宿屋。ヒツジが百匹亭で確認の確認
マルコの方はメルーナに本を渡して、一緒に暫く勉強した後、宿屋へ案内してもらった。
メルーナが。
「ここがヒツジが百匹亭だよ」
「ここが無くなるのは勿体ないですねぇ」
バッシュが。
「だろう。いったい辺境伯様は何を考えているのか。お貴族様のお考えは訳分かんねぇよ」
リルファンは。
「半年ほど前まではそれなりにお客様が来ていらしたのですが、突然のようにお客様は激減。
本当に顔見知りがぽつぽつといらっしゃる程度に。
何も悪い噂は聞かないのですが」
「半年前に突然お客様の足が遠のいた理由が解らないと?」
「はい。たまに相談には乗っているのですが、心当たりは全く無いと。
何れにしても後一か月ですが」
「強いお兄さんで判る?」
「強いと経営は違うよメルーナちゃん」
「強い力でお客様を引き連れてくる」
「怖いことを言ってはいけませんよ」
「あは。
レラウエアーお姉ちゃぁぁぁん」
メルーナの呼びかけに扉が開いて中から若い女性が出て来た。
「いらっしゃぁぁい?
リルファンさん?」
「レラウエアーお姉ちゃん。お客さん連れて来たよ」
「えっ?メルーナちゃんお客さんなの?」
「うん。こちらマルコお兄さん。とっても強い冒険者さんなんだよ」
「マルコと申します。今日、お部屋は空いていますか?」
「商売上こんな事を言っては何ですが、先週からこの先ずっと空いていますよ。お待ちください。
奥様ぁ。お客様です」
「あらぁぁ。嬉しいわぁぁ。お客様なんて久しぶり。
あなたぁぁ。食材はぁぁ」
「へいへい。いらっしゃい。前金で大銅貨三枚頂いてから買いに来ますんで」
「はい。リルファンさんにそう聞いています。
それでリルファンさん。一緒に泊まって頂けませんか?色々ご相談が有るのですよ」
「えぇぇ?」
「問題ありでしょうか?」
「独り身ですから問題はりませんが、お宿代がありませんよ」
「僕がお勉強をしたいんです。勿論、僕が払いますよ」
「では、お言葉に甘えます」
「で、バッシュさんも。勿論、メルーナちゃんもね」
「いいのかよぉ」
「お兄さん。一緒に寝よ」
「それはダメぇ。捕まっちゃうよぉ」
「あはっ」
「で、メルーナちゃん。お兄さんはいくら払えばいいのかな?」
「えぇぇっと。一人が大銅貨三枚で四人分。大銅貨十二枚です」
「凄いですよ」
「やったぁぁ」
「はい。大銅貨十二枚です。
食材の仕入れ先は有るのですか?」
「あんまし気に喰わねぇが、俺達が購入できるのはそこしか無い所がな」
「半年前。わたくしをここに紹介してくれた時の
「いいんだよ。お前が気にする事じゃねぇ」
「いいのよ。今更よ」
「ごめんなさい」
(あちゃぁぁビンゴでしょぉぉこれぇぇ。ヒスイスさんだよねぇ。
こんな可愛い奇麗なお方が居てお客さんが来ない訳ないでしょう。
しかも、立ち姿勢が貴族そのもの。無理して庶民に合わせているのが見え見えですよ。それがまたいい。正に看板娘。
半年前からお客さん激減の理由が判っちゃいましたねぇ。
でも確認の確認は必要。
妖精ちゃん。お願い)
「それで、僕も冒険者でいつもは一人ぼっち。
今夜は賑やかに食事をしたいのでお三人の分も出しちゃいます。ああ、他にご家族か従業員さんは?」
「店主の俺がゴートス」
「妻のわたくしがキャトル。夫婦二人にこの子。レラウエアー。住み込みの賄い」
「三人だ」
「はい。大銅貨二十枚。美味しい物をいっぱいお願いいたします」
「あれ?計算が合わないよお兄さん。三人が追加でぇ・・大銅貨が九枚でしょ。本当は二十一枚。
でも、先に十二枚を支払っているからお兄さんの支払いの合計が三十二枚になっちゃう。
それにレラウエアーお姉ちゃん達のお泊り料金は関係無いよ。お兄さん。多いよ」
「メルーナちゃんそこまで考えられるの凄いね」
「えへへへへ」
「メルーナの言う通り、多過ぎますよ」
「キャトルさん。豪勢に」
「判りました」
「おうっ。任せろやぁ。お嬢ちゃん?」
「お兄さんよ。あなた」
「こりゃ失礼いたしやしたぁぁ。行ってくるぅぅ」
「バッシュさん。護衛をお願いします
「いやいや、俺Cランク
「僕の名前を出してもいいですよ」
「もう、その界隈では有名人だからな。漏らすなって言ったのに」
「燃えました」
「あんぎゃぁぁ。行ってくるぅぅ」
「さぁぁ中へどうぞ」
「メルーナちゃん。入ろ」
「お兄ちゃんが行っちゃったよ。いいの?」
「お兄さんが嫌い?」
「行くぅぅ」
「キャトルさん。お風呂に入りたいです」
「今用意するねぇ」
「はい」
ゴートスとバッシュが向かったカルクスッタ商会の食品販売の店。
「バッシュ様。お待ちしておりましたよ」
「えっ?何でマスミカットさんがここに?」
「普通に考えればいらっしゃるのは当然のこと。
粗相が在ってはいけませんからね」
「でも何で執事服にエプロンなの?妙に似合っているけど」
「ありがとうございます。お手伝いをするからですよ」
「バッシュの知り合い?」
「初めまして。とあるお方の執事を務めております、マスミカットと申します。
今はここの店員でございます。
何なりとお申し付けください」
「頭取のカルックスは?」
「今は別のお店に居りますのでご安心を」
「助かったぁぁ。あいつ嫌いなんだよねぇ。
だが、ティッセル姉ちゃんは?あいつが居ねぇとうちの食材が集まらねぇ」
「今参ります」
「お待たせぇぇ。いらっしゃぁぁい。お久ぁぁ。今日は何人分?」
「十人分頼む」
「集団の旅人さんか商隊でも来たの?」
「まぁな。客の素性は明かせねぇ」
「判ってるよ。じゃぁ取り揃えてくるねぇ」
「頼んだぁ」
「ゴートス。七人分だろう」
「みんなで食うときゃぁ沢山食えるのよ。
マルコ君も豪勢にって言ってただろう。華奢な見た目だが沢山食べそうだ。おめぇも食うだろう。足らなきゃ恥だろうが」
「なるほどね」
「マルコ様は皆様を?」
「まぁ宿屋の主の俺達までな」
「そうでしたか。楽しいお食事会になりますよ」
「なぁあんた。マルコ君を知っているのか?」
「はい。よぉぉく存じておりますよ。それ以上はあなた様と同じで秘密です」
「なるほどね」




