パナイジーの掃きだめ地区
パン配りを終えたマルコはバッシュ達とテーブルの周りに腰掛け、地区の女長リルファンを交えて金貨百枚の経緯までを話した。
その後、リルファンから経緯を聞いて。
「なるほどですよ。
つまりですよ。後一か月もすればこの地区は更地になり、あなた方の居場所が無くなると」
「端的に言えばそうなります。
昨日、辺境伯の使者がわたくしの元にそう伝えに来ました」
「代替えの候補地などは?」
「聞いていません」
「でも、町からは出られないのでしょう」
「はい。一体何をしたいのか」
(もしかして上下弦の月作戦の準備か?そしてバッシュさんの言っていたCランク以下は傭兵扱いか。
なるほどなるほど。妖精ちゃん達はまだ待っててね。魔力は食べていいよ)
「マルコ様?」
「少し考え事をしていました。ごめんなさい。
それで、ここと似たような場所は他には無いのですか?」
「パナイジーの町の掃きだめはここのみ
「ちょっと待ってください。今何と仰いましたか?」
「掃きだめの事でしょうか?」
「どうしてその様な呼び方を?」
「どうしてと申されましても、辺境伯がここをそう呼び、それが一般化した。その認識です」
(辺境伯ぶっ潰ぅぅぅす。覚えていなさいよぉぉ。謝ろうが何をしようがもう許しませんよぉぉ。父さんと母さんを侮辱したその罪を。
あんな輩を仕向けて来た奴です。どうせ碌な奴じゃありません)
「どうされました?怒っていらっしゃる?」
「えぇまぁ。それで他には?」
「辺境伯の領地にはこの町程の場所があと二か所。中堅が五か所あります。
この三年ほど前は二か所の方にも有りました。今はどうか判りません」
(他でも言っとるんかい。もう頭っまきたぁぁ。やる。徹底的にやってやるですぅぅ)
「リルファンさん。もし宜しければ僕も協力させてもらってもいいですか?」
「他の住処を探す事ですか?」
「そうです」
「それは辺境伯に盾突く事になりますが?」
「大丈夫です。伊達にAランクではありませんよ」
「はぁ。ですが報酬などを払える立場には御座いませんよ」
「さっきの金貨百枚で」
「バッシュさん。それはメルーナちゃんへの謝罪金です。
大きくなったら渡してあげて下さい」
「判った」
「で、報酬は追々考えましょう。
メルーナちゃん。後は何をするのかな?」
「リルファンさんの所でお勉強だよ」
「へぇぇ。何のお勉強なの」
「読み書き計算。あとぉ歴史」
「歴史も必要なの?」
「とぉぉっても大切だよ。
お兄さんのお仕事は冒険者。
ゴブリンやドラゴン。その他いっぱいの魔物。
お兄さんが一人でぜぇぇんぶ調べたの?」
「ギルドに行けば本が有りますよ。
それに先輩の冒険者から聞いたりしますよね」
「魔物の種類もぉこの大陸の成り立ちもぉ食べ物の種類もぉ毒の在る無しもぉ美味しい果物もぉ初代の王様もぉお貴族様もぉ商人さん達の事もぉ。
そしてぇエルファサ女神様もぉイサム陛下とサチ妃殿下もぉ魔王もぉぉみぃぃぃんな歴史だよ。
私達がこうして食べられるのもみぃぃんな昔の人が見付けてくれたから。
だから歴史はとっても大事なんだよ」
「そうでしたね。お兄さんはダメダメでしたね。
一生懸命に歴史も勉強しないといけませんね」
「そだよ」
(クラウス様ぁぁ。ごめんなさぁぁい。そして、ありがとうございましたぁぁ)
「リルファンさん。ここにメルーナちゃんみたいな子は?」
「メルーナが最後まで残っているだけです。
他にも男の子が多数いたのですが家族で奴隷に」
(あぁぁここでも男の子が好きなのですかぁ)
「男の子がですか?」
「農家の男の子は成人すると大体が家を出てしまいます。
冒険者や商家などに行ってしまうんです。
そうなると男手が無くなって、こう言ったところで奴隷を確保するんです。安上りですから。
まともな農家だと人身売買と疑われたくないので、女の子は残って行くんです。犯罪だと思われたくないですからね」
「男の子も売られると聞いた事が有りますよ」
「ですから家族ごと」
「なるほどぉぉ。親が居ないと疑われる可能性も有る」
「はい。ですから犯罪組織に狙われない限りは親が居ない女の子や子供だけは残って行きますね。バッシュの所もそんな感じですよ」
(女の子がいっぱい残っている事が解かりましたぁぁ。カスミナさんやセルファンさん。メルスちゃんもそう言った類なんだ。
陛下やエウマイアーギルド長が無理無理押し付けてくるのは犯罪組織に狙わる前に・・・まさかメルーナちゃんの・・・まさかねぇ)
「それで兄のバッシュ共々救済の方法はないのでしょうか」
(やばいやばい、これ以上幼い子を奴隷にしたらロリコン認定でジャックレイ署長様が手枷持って走って来るぅぅ。
ここは何としても回避せねば)
「マルコ様?」
「少々考えますね。で、メルーナちゃんのお勉強は今どれ位なんですか?」
「読み書きはもう普通にできます。法律なんかも少し。今はことわざや言い回しなど。
計算はお店番程度ならできますよ。
さらに踏み込んで帳簿に移ろうかと思っていますが良い参考書が無くって。いえ、買えなくって」
「この町には在るのですか?」
「はい。本屋が数軒あります。ただ、わたくし共では高嶺の花です」
「そうなんですかぁ。そこも考えますね。
メルーナちゃん頑張ってお勉強してね」
「お兄さんはもう行っちゃうの?」
「違うよ。今からバッシュさんに町を案内してもらうの」
「良かったぁぁ。今日は泊まるの?」
「そうだね。何処かにいい宿は無いかなぁ」
「この近くにあるよぉぉ。ゆっくり眠れるお宿。【ヒツジが百匹亭】」
「本当は眠れないんじゃないの?」
「あはっ」
「わたくしからご説明を。時折、常連の旅人や商隊が立ち寄る程度で、もうそこもあと一か月で終わります。
もし、よければそちらを使ってやってください。
少々お高いですが、朝晩食事付きで一人大銅貨三枚です。
先払いで、そのお金を持って食材を買いに行きます」
(ポートハウスと同じ金額ですが価値観が違うのかな?)
「バッシュさんは勿論ご存じで」
「ああ。勿論だ。妹の旦那が泊ってくれるからな。だからよ、店主とは友達みてぇなもんだ」
「じゃぁそこにします」
「お兄さん」
「何ですかメルーナちゃん」
「今日の御夕飯。一緒に食べよ」
「それはメルーナちゃんのお家で?」
「うん。パンしかないけどいい?」
「じゃぁ一緒に食べようか」
「やったぁぁ」
「いいのかよ。さっきのパンしかないぜ。それに宿の夕飯もあるぜ」
「いいのいいの。じゃぁ行きましょうか」
「何処から行く」
「ギルド」
「判った」
「メルーナちゃん。お勉強頑張ってぇぇ」
「はぁぁい。行ってらっしゃぁぁい」
「ここがギルドだ。俺は外で待ってる」
(え”ぇぇ一人で入るのぉぉ?怖いじゃないですかぁぁ)
「一緒に来てくださいよ。仕事を受ける訳じゃ無いんですから」
「そうだな。行くか」
(よがっだぁぁ。感謝。合掌)
「何やってんの。それ?」
「入りましょう」
「おっ。おう」




