ち向かっていた。
元々重税に苦しむ帝国民は更に生活状況が悪化しました。
最前線の兵達も帝都での貴族や軍部上層の贅沢振りが伝わり、戦意が喪失。一気に魔王側が攻め込み帝国は窮地に晒された。
今更のように各国に救援を求める皇帝でしたが、上から目線の書状にどの国からも大した支援が受けられずにいました。
当時、大陸の貴族は魔法が使える者。これが通説でございました。
教会も魔法が使える者達の集まりで、創世の女神エルファサ様を一信教とし、信仰する者達。
ただ、エルファサ女神様が降臨してから数多の年月が流れ地位と名声と金に固執していきました。
信者たちはそんな教会に嫌気がさし、徐々に教会離れが始まり衰退していった。
教会の発言力は各国内でも非常に弱くなり、国家、民からの供物も年々減り続けていました。
大陸最大の教会建物を誇るエウゲレスタン帝都の教会。
教会の起死回生を図る大司教の指示の下、召喚術が行使されました。
数十名の召喚術師を犠牲にして召喚術は成功し、日本人の二十歳の男女のアベックが召喚されました。
若様のお父上とお母上ですね。
しかし、教会は戦いに向かない二人と判断するや否や即座に放逐。
とあるお方達に救われ、魔剣士とヒーラーに育ったお二人。
お二人は帝国の冒険者ギルドで当時最高位の冒険者のアベックを戦場から呼び戻した。
男はマッドジョイ。女はイフィス。二人共冒険者Aランク。
四人は他の冒険者と各国のごく少数の軍の混成部隊を率いて魔王討伐に向かった。
四人と混成部隊は連携を取り、連日快進撃を続け、今からおよそ二十年前。魔王を倒した。
凡そ四十年に及ぶ魔王との戦いに終止符が打たれた。
若様。起きておいでですか?」
「父さんと母さんにそんな過去があったの?すげぇ。
どれくらいでそこまで成長したのよ」
「半年にも満たないと聞いておりますよ」
「俺十年かかってもFランク以下だよ。化け物じゃん。
あぁ。女神の威光があったとか?女神も言っていたけど、俺何も貰っていないのよねぇ。
だいたいさぁ、女神も父さんも母さんもなぁぁんにも教えてくれないんだよねぇ。掟とか言って。
女神がさぁ『地上の全ての事はクラウスに任せています』だってさ」
「光栄な事でございます」
「それでよく有るのよ。転移転生時に神様やら女神様にチート能力貰って、その世界で無敵。なんてものが」
「お二人もそのような事を仰っていらっしゃいました。
こちらに来る時にどなたにも会う事無く教会の魔法陣に座っていたと仰っていらっしゃいました。
言語能力と歴史はインプットされたようですが、スキルや身体能力では一切の付与は無かったと仰っていらっしゃいました
「俺もぉぉ歴史をぉぉインプットしてぇぇ」
「わたくしにその様な能力が有るとお思いなのでしょうか?
創世の女神エルファサ様にお願いしてみてはいかがですか?
そうすればあっと言う間ですよ。
わたくしのお役目もここまで
「ごめんなさぁぁぁい。お勉強いたしまぁぁす。一人ぼっちにしないでぇぇ。お願いですぅクラウス様ぁぁ」
「一人ぼっちがお好きなのに?」
「それとこれは別ですぅぅ」
「仕方御座いませんね。
では、続けます。
お二人がこちらにいらして直ぐの時は剣も片手で持てず、盾すら持ち上がりませんでした」
「そうなのぉぉ。そっからぁぁ?教会も見放す訳だ。
ああ。でも魔法は使えたんだよね。日本の在る地球では魔法は全く使えなかった。
やっぱ何かしらの干渉が有ったんじゃないの?」
「若様はどうして魔法が使えるのでしょうか?」
「こっち産まれの生粋のここの世界の住民だから。純粋無垢原産国百パーセント」
「おっかしいですなぁ。最低でもどちらか一方がこちらの住民であれば、そのようにも思いますが若様のご両親は生粋の日本人。しかも転移者。
どうしてでしょうかぁ?」
「ごめんなさい。解りません」
「聞いておりませんでしたか?魔王を倒すここまでエルファサ女神様はこの地上に出てきておりませんよ。
イサム陛下とサチ妃殿下がエルファサ女神様に初めてお会いするのはこの後です。
魔王に対抗した能力はイサム陛下とサチ妃殿下が吐血し、血涙を流すほどの弛まぬ努力の結晶です。
そのご子息であらせられ、同じ日本から転生してきた若様がこれでは。
わたくしの教育不足なのでしょうか」
「クラウス君。それ言っちゃダメなやつ。
親や兄弟がああなのにお前はなぜ?
俺、グレちゃうよ」
「血統は事実存在します。
強いドラゴンからは強いドラゴンが産まれます。これは史実が物語っております。
勿論それは正しい努力有っての事です。
それは人とて同じ。
ましてや若様は転生者。
この世界にたったお一人の希少な存在です。能力が備わっていない訳がございません。
まぁ。わたくしもそう思って今日まで若様がお望みになる冒険者登録の為の鍛錬を指南してきた訳ですが、ここまでに
「ごめんなさい。僕が悪かったです。
これからもっと色々教えてください」
「判りました。明日からはもっと鍛錬のメニューを
「そっちは死ぬほど十分に足りています。もっと頑張りますので、お続きを下さいませ」
「判りました。
明日のメニューを
「ちっがぁぁう。父さんと母さんの続きぃぃ」
「その後、四人は勇者として帝国に凱旋したが教会本部で帝国と教会側から刺客を送られた。
事前に察知していた四人は返り討ちにし、帝国と教会の関係者を粛清し解体した
「ちょっと待ってぇぇ。何で殺されそうになっているのよぉぉ。
魔王を倒したんでしょ?世界を救ったんでしょ?おかしくねぇ?」
「まぁ平和に贅沢をするには四人の存在は無用の強者と成り下がったのでしょうね」
「ひっでぇぇ。こっちの住人ってそのなばっかなのぉ?」
「わたくしも全ての住人を知っている訳ではございません。
ただ、イサム様。サチ様。若様がいらした時代の地球の生活環境。常識。価値観。人の尊厳。倫理観などとはかけ離れている。
そう思った方が宜しいと思います。
そして貴族と強者が絶対の正義。貴族以外。強者以外の持ち物は全て貴族と強者の物」
「はぁぁぁ?」
「弱者を救済する法は存在致しますが、適用されるのはほぼ皆無。
貴族と強者が邪魔だと判断すれば虫けらのように殺されます。
そして四人は命を狙われた。
理由はどうであれ、これが事実でございます。
続けます。
四人により、エウゲレスタン帝国は無くなり、日本から召喚されたイサム・カミミヤが国王に。サチ・カミミヤが妃と御成りに成りました
「やふぅぅ。父さんと母さんすげぇぇ。でも、俺とクラウスを残して、何で殺されたのよ。
皇帝や教会のクソ野郎が残っていたとか?」
「またそのような、はしたないお言葉を。まぁわたくしもクソ野郎とは思います。
順を追ってお教えいたします」
「お願いいたします。そこはぜひ知っておかねば」
「はい。ここからが重要な部分です。
イサム・カミミヤが国王に。サチ・カミミヤが妃と御成りに成りましたこの日。
女神エルファサ様が王城。謁見の間に降臨し、戴冠式を見守り二人に祝福を与えた。
トウショウ王国と国名も変わった。
そして人選がなされ大きな混乱なく国が動き出した。
共に戦った冒険者のマッドジョイが軍の最高司令官。軍師に。マッドジョイの妻イフィスと共に王城に入った。
宰相を勇者パーティーで案内役だったザイスターが務めた」
「結婚式?戴冠式?その時の母さん奇麗だった?」
「はい。純白のドレスを纏い、色彩豊かなお花をあしらったブーケを持ち、濡れ羽色の長い黒髪にエルファサ女神様から下賜されたティアラをなさったサチ妃殿下は息を飲むほどお美しかったですよ。
エルファサ女神様が嫉妬なさるほどでしたから」
「見て見たかったなぁ。写真は無いの?」
「当時は見た事はございませんねぇ」
「そっかぁ。今でもね、女神は母さんに勝てないって言ってるんだよ」
「さようでございましたか。
エルファサ女神様もとてもお美しく、お二人がお並びになった時は周りの女性達も含め溜息が出ておりましたよ」
「エルファサ女神様 も 奇麗だよねぇ」
「お怒りを買いますぞ。
イサム陛下は凛となさって
「父さんはいいよ」
「ご存じ無いでしょうが、イサム様へのお見合い、求婚は千件を超えておりましたよ」
「えぇぇぇ?そうなのぉぉ。ああ勇者だし」
「いえいえ、勇者と呼ばれる前からですよ。
討伐軍の時にもお付き合いのお願いが殺到しておりましたよ」
「やっぱ勝てないなぁぁ。カッコいいもんなぁ。
母さんの方は?」
「それはもう言うに及ばずですよ。
イサム様が常に監視下に置いておいででしたよ」
「だろうねぇ。取られちゃうもんねぇ」
「サチ様は言い寄って来る男達に『あなたが魔王を倒したら考えてあげる』と、仰ったので一気に士気が上がって、イサム様が討伐」
「それ少し酷くない?」
「まぁそう仰らずに。それも求婚される側の権利と申しましょうか。
続けますよ。
イサム陛下とサチ妃殿下は日本の技術を駆使し、国を発展させ、国民の生活環境は一気に改善し豊かになった。
他の三国とも友好関係を築き、内外とも安定した。
ただ魔王が住んでいた城は崩壊したままで、魔王が倒された当日、一夜にして巨木が森を形成した。
魔王の統率を失った魔物達は繁殖を続け、森林内を徘徊する事になった。
討伐の管轄はギルド。森林から溢れた場合は軍が対応する事になった」
「ああ。それが今のこの森の状況なのなのねぇ。
でも、この森以外の大陸の四か国にもいっぱい居るよ」
「魔王軍の勢力の拡大時に大陸全土に渡った魔物達は独自の生態系を作り上げ、繁殖を繰り返しております。
魔王が侵攻の為にこの大陸の四隅や各所に作ったダンジョン。
そこから溢れ出る魔物もその一つ」
「なるほどねぇ。そう言うことかぁ。
でもなかなか減らないって事は繁殖力が強いの?」
「一匹見たら百匹居ると思え」
「それなんか違うぅぅ」
「そうですねぇ。ダンジョン内の繁殖率は別として、何方かが調査した訳では有りませんが、ゴブリンは半年程度でいわゆる成人。一メートル程になります。
トロール等は三から四か月で三メートル。
ドラゴンは一年で五メートルと聞き及んでおりますよ」
「滅茶苦茶早いじゃん」
「はい。ですからなかなか絶える事が有りません」
「そりゃ冒険者だけでは足りませんよねぇ。
そう言えば俺、軍の事聞いていないんですが?」
「追々です。
続けますよ。
魔物の肉はあまり食用には適さないが調理次第では食べられる状態にまでサチ妃殿下が研究を重ねた。
その料理は各国の王侯貴族達を唸らせ、おやつから高級料理にまで成り、食糧事情回復の一助と成るまでに拡大致しました。
そして冒険者の大きな収入源とトウショウ王国の主要な輸出品にまで成長した」
「あの魔物の調理、母さんが考えたの?」
「さようでございます。非常に美味しく
「それ嘘です。全くちっとも美味しくありませんよ。
何処が美味しいんですかねぇ」
「サチ妃殿下は『食の探求に余念のなかった日本の調理人に敬意を表します』と仰っておられました。
わたくしやこちらの従来からの住人は十二分に美味しいと思いますが、イサム陛下は。
『ワイルドなジビエだぜ。生ぐせぇ。食えねぇ』
と、仰ってサチ妃殿下が暫く一緒に寝てくれなかった。と、泣いておられました」
「うえぇぃ。俺の母さんに変な事しようとするからだよぉぉん」
「つまり美味しくないと仰った若様も嫌われてしまうと」
「あ”ぁぁぁお母上様ぁぁごめんなさいぃぃ。嫌わないでぇぇ」
「ご心配なさらずとも、大丈夫だと思いますよ。
それに若様が仰る『目指せ転生者の血湧き肉躍る冒険者人生。剣最高ぉぉ弓最高ぉぉこの世界最高ぉぉ』は、それで御産まれになられましたが?」
「あっ」
「続けますよ」
「もう、眠いんですが」
「本日分はもう少しです。
魔物の心臓部分に在る魔石はイサム陛下が技術開発を行い、生活に欠かせない物となった。
この技術は大陸全土でなくてならない物となり、これも大きな外貨を稼ぐ物となった。
大森林の巨木は硬く一般では手も足も出せない状態だったがイサム陛下とサチ妃殿下の共同開発で伐採が可能になり、技術開発で小物から王宮貴族御用達の調度品にまで成り上がった。
また、大森林の巨木からサチ妃殿下が上質な紙を生み出し、安価で安定供給が出来るようになった。
お二人の功績は街道整備や上下水道のインフラ整備から農地改革や漁業改革までに及び、食料自給率も大幅に改善された。
医療技術も改革し、国主導の治療院を開設。各地に建設された。
回復魔法ヒールを独占していた教会の医術士に軽い症状の病気や怪我で高額な治療費を支払わなくても治療が可能になった。
教会の上層部は怠惰な生活から一変し、平民並みの生活を強いられるようになったが女神エルファサ様の寵愛を受けているお二人に教会は従うしかなかった。
イサム陛下とサチ妃殿下の弛まぬ努力により、トウショウ王国は最小国で有りながら大陸一の経済国家となった。
・・・・・・
今日はここまでに・・・はぁぁ」
お勉強が終わった頃、若様は机に伏せ寝ていた。
「仕方ありませんな。
素直でお優しく、お可愛く育ってわたくしは大変嬉しゅうございますよ。
十年の歳月もあっという間。もうすぐお別れでございますね。楽しかった分、寂しくなります。
・・・・お風呂とお食事のご用意をいたしましょう」
(シーツをお掛け致しましょうか)