始まった木こりの一人旅で両親の足跡
(なんつうぅ怪しい路地裏。屋根伝いについて来ていますね)
「ここが俺の家だ。さぁ入った入った。扉は閉めてくれ」
「はぁぁいって、うわぁぁ整理整頓がぁぁ」
「うるっ
「動くと首に剣が刺さりますよ。僕、Bランクでレベル888。今朝ドラゴンを単独で二体狩っています。
お兄さんはCランクの531。勝てませんよ。ギルドカードです」
「うっ。本物だ」
「はい。それで目的は?」
「金が欲しかった」
「Cランクなら十分食っていけるでしょう」
「パナイジーの町でCランクはゴミ扱いだ。
ギルドに行っても仕事の斡旋は無い。この辺りの魔物は狩りつくされて、Cランクでは対応できねぇ」
「他の町に行けば?もしくは他国へ」
「パナイジーで登録した冒険者はBランク以上にならねぇと、この町から出られねぇ」
「よく意味が解りませんが?」
「簡単な話しさ。戦争や魔物の大発生時の前衛盾役の為に生かさず殺さずだ」
「お金は?」
「辺境伯様が冒険者以外の商売屋や人工から供託金と言う名目で集金して俺達に配っている。月に銀貨五枚程度だ」
(五万円程か。苦しいだろうね)
「そんなに儲かるほど旅人や冒険者が訪れると?」
「いいや。この辺りまでは来ない。どうやって工面しているかまでは知らねぇな。
なぁもう許してくれねぇか」
「僕が強く無ければその言葉出ませんでしたよね」
「その通りだ
「お兄ちゃん」
「妹さんですか?」
「ああ」
「あの。お姉さんはお兄ちゃんを殺しちゃうんですか?」
「悪い事していたから。こうでもしないと僕が殺されていたんですよ」
「僕?お兄ちゃん人殺ししていないよ」
「僕からお金を奪おうとしていたよ」
「これを買って欲しかっただけだよ。木のカップに入った奇麗なお水」
「えっ?でも金が欲しかったって」
「私が魔法で作ったお水。美味しいよ。銅貨一枚でいいよ」
(百円?)
「えっ?えぇぇぇ」
「そのナイフ仕舞ってもらっていいか?」
「早とちりでした。ごめんなさい」
「いやいい。俺の説明も悪かった」
「ええ。いい事。何ていうから変な方に勘ぐりましたよ」
「いい事以外表現のしようが無いんだよ。
お前も喉が渇いてるって言ってたし」
「一杯下さい。銅貨一枚」
「はいどうぞ」
「冷たくて美味しい。氷の魔法も使えるの?」
「まだ凍らせることは出来ないの。でも、冷たくて美味しいでしょ」
「湯冷ましと比べ物にならないよ。御代わりを貰ってもいいかな。はい、銅貨一枚」
「うん。コップをテーブルに置いて」
「これでいい?」
「うん。はい、どうぞ」
「無詠唱?」
「そだよ」
「やっぱり冷たくて美味しい。ごちそうさまでした」
「ごち?」
「美味しかった。ありがとうって言ってるんだよ」
「そうなのぉどういたしまして」
「トウショウ王国か」
「まぁそうしておきましょう」
「それでね。お姉さん。私とパン焼くの手伝って欲しいの。町の貧しい人に配るの」
「えっ?お金が無いって。小麦とかは何処から?」
「もう一人妹が居てよ。農家に嫁いだ。そこからの仕送りだ。
結婚すればこの町から出られる。
たまたま偶然、農家の長男の目に留まってよ。いい縁談だった。
この町から出られねぇ俺達兄妹の為に旦那の方が届けてくるんだ」
「ご両親は?」
「大森林の木工細工でよ。十年前に教会の手の者に殺された。
で、俺と妹二人が残った」
「そうだったんですかぁ。
誰から教わったんですか?」
「イサム陛下とサチ妃殿下から直接教わったらしい。
親父とおふくろは冒険者でな。魔王討伐に夫婦で従軍してた。給金が良いからって。
その間は当時生きてた爺さんが面倒見てくれた。それにここの連中も。
帰還して、イサム陛下とサチ妃殿下が親父達に目を掛けてくれてな。大森林の木工細工を伝授してくれた。
その時に俺達の面倒を見てくれていたここの連中にも伝授してくれた。
すっごい売れ行きでよ。俺も手伝っていたぜ。
そう言えば知ってるか?
大森林の木工細工なんかを伝授された者らの利益の一割をイサム陛下に支払うって」
「いえ。初めて聞きました」
「おふくろが言ってた。
契約でその一割を支払う条件を理解できた者だけが伝授されるって」
「そうだったんですかぁ」
「ああ。で、その一割でイサム陛下とサチ妃殿下は魔王戦で戦死した者達の残された家族や子供らに見舞金として支払っていたんだぜ。すげぇだろう。
国や貴族でもしていないんだぞ。
この町からも数人が行って戦死している。
そこに感謝をしに来た時に親父達を見付けて、教えてもらったらしい」
「そうですかぁ凄いですね」
「あそこにその時貰った【功労者の盾】と、言うものが在る」
「はい。お兄ちゃん」
「ああ。ありがとう。
この盾には魔王戦に参戦した証明と功績を挙げた内容。イサム陛下とサチ妃殿下の感謝の言葉が綴られているらしい。
俺もガキだったからよ、意味も解らず逆らって聞いちゃいなかった。
今じゃ聞いておけば良かったと後悔している。この文字が読めねぇの。
お前、トウショウ王国から来たんなら読めねぇ?」
(ああ。日本語で書いたのね。そう言えば作戦暗号で一部日本語使ってたってクラウスが言ってたね。って、事は幹部クラスだったのかな)
「これ大森林の木ですよね」
「ああ。そうらしい」
「全部読めますよ。
確認ですがお父様はワスクワットさん。お母様はヨマッシュさんでいいですか?」
「そうだ。そこに書いてあるのか?」
(何で名前をカタカナで書いたんだろう)
「はい。書いてあります。読みますね。
【魔王討伐。功労者の盾。
功労の戦果内容。
魔王軍南東最前線防衛砦攻略への感謝。
ワスクワット殿。ヨマッシュ殿。
お二人は表題の攻略作戦で陣頭指揮を執り、砦の門の破壊に成功。
その後、砦内の各防衛施設も破壊。
この一戦の勝利で魔王城への道が開けたことを証明いたします。
魔王城攻略の足掛かりとなる本作戦は甚大な損失覚悟でしたが
お二人のご活躍で討伐隊本体の損害を軽微に出来た事は称賛に値します。
よってここに
魔王討伐軍総指揮官イサム。副指揮官サチから感謝の盾を贈呈いたします。
現、トウショウ王国国王イサム・カミミヤ。妃サチ・カミミヤ】
です」
「おやじとおふくろが魔王討伐の足掛かりを作ったって事か?」
「はい。とても凄い功績ですよ。並大抵の精神と能力では成し得ない事です」
「す すげぇじゃねぇかおやじぃぃおふくろぉぉうおぉぉぉ
(何でこんな複雑に造ったんでしょうかねぇ。この側面を上にあげる。はぁぁ三面のフォトスタンド。屏風みたいになるんですねぇ。凄いわ)
「あのっ。これ見ててください」
「おう」
「こう開きます」
「「えぇぇぇ?」」
「で、読めない面の横に読める文字で書かれています」
「本当だぁぁ」
「で、もう一回開くと」
「これは?絵?」
「写真です」
(クラウスぅ。当時の写真は見た事無いって言ってたじゃぁぁぁん。ああ戴冠式のを。か)
「これが写真かぁぁ
「はい。【魔王軍南東最前線防衛砦攻略作戦先陣隊作戦完遂】と書いてありますね。
その時の集合写真でしょうね。中心のお二人がご両親では?」
「ああ ああ
(大泣きになってしまいましたね。両親思いの良いお方なのでしょうね)
「見せて」
「はい」
「どれがお父さんとお母さん?」
(ああ、幼くて覚えていないのでしょうねぇ。僕でもおぼろげですからねぇ)
「こっちがお父さん。こっちがお母さんだって」
「そうなんだぁぁ。ボロボロの服で汚れてるけど笑ってるぅぅ。お父さんカッコイイ。お母さんきれい」
「そう だね」
「こ 殺されちまって。殺されてどうするんだよぉ。英雄だったんだろうがぁぁ。滅茶苦茶強かったんだろうがぁぁ
「巧妙な罠に嵌ったか騙されたか・・・伝承せず、カミミヤファミリーの日がなかったら
「黙れ。黙れよ。お前、イサム陛下とサチ妃殿下に罪を擦り付ける気か」
「えっ?」




