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 意識し始めるアイミーナ姫

 「少なくとも今回の件でアイファウスト・カミミヤ王子殿下への謝罪はどうなさるおつもりですか。

 避けては通れませんよ。いいですか。

 お父様と陛下の浅慮で今回はアイファウスト・カミミヤ王子殿下を危険に晒したのですよ。

 その浅慮でイサム陛下とサチ妃殿下を殺してしまったのですよ。

 反省はなさっていないのですか?教訓を生かそうとはしないのですか?

 今回はアイファウスト王子殿下が強かったからよかったようなものの、最悪は死んでいたかもしれないのですよ。

 わたくし達は英雄家族を全員殺すところだったのですよ。分かっているのですか。

 偶然とは言え、危険に晒したのは事実ですよ。

 お強く無ければここの十一人とアイファウスト王子殿下の葬儀だったのですよ」


 「・・・」


 「そう。だったな。深く反省し、謝罪は考えよう」


 「そうしてください」


 「スイシャーナ。一つ聞いてもいい?」


 「何なりと。姫様」


 「わたくしをご覧になって何か仰っていましたか?」


 「特段何も。恐らくあのような場所で命の危険に晒されている状況。

 一命を繋ぐ速やかな治療を行う為、無心であったのではないかと」


 「医療行為中、わたくしは今のように裸になったのでしょうか?」


 「いえ。全くお体に触れてはおりません。全て鎧の上からで、鎧にすら触れられてはおりません。

 傷を完全に癒した後、鎧の損傷個所も装着したまま錬金術であっと言う間に修復されました。

 姫様のお肌を晒していてはいけないと仰いましたよ」


 「凄いお方なのですね」


 「はい。この目で見ましたが今だ夢では無かったのかと思う程です。

 わたくし達全員にまで回復魔法を施していただき、全回復状態です。疲れすら感じません。

 今ここに部下と共に何事も無かったかのように立っている事すら信じられない程です」


 「今のわたくしで使徒様と釣り合いが取れますか?」


 「そうですねぇ。使徒様はとても十五歳と思えないような所作と言動。見識と知識をお持ちです。

 わたくし共が手こずった賊も一太刀で二人三人と倒しておられました。

 賊を討つにしても多勢に無勢。暗闇と足場の悪い地面。立ちはだかる巨木と枝葉。何時何処から襲って来るかもしれない魔物。

 そして、散らばった賊を一人一人駆逐。広範囲の検索魔法も習得されているのでしょう。

 わたくし達の逃げた馬を追いかけた賊も拠点も姫様を襲ったイノシシすら討伐なさって、砦の門へ。

 睨まれたら、逃げる事も隠れる事も無意味。

 それらを熟知し行使でき、戦略的知識と攻略の知恵が無ければ如何様な武器や能力を持っていても勝てません。

 正に一騎当千。

 もしかするとこのトウショウ王国に肩を並べる者が居ないのではないでしょうか。

 それに魔法も木の上に居た時点で風魔法か身体強化魔法。それに土魔法。蝋燭に火を灯した火魔法。どれも制御が完璧でした。

 収納も恐らくこの部屋を超える規模だと思います。

 何と言っても多人数を馬と馬車まで含め一瞬で寸分違わずこの距離を飛ぶ、転移魔法。

 それらを全て完全に扱い熟しているにも拘らず、我々に一方的に献身的に行使し、見返りの一切を求めずに去っていかれました。

 下劣ですが、悪の道の方がうん百倍もの金が稼げるとわたくしは思います。

 しかし、姫様やわたくし共の体に指一本触れず、治療の際もわたくしに立ち合いを求めました。何一つ奪われていません。

 むしろここまでして頂いた上に姫様のお体を気遣いポーション。我々には過分な特別な剣まで下賜して頂きました。

 このようなお方を表現する語彙力をわたくしは備えていません。俗物的な言い方をすれば。凄いお方。素敵なお方。お優しいお方。そして使徒様だからです。

 釣り合うかどうかは姫様のご判断に委ねます」


 「あのぉぉ容姿は?」


 「とても良いお顔立ちで。わたくしも初見は女の子?と。賊達もそう思っていたようです。声からして女の子です。

 化粧をして衣装を変えたら可愛い女性にも見えます。お母上のサチ妃殿下の血を色濃く受け継がれたのでしょう。

 すらりとして背の高さは同い年の平均位の百五十五センチ程度。わたくしより少し低い程度。女性冒険者や女性兵士は案外背が高いですから


 「わたくしが抱きしめたら胸にお顔が埋まりますよ。

 滅茶苦茶お可愛くって抱きしめたかったぁぁ


 「サーラ」


 「すみません」


 「もの凄い剣術の持ち主ですが筋肉の着き方は並みの少年。筋肉隆々とは程遠いです。

 足も長く、歩き方も背筋が伸び、さっそうとお歩きでした。

 町を歩けば振り返らない女性はいないでしょう」


 「これから成長なさるに従い、大人の平均値を超える百七十五から百八十センチには御成りに成ると思います。

 姫様がお気に召さなければわたくしが頂いて帰りますよ。

 使徒様を除いても自慢できる彼氏です」


 「サーラ」


 「失礼いたしましたぁぁ」


 公爵が。


 「ジーナ医術長の見解は?」


 「スイシャーナ親衛隊長と同じです。

 脅迫された。と、申しましたが、口調は終始お願いです。

 ちなみにわたくし自身にも指一本触れずに拘束されていました。

 簡潔にアイミーナ王女殿下の状況をご説明なさって、そして無理強いではなく、あくまでもわたくしの意思による行動までお待ちでした。

 サチ妃殿下がよく仰っていた紳士。正にそれです」


 「母上ぇ。そのようなお方がわたくしを気に入って下さるのでしょうか?」


 「お気に召していただけるよう。横に立って恥ずかしくないようにもっと色々お勉強しましょう」


 「はい」


 「兵の二人。今の話し。墓まで持って行け」


 「「はっ」」


 「で、マッドジョイ。お主の褒美は?」


 「それは後程」


 「判った」


 「義父上。お願いがございます」


 「転移魔方陣で西の国境砦か?」


 「騎士隊も同行願えますか?」


 「判った」


 「ここはわたくし達と近衛兵に守らせます」


 「いいぞ」


 「スイシャーナ騎士隊長。明日は休暇を取り。その後こちらへ」


 「休暇を除いて、三日から四日ほどかかりますが」


 「神剣も馬も必要であろう。剣の魔力の調整に丁度いい」


 「はっ」


 「疲れて帰って来ては本末転倒だぞ。遅れても咎めはせん。その間のアイミーナはこちらで警備する」


 「心得ました。ですが、姫様のポーションの処方はいかがいたしましょうか?」


 「そうだったな」


 「わしがこちらに毎朝往復しようではないか。

 それがわしが出来るアイミーナへの謝罪じゃな」


 「畏まりました。それでお願いいたします」


 「お父様。対策をお願いいたします」


 「あぁ判っておる。

 皆に言っておく。教会と帝国のスパイがうろうろしておるからな。

 女神様の鉄槌をも恐れぬ私利私欲に溺れた輩だ。

 何が何でも使徒様であるアイファウスト王子殿下を手中に収め、女神様のお力を利用したいであろう。

 アイファウスト王子殿下をおびき出すために、場合によってはアイミーナが人質として攫われるやもしれぬ。

 もしそうなれば皆が知るようにカミミヤファミリーの日の再来である。

 それを許した我々も同罪で有ろう。あの日、女神様が宣言されたように、この大陸全土が消滅するやもしれぬ。

 向こうでわしがこの件に関し、箝口令を敷いておく。ここの者達も先ほど言った通り他言無用だぞ」


 「はい」


 「今夜の王宮への入退場を今を以って禁止とする。既に先を越されておるがな。

 これよりマッドジョイ陛下発行のエルファサ女神様の誓約書に署名した者のみ、王宮勤めとする。

 過去に署名し、裏切って行方不明になっておるのは皆の知るところ。

 この件に限り、マッドジョイ陛下とわし公爵が厳命する。良いな」


 「はい」


 「これでいいか陛下」


 「はい。公爵」

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