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 東門 木こりとして名を刻む

 忍者の如くの駆け足で後方の門を確認するアイファウスト。


 (見ていませんね。有視界転移)


 (この木の上から状況確認。あぁあ。お可哀そうに。お馬さん達は潰されていますね。馬車もバラバラ。

 あの岩場の隙間の前にトロールが十体かぁぁ。

 ああ、クラウスはこれが言いたかったのねぇ。


  『時間を浪費しての再現率の低い戦い方では評価点が低い。と、言う事ですよ』


 この場所では一列に並べて討伐は無理。しかも要救護者有りで時間を掛けてはいられない。

 素直に言ってくれればいいのにぃぃ。理由を聞かなかった僕が悪かったです。ごめんなさい。

 二十二人はどこにぃぃ。サーチ倍率ドン。居たぁぁでも二十一人。ケガも酷そう。死んでいる人は辛うじていないな。

 あと一人ぃぃ。あのでかい岩の向こう側の下か。こっちは瀕死だな。魔力反応が薄くなってる。

 一体は一人で倒したのか。急所を狙わないと再生が早いトロールを凄いな。こっちは二体だけか。

 先ずは十体からだな。弓で数を減らす。セイヤッ)


 アイファウストは木の枝の上に立って、文字通り矢継ぎ早に岩の隙間に向かって、こちら側に背を向けているトロールの後頭部に矢を突き立てて行った。

 矢が刺さったトロールは即死で後方や前のめりで倒れて行った。

 周りの仲間が倒れて行く事に気付いたトロールが周りを見渡し、ほぼ真後ろの木の枝の上で手を振るアイファウストに気が付いた。


 「やっふぉぉぉ。人間ですよぉぉ」

 (おぉぉ来た来た。残り三体。村の人の牽制用に生かしておくか。もうちょっとおいでぇぇ。転移)


 目の前で消えたアイファウストをその辺りでウロウロと探し始めた。


 岩の裂け目に転移で移ったアイファウスト。

 人が二人程度並んで入れる間口。中は陽の光りで幅十メートル程、奥行きも十メートル程で終わっているのが見えた。

 入り口から覗き込んで。


 「あのぉぉ。人間が来ましたよぉぉ。大丈夫ですかぁぁ」


 男が一人入り口に出て来た。


 「助かったのか?」


 「いえまだです。まだトロールがうろついているのが見えますよね。

 もう少し静かにここでお待ちください。まだ外には出ないで下さいね」


 「君は?」


 「木こりです。マルック隊長に話しを聞いて来ました。

 絶対に出てこないで下さいねぇぇ。その怪我では死にますよぉぉ」


 「あぁ判った。増援が来るのか?」


 「念話は届きますか?」


 「それが何をどうやっても届かないんだ。君の方は?」


 (あ”ぁぁぁ。受け取ってくれる人がこの世にクラウスしかいねぇぇ。メル友も居ない本当にボッチだったぁぁ)


 「木こり君?」


 「あぁはいっ。僕の方もダメなようです」


 「そうかぁ」


 「じゃぁ行ってきます」


 「何処へ?」


 「トロール退治と救助です」


 「えっ?」


 アイファウストは回れ右をして、先程の木の所にいたトロールに向かって走り出し。


 「行くよ愛幸勇。先ずは一体めぇぇセイッ


 跳躍して三メートルほどの所の首を切って落とした。


 「はい次ぃぃさいならぁぁもう一丁ぉぉこのまま岩の向こうへぇぇいたぁぁ死んで頂きます。バイバイ。はいあなたもぉぉセイッ。

 ふうぅ。終了。

 どちらに居ますかぁぁ。この岩陰のぉ奥。あぁいらっしゃいました。酷い怪我ですねぇ。女性の方ですね。服がボロボロで見えちゃいそう。

 うぅぅん。ここで完全回復するとこの方の功績が嘘のように思えますねぇぇ


 「あ あな あなたは?」


 「木こり君です。助けに来ましたよ。もうトロールはいません。シーツをお掛けしますね」


 「み みんな は?」


 「怪我はしていますが無事ですよ。あなたが一番酷いケガです」


 「わ わたしは いい もうダメ み みんなを


 「バカな事言っちゃぁダメですよ。聞きますがあのトロールはあなたが?」


 「が がんばったでしょ。こ このカードをジ ジムに渡して くれる?」


 「あなたがえぇぇっとぉぉチェルッシュさんが生き延びて自分で渡すんですよ」


 「き 木こり君は 厳しいね


 「これ飲めます?」


 「ポ ポーション?」


 「お金は気にしなくていいですよ。飲んでください」


 「す 少し起こして


 アイファウストは首の下の手を入れて、少し持ち上げた。

 そしてポーションの瓶の口を口に当ててゆっくりと傾けた。


 「お 美味しいぃ。はぁぁ


 気を失うように眠った。

 そのままお姫様抱っこをして。


 「お休みなさい。転移」




 「皆さぁぁん。もう出て来ていいですよぉぉ。チェルッシュさんも助け出しましたよぉぉ


 「ほ 本当かぁぁ木こりくぅぅん


 「はぁぁい。トロールももういませぇぇん。うわぁぁ


 冒険者風の一人の男が右足を引きずりながら駆け寄って。


 「チェルッシュ。チェルッシュ。おい返事をしろぉ返事わぁぁ


 「今応急処置で寝ています。出血も酷いので止血もしました。骨折箇所もありますが、もう命の危険は有りません。今は安静に」


 「お おう。解った。すまなかった」


 「門番さんは居ますかぁぁ」


 駆け寄った男の後ろから。


 「ああ俺だ」


 「馬は?」


 「全滅した。馬車もダメだ。不甲斐ない」


 「今は良いです。村人さんも含めこれで全員ですか?」


 「そうだ。ただ怪我人もいる」


 「症状は?」


 「軽傷から骨折迄」


 「そうですか。一つ約束をお願いできますか?」


 「何だ?」


 「今から起こる事を絶対に他言しない。破ったら。破ったらぁぁ。どうしよう


 「何だそれは」


 「先ず、チェルッシュさんはトロールを一体倒していました。嘘も隠しも無くです」


 「それは凄いな。解った信じよう」


 「他言無用をお願いしたいのは、皆さん怪我はしなかった。いいですね」


 「おう。意味は解らんが、おう」


 「では信じます。ジムさんは何方ですか?」


 「俺です。ジムです。先程は大声を出してすまなかった」


 「チェルッシュさんを抱いてください」


 「判った」


 「もう少し集まってください。足の折れているお方はそのままでいいですよ。

 収穫した物もお近くに置いてください。

 では行きます。ヒール。転移」


 特設の救護テントから東へ百メートル位の街道に転移で出て来た。

 全員がそのままの姿勢だった。


 「ここは?」


 「東門前だぁぁ。おぉぉい助けてくれぇぇ




 テントの中で待機していたアルッシュが腕ごと指を差し。


 「隊長。出て来ました」


 「あいつらか?」


 「隊長。何をボーッとしているんです。行きますよ」


 「おうっ。全員走れぇぇ」


 「りょうかぁぁい」




 テント内に収容され、ベッドに寝かされた。


 マルックがベッドで横たわる先程の門番に。


 「おい。何があった」


 「隊長。トロールです。馬が潰されました」


 「いや、それは判っている。ケガと突然現れた事だ。

 衣服や防具はボロボロだか怪我の痕跡が無い。

 チェルッシュは寝ているが」


 (間違いなく魔王討伐従軍時に受けたサチ様のヒールだった。

 そしてお声も含めてサチ様に瓜二つの黒目。髪の毛は染めているのだろうな。

 間違いなくアイファウスト・カミミヤ王子殿下。お元気で何よりです。

 その意味も含めて言わないでの約束。そうでなくても信じてはもらえないだろう。

 国から煙たがられ左遷された俺達の立場からすれば、いらぬ嫌疑をかけられる。

 他の奴も同じ気持ちだろうな)


 「どうした。大丈夫か」


 「隊長。聞かないで下さい。約束なんです。村人たちにも」


 「しかし


 「調書にも日誌にも書かないで下さい。約束なんです。俺達全員の命の恩人様との約束なんです。もしだめなら俺は門兵を辞めます」


 「隊長俺もです「俺も「俺もです隊長」


 「待て。馬の損失がある。言い訳が出来んだろう」


 「馬以外は全員無事だった。逃げて無事だった。そうしてください。お願いします」


 「「「「お願いします」」」」


 「一つだけいいか」


 「内容次第です」


 「木こりの装いか?」


 「・・・・・・・」


 テントの入り口で警戒しているアルッシュが。


 「おいあれ。トロールじゃねぇか?」


 「隊長」


 「本当だぁぁ。馬車も在るぅ。どこからぁ。はぁぁ。あれは誰が倒した」


 チェルッシュと横並びのベッドのジムが。


 「チェルッシュです」


 「判った。で、木こり君はどこにいる」


 「このテント内には?」


 「いや。見ていない。入国もしていない」


 「でしたら、居場所は判りません」


 「はぁぁ。チェルッシュ名義でトロールを回収しろぉぉ。

 その後はここでバーベキューだぁぁ。今日は暇だったから村民と共にここでバーベキューをしたぁぁ。

 無傷でトロールを倒したチェルッシュの祝いだぁぁ」


 「「「「了解」」」」




 その頃、アイファウストは自分が倒したトロールの回収と巣の残党と巣を破壊していた。

 その日は大人しく小屋に戻った。

 そして、テーブルで一人頭を抱え。


 「ふんごぉぉまぁぁたやっちまったぁぁ。

 何で人命救助ばかりに遭遇するんでしょうかねぇ。

 そりゃ盛大にやったのは僕ですよ。でもなぁぁヒールはやり過ぎじゃないの。いやいや一人一人診ている時間は無かったし。

 バレたかなぁ。バレてないかなぁ。

 取り敢えずは東門は封印。

 明日は南門に行こおっと。

 はぁぁぁ。今夜の夕食は畑で採れた薬草で牡丹鍋。白菜ニンジン、ネギが食いてぇぇ。

 塩味ばっかも飽きたぁぁ。何方か味噌持っていませんかぁぁ。お米も欲しぃぃですぅぅ。食材と調味料の種類と絶対数が極限に少ないですよぉぉ。誰かぁぁ。

 遠くの魔物の咆哮しか聞こえねぇ。

 寂しいぃぃ虚しいぃぃ。コンビニに行きてぇ」

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