アイファウスト・カミミヤ一人旅の始まり
トウショウ王国の教会とホルカイ帝国の密偵が動き出した翌日。
そんな事は露知らずのアイファウストは木こりの姿でノルトハン王国の東の国境の城壁の門に向かって歩いていた。
周りは見渡す限りの森で東門の周辺は開けていた。
そして周辺には誰一人居ない。
「うぅぅん。いい天気だねぇぇ。ローブのフードが暑いくらいだ。
さぁぁ。念願の一人旅の始まりだよぉぉ。
おっと。浮かれていてはいけませんよぉ。
『若様。身元がバレたら、部品取りに血眼で向かって来るでしょうな』
『恐らくみじん切りでしょうな』
ふんごぉぉ。やっぱこえぇぇよぉぉ。何で今思い出すかなぁぁ。帰ろっかなぁぁ。
いやいや、念願の冒険者登録と一人旅。こんなことで怯えてどうするアイファウスト。
行くぞぉぉ。おぉぉ。
あれが門だな。暇そうぉ。門番が大あくびしてらぁぁ。
さぁてぇどういった作戦で行きますかぁ。
黒目黒髪。あっ。髪の毛の色変えれたじゃぁぁん。忘れてたぁ。昨日変えとけばよかったぁぁ。
身元がバレる。
あぁぁ」
大あくびをしていた門番が。
(きのうの村人達じゃないな。何やってんだあいつ?女の子?頭抱えて座ったり立ったり。大丈夫か?)
アイファウストは髪の毛を茶色くして、門番の前に立った。
(やっぱ女の子だぁ。めっちゃかわえぇぇぇ。緊張ぉぉぉ)
(えっ?なんか言ってよぉぉ)
(なんか言えよ。こっちとら村のおばはん達以外と話すのなんか久しぶりで緊張してるんだよ。かわえぇぇし)
(なんか緊張するなぁ。どう言えばいいんだ?)
(おいおい、お前が用が有って来たんだろう。早く言えよ)
道を挟んだもう一人の門番が来て。
「お前達、見つめ合って何してんの?お見合い?」
(えぇぇ?質問違うくねぇ?)
「いや。アルッシュ。この子が何も言わねぇからさ」
「おい。なんか言え」
(何ですとぉぉ?何、その上から目線)
「えぇっとぉぉ。あのですねぇ
「前置きはいい。要件は?」
「アルッシュ。ベルガー。何やってんだお前ら」
「隊長「隊長」
「で。あんたは?」
(そこからぁぁ?)
「えぇぇっとぉぉ。旅人です?
「「「なにぃぃ」」」
(えぇぇ怖いよぉぉ何ですかぁぁ)
「今、旅人って言ったか?」
「はい。マルック隊長。間違いありません。ここへ来て初めて聞いた単語です」
「アルッシュ同様、俺もです」
「「「いやったぁぁ」」」
(えっ?何がどうなったの)
「いやぁぁ俺がここの隊長になって十年ぶりくらいか。三人目の旅人さんだ。おめでとう」
「お おめでとう?ですか?」
「あぁぁめでたい事だよ。いや凄いねぇ。これが旅人だ。よぉぉく見ておけ」
「隊長は昔、俺達が非番の時に見たんですよね」
「あぁ見たさぁ。すげだろぉぉ」
「俺尊敬しますよ「俺もです」
「「隊長すげぇぇ」」
(何これ?トリオ漫才?俺、珍しい子なの?)
「それで、旅人はここへ何しに?」
「えっ?」
「用事が有って来たんだろ?」
「あぁはい」
「なんだよぉぉ。緊張してんのか?可愛い奴だなぁぁ。女の子か?」
「男の子ですよ。声聞いて分かりません?」
「「「男ぉぉぉ。しゃべったぁぁ」」」
(えぇぇなんでぇぇぇ。今までもしゃべっていたよねぇ)
「まぁいい。守衛で茶でも飲みながら話しを聞こうか」
(えぇぇいきなり取り調べぇぇ?)
「あのっ。入国したいんですが」
「あぁ入国ね。いいよ。でもまぁ急ぐ旅でもねぇんだろ。いいじゃねぇか茶ぐらい付き合えよぉぉ」
(ナンパですかこれ?やっぱ人が怖いよぉぉクラウスぅぅあぁぁれぇぇ)
「今、茶を淹れるから、そこに座んな」
「あ ありがとうございます」
「旅人さんねぇ。いやぁ久しぶり過ぎて入国審査の方法を忘れてしまったぜ。
ほら。お茶。それ飲んで元気だしな」
(いや。元気なんですが)
「いただきます」
「珍しい言葉使うんだな。確かトウショウ王国なんかで使われていた言葉だったな。感謝して頂きます。だったか?」
「そんな感じですね。美味しぃ」
「だろ。おっさんが淹れてもうまいだろ。
それでだ。赤いネッカチーフが良くお似合いの、見た目木こりの名前は?」
「入国審査をして頂けるのなら言います」
「取り敢えず木こり君な。いいよそれで。それでぇぇ何処に仕舞ったかなぁ入国審査の方法
マルックは戸棚に目を向けて探し始めた。
(いいのぉぉ?入国審査しないつもりぃぃ?まぁいいか)
「あの。ここは三人で守っているんですか?」
「いや。通常は五人。全門番兵は十人だ。五人は今、緊急案件で出かけている。
二人は調査に向かった」
「いいんですかバラしちゃって」
「木こり君に負けやしないさ。おお在った。在った。砂埃を被ってらぁぁ。ふぅぅぅごほげふぉ。
えぇぇっとぁぁまずわぁ犯罪履歴とギルドカードの確認。もしくは住民カード。犯罪履歴が無くぅぅ全てが無ければ通行手形の発行かぁ」
「緊急案件って何ですか?国内で何か大変な事になっているんですか?」
「いや。大したことは無い。国内も取り敢えずは平穏だ。
きのうな、村人十人が冒険者五人を伴って、馬車一両と馬で窓の外のあそこの山。見えるか?もうちょい左。
森の向こうの山裾より少し上にでっかい岩があるだろう。ここから十キロ位か。
あそこに生えるキノコを採取に行ったんだ。で、普通なら当日に帰って来るんだが今日になっても誰も帰ってこない。
で、偵察に馬で五人。その後馬に回復術を掛けながら急いで二人。もう三時間に成るが音沙汰無しだ。
先ずはライオンの口で確認だな」
「念話は?」
「届くはずなんだが、問いかけにも応じない。何か有ったか岩陰か」
「念話って岩とか関係無いですよね」
「この辺り、色々有るらしくってな。ここから南の森なんかは全く通じない。
恐らく魔王国の森の様になっているような所も有るんだろうな。
これ以上出せる兵士が居ないから、まぁ念話待ち状態だ」
(ふぅぅん。岩の近くぅぅぅ?望遠。あぁぁ)
「隊長さん。大変です」
「何が?お茶が無くなった?」
「違いますよ。あの岩の所にトロールがいます」
「見えるはずねぇだろ。岩だよ岩」
「僕。木こりですよ。夜目すら効きますよ」
「本当なのか?」
「見えるだけで五体います。他に木が揺れていますのでもっと多いかも」
「何だってぇぇ」
「僕。木こりで足が早いです。行ってきますので隊長さんはここで救護体制を」
「あぁ判 った、じゃねぇ素人 行っちまった」
アルッシュが扉から覗き込んで。
「隊長ぉぉ。少年が飛び出していきましたよぉぉ。何かエッチな事でもしたんですかぁぁ?」
「するわけねぇだろぉぉ。俺は嫁のアルミス一筋だぁ。それにあいつは男だよ」
ベルガーが。
「そう言った方面の需要が多いの知ってますよぉぉ
「バカぁぁ。それよりアルッシュ。ベルガー。村人たちがトロールに襲われているらしい。
木こり君が確認に行った。取り敢えずはその報告待ちだ。
かぁちゃん達呼んで来て救護施設を設営だ」
「「マジですか?」」
「大マジらしい」
「了解「了解」




