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 アイミーナ姫暗殺疑惑

 マッドジョイは翻訳の方のメモを改めて見て読み上げた兵士に。


 「ここにもないが、治療費の請求は?」


 「手元に有る書簡にはありません。

 おいっ。西の砦の方は?」


 「聞いておりません。ポーションの木箱にも有りませんねぇ」


 「ジーナ医術長。如何ほどの価値が有ると思う。準備はしておかねばならんであろう」


 「そうですねぇぇ。

 瀕死の状態のヒールですからそれだけでも金貨で五百枚以上。

 騎士隊が受けたヒールで金貨三百枚以上。それが十名。

 錬金での鎧の修復でまぁ金貨十枚。

 ポーションは値の付けようが無いとの事。

 後、西の森からここまで馬車と重症患者を含む十一人を転移」


 「見当も付かんか」


 「はい」


 「あなた。後ほど考えましょう」


 「そうだな」


 「お父様」


 「カイトーリズの鑑定結果で決定だな。お優しく健やかに成長されているようだな」


 「仇の娘を思い。騎士隊をも思いやる。出来る事ではございません」


 「そうだな。マッドジョイ陛下として騎士隊の処遇は?

 まぁわしとしては可愛い孫娘に傷を負わせたことは気に入らぬが、アイファウスト殿下が仰るのであれば苦戦したのも然りであろう。

 正に怪我の功名と言う言葉もある。どうだ?」


 「あなた待って」


 「あっああ」


 「お父様っ」


 「おっ。おう」


 「気に入らぬとは何ですか。

 いくらお忍びと言えども、たった十人の親衛隊では少ない。危険です。と、申し上げたはずです。

 スイシャーナ隊長も意見具申をしておりました。

 しかし、あくまでもお忍びだ。

 そのくせ王家の紋章が着いた馬車で行かせた。襲ってくれと言っているようなものですとも具申しておりました。

 それをスイシャーナ隊長達の罪にするとはどういう了見ですかっ。

 アイファウスト王子殿下に救って頂けたから良かったようなものの、でなければ今頃は売られていたか手籠めにされていたのですよ。もしくは葬儀の準備ですよ。解っているのですか?

 アイミーナを危険に晒したのはお父様とマッドジョイ。あなた達です。違いますかっ。

 いつまでふんぞり返っているのです。

 親衛騎士隊に感謝の意を述べる所ですよ」


 「しかしだなぁそれが仕事


 「聞いていなかったのですか。仕事と切り捨てないで下さいと。

 アイファウスト王子殿下のお言葉にも反感を抱く・・・まさか。わざと護衛を手薄にしてアイミーナを殺すおつもりだった」


 「バカを申すなぁぁ


 「いいえバカではありません。あの頑なまでの


 「違うと言っておろうがぁぁ


 「暁の暗闇もご存じだった」


 「ギルドの手配書を見ただけだぁ。断じて通じてはおらぁぁん」


 「もしくはアイミーナを危険に晒し、アイファウスト王子殿下を誘い出す計画を


 「その様な事を考える訳も無かろうがぁ」


 「ですがピンポイントの襲撃ですよ。お父様」


 「違う。全く違う。そのような事はどちらも思ってもいない。浅慮だった。全く以って浅慮であった」


 「お爺様ぁ」


 「アイミーナ。わしは決してそのような事は考えていない


 「わたくしの事など深く考えて頂けなかった。と」


 「違う。本当に違うのだ。事態が想定できなかった」


 「スイシャーナが進言していても」


 「本当に考えが及ばなかった。本当にそれだけなのだ」


 「ベテランと言われる域にいらっしゃる、冒険者なのに?」


 「言い訳になるが、ずいぶん討伐には出ていない。更新用の簡単な依頼だけだ。

 故に感覚が鈍っていた。

 その上で出しゃばって作戦に口出ししてしまった」


 イフィスが。


 「スイシャーナ」


 「はい。例え公爵閣下であったとしても、作戦立案及び計画の失敗。アイミーナ王女殿下を危険に晒した罪。暗殺画策の嫌疑。

 わたくし達共々、アイミーナ王女殿下の殺人未遂となれば処刑ですよ」


 「本当に違うのだよ。

 賊とも通じてはおらぬ。簡単な調査道中。十人も居れば良いと


 イフィスが鬼の形相になって。


 「はぁぁ?簡単?

 スイシャーナ親衛騎士隊。抜剣」


 「はっ。抜剣。構え」


 「「「「「はっ」」」」」


 「そこの近衛二人はアイミーナの前で抜剣」


 「「はっ」」


 「スイシャーナ親衛騎士隊。捕縛。逆らえば処刑も


 「待ってくれぇぇ。アイミーナの命を狙う訳なかろうがぁぁ。本当に浅慮からの計画の策定ミスなのだぁ」


 「お父様。それでも謝罪の言葉は出てこないと。

 計画の失敗にご立腹


 「いったいどう言ったら信用してくれるのだ。

 さすがのわしとて可愛い孫の命とアイファウスト王子殿下を引き替えようとは思ってはおらぬ」


 「そうであったとしても、浅慮で招いたカミミヤファミリー涙のバースデーを十年経っても反省しないお父様とマッドジョイには、もう付いて行けません。

 涼しい顔をしていますがあなたも同罪ですよ。まさか結託していた」


 「「していなぁぁい」」


 「何故その様な他人行儀の顔が出来るのですかぁぁ」


 「アイファウスト王子殿下とスイシャーナ親衛騎士隊の苦労に思いを巡らせていただけだ。

 涼しい顔をしているつもりは無い」


 「そうであったとしてもあの杜撰な計画。

 もうこのままここに居たら殺されます。勘違いで首をはねられます。わたくしはアイミーナと、お暇させて頂きます。

 誰も居ない実家で二人で


 ドルトメスがイフィスの言葉を遮って。


 「まぁ待て。私の言葉選びが悪かった。

 処罰する気は毛頭無い。

 言葉に出していなかったが、感謝している。

 改めて言おう。

 スイシャーナ親衛騎士隊長。そして親衛騎士隊の皆。

 私の采配に落ち度が有った。危険に晒し申し訳ない。

 そして、私の作戦ミスを補い、アイミーナを救ってくれた事に感謝したい。ありがとう」


 公爵は気を付けの姿勢になり、深々と頭を下げた。

 だがイフィスは。


 「欺瞞ではございませんよね」


 「違う。これ以上、どう証明すれば良いのかわしには解らん。ああ。待て」


 帯剣を外し、後方に置き、土下座をした。


 「アイミーナ。スイシャーナ親衛騎士隊。

 本当に申し訳なかった。そして、ありがとう」


 「イフィス妃殿下」


 「全員剣を収め、スイシャーナ親衛騎士隊は感謝を受け取りなさい」


 「剣収め。

 皆、気を付けぇぇ。

 ドルトメス・イズ・ジョウザン公爵閣下に敬礼。

 恐悦至極にございます」


 「ありがとう」


 「あなたは?」


 マッドジョイはスイシャーナ親衛騎士隊に向かい、片膝を付いて傅き。


 「使徒様からお褒めと労いのお言葉を賜り、褒美に下賜された神の剣。神剣を持つ者達を処罰できる訳が無い。

 そのメモに有った通り、アイファウスト王子殿下は私達が処罰することを恐れてスイシャーナ親衛隊長にしかガラスの栓が開けられないようにしたのであろう。

 一人でも欠けたらアイミーナの完治はしないのだろう。

 恐らく処罰した時点で何らかの災いが起きる術式が込められていると私は思う。

 だからと言ってそれを恐れて許す訳では無い事は解かって欲しい。

 私の浅慮で起きてしまった今回の失態を命懸けで回避してくれた親衛騎士隊には心の底から本当に感謝している。

 申し訳なかった。そしてありがとう。

 これからもアイミーナの護衛として務めてくれるかスイシャーナ親衛騎士隊長」


 「もったいなきお言葉。既にわたくし達はエルファサ女神様の誓約書に名を記した者達。

 身命を賭して。そして使徒様のご期待に沿うよう。また健やかなアイミーナ王女殿下が使徒様に嫁げるよう。

 引き続き、アイミーナ王女殿下をお守りいたします」


 「よろしく頼む」


 「はっ」


 「お願いね。スイシャーナ」


 「お任せください。姫様」


 「それとあなたとお父様」


 「はい」「おう」


 「そのままでお聞きください」


 「「判った」」

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