未周知集落で新たな出会い
暖炉の在る部屋に木製の長テーブルにしっかりとした背もたれのある椅子。
大婆が上座に座り、右手にララヴール、ハルサーラ、スカッシュ。
向かいにエイジット、ユイ。
各人の紹介が終わり。
「時にララヴール殿」
「はい。イズ大婆様」
「その様に呼ばれると面映ゆいの。聞きたい事があるがの。何処まで秘密じゃの」
「どこまでと申されましても」
「レマン君じゃろ?」
「はぁぁ。そうですか」
「アバター様はクラウス様」
「はい」
「「えぇぇぇ」」
「都合上変装しています。ご内密に」
「エイジット。ユイ。このララヴール殿こそがアイファウスト・カミミヤ王子殿下じゃの」
(言っちゃったよおばぁちゃぁぁん)
「大婆。女性ですよ」
「エイジットよ。使徒様ともなれば俗世を欺かねばならん。朝飯前の所業じゃよ」
「もしかして砦の時の木こり様も?」
「はい」
「「申し訳ございま
「そのままで。ただ、ご内密に」
「はっ「はい」
「この集団は十年前職を失った者とここへ至るまでの二つの集落の集合体じゃの。
現在の住民は凡そ百人。内、エイジットが連れて来た元国軍が三十余名。
での。ここの誰一人エルファサ女神様を怨んではおらんの。悪いのは全てザイスターとマッドジョイ。それにイフィスの父親じゃの。
ご本人様が目の前に居るから都合の良い事を。そうは思って欲しくは無いの。
それとわしら技術継承者とそれらを管理しておった貴族共じゃの」
「イズ大婆様。それはどういう事でしょうか。技術継承が市井の話しを一切しなかったとは聞いていますが」
「しなかったのではなく、出来なかった。中には意図的にしなかった者もおるじゃろうがな。
大方はザイスターに金や女を掴まされた貴族連中が家族を人質に語れば男は死罪。女は娼婦と言われておったからな」
「それは三王国と一帝国?」
「トウショウ王国とキューレット王国。他は知らん。
これを見て下され」
「キューレット王国の東の町。ヒュトンの町を治める領主のランラリー・ドモ・ハシレー男爵の技術継承者に宛てた十年前の書簡。
はぁぁぁ。
ハルサーラ様にお見せしても?」
「構わんの」
「お借りします。・・・なんてことを」
「この男爵は生きているのですか?」
「先月死んだ。いや正確には殺された。もっと言えば消された。エセ教会に。
この世界にアイファウスト王子殿下が現れるであろう十五歳の誕生日を迎える前に。
その男は増長してエセ教会を脅迫しよった。
その男の両親。嫁。娘っ子三人。使用人数名が今だ行方知れずじゃ」
「口封じ?」
「それしか無いわな。わしの所に情報が来ておらんだけで他にも居るじゃろうな」
「ありがとうございます。
父と母も完全に裏切られたわけでなかった。と、同時に技術継承者のお方に辛い思いさせてしまいましたね」
「その為に出ておいでになったのじゃろ?」
「今はまだ何をしていいのか解っていません。もし宜しければご教授願えますかイズ大婆様」
「本当に良い子じゃの。わしの孫にならんかえ」
「大婆様ぁぁ」
「冗談じゃエイジット。
アイファウスト王子殿下。エイジットに聞きたい事を聞くがええの」
「はい。エイジット隊長。国軍をお辞めになった理由は?」
「辞めた訳ではありません。首になったと言った方が正しいかもしれません。
西部方面北部警戒隊が在った砦の町。パナイジー。
ここの辺境伯が冒険者を取り纏めるカルクスッタ商会と癒着。
元々わたくし達は中央の国軍に居たのですが腕を見込まれパナイジーに。その負担の六割を辺境伯が持っていました。
まぁ色々ありまして、最終的には嘘八百を並べ、陛下に陳情。晴れて首になりそれとほぼ同時にカミミヤファミリーの日。
行き場の無いわたくし達が砦の外の空白地帯に野営をしていたら、徐々に職人たちが奴隷を恐れ集まって来ました。
その内にカルクスッタの手の者達が職人を手に入れようと襲撃してきました。
当時は部下も五十名ほどいましたので軽く返り討ち。
その追手を逃れようと北へ向って、今ここです」
「での。ララヴール殿。わしらはエルファサ女神様の御膝元に住む事は出来ぬかの?
旅から旅へは疲れての。腰が曲がって来たわい」
「悪行がなければ問題は有りません。いかがですか?」
「エイジット。二人はダメじゃの」
「ヘルとサタ夫婦か?」
「あの者達は連れては行けんの」
「ヘルとサタはカルクスッタのスパイです。今はパナイジーに戻っていますね」
「ご存じで何故?」
「ハルサーラ様もお解りになると思いますが案外便利に使えるんですよ」
「納得です」
(何々。どうゆこと?)
「それでしたら問題は有りませんね。ノルトハン国王に入ったら、もう必要は無いと?」
(あぁぁ蚊帳の外ぉぉ)
「はい」
「もういらんの。その者以外は全員連れて行っては貰えぬかの?」
(あぁぁ誰かおせぇぇてぇぇ)
「わたくしから宰相に打診しておきましょう。ララヴール殿は一旦、東門の外に例の計画の物を」
(あうっ)
「判りました」
「ララヴール殿。可能ならば今日がありがたいんじゃがの。どうかの?」
「生活物資はいかがなさいますか?」
「ユイ」
「こちらにミスリルと金の原石があります」
(えぇぇぇ暖炉に似せた金庫ぉぉ?鑑定。金貨で三千枚相当?)
エイジットが。
「先程は木こり様に嘘を
「警戒するのは当たり前の事。
逆にほいほいと出された方が色々困る」
「ありがとうございます」
「それで、どうかのハルサーラ殿。こちらの見立てで金貨二千枚は有ると思うがの」
「少々お安く見積もっていらっしゃいますね」
「欲をかくとエルファサ女神様の御怒りに触れるからの。殿下」
「ハルサーラ様にお任せいたします」
「ハルサーラ様。エマルサーラ商会で必要物資をこれで揃えて頂けませんか?」
「ユイ殿。色々ご相談を致しましょう」
「宜しくお願いいたします」
「どうですかの。ララヴール殿」
「一つだけ条件があります」
「もう護衛も必要無くなるからの。
エイジット。どこかに付く気は有るか?」
(おばあちゃんすげぇ。何で解ったの?)
「村の恩人のララヴール隊長のご指示でしたら、わたくしを含め三十三名。異論無く、従順にお供いたします。
ただ、部下殿達程強くは有りませんよ。馬もここ十年乗っていませんし」
「実はエルファサ女神様の真教会は許可が下りてまだ間が無く、つい先程までエルファサ女神様とヴィーナス女神様を交え、ノルトハン国王のノネジット・ファウス・ノルトハン国王陛下とユーミルナ王妃様他と今後について協議をしておりました」
「アイファウスト・カミミヤ王子殿下はヴィーナス女神様ともご親交があらせられると?」
「エルファサ女神様のご友人ですから、腐れ縁と申しておきます。大婆様」
「まぁまぁ腐れ縁などと言えるのはアイファウスト・カミミヤ王子殿下しかおりませんでしょうな」
「少し失礼でしたか?」
「かなりですぞ」
「少々改めましょう。
それでその真エルファサ女神様教会に神聖軍の創設を検討しております。
現状隊長はマルック隊長です。その部下と成ります。異論は有りませんか?」
「ララヴール隊長。そのマルック隊長ってイサム様達の魔王討伐に従軍した、あのマルック?」
「はいそうです。アルッシュやベルガー達も居ります」
「お 俺・・すみません私達はマルック殿に会いたくてここまで
「あなた。落ち着いて。
マルック様はエイジット隊の憧れの的だったんです。
とても気さくで口は悪いですがお優しいお方と伺っておりますが?」
「はい。そのままです。もう少し厳かな言動を期待しますが、無理かな」
「入隊に当たり、試験は有るのでしょうか?」
「はい、あります。
規律と言動、所作。エルファサ女神様の経典の熟読と理解。剣。弓。槍の三種の中級以上の腕前。ここまでが必須です」
「エイジット。エルファサ女神様の御身の前に立つ事もあろう。身を挺してアイファウスト・カミミヤ王子殿下をお守りもせねばならん。
そこらの王と自称する者達とは格が違う。
覚悟を決めよ」
「はい」
「イズ大婆様。そこまでは
「何をゆうておりますかな。
良いですか。
イサム陛下とサチ妃殿下は言わば創世の女神エルファサ様がご指名になったような国の頂点ですぞ。
そんじょそこらの二代目三代目の国王とは格が全く違う。一代目ですら危ういものですぞ。
国王宣言時に創世の女神エルファサ様はご降臨されてはおりませんからな。
あなた様のお父上とお母上の献身的なこの大陸へのお力添え。それに心を動かされたのでしょうな。
そしてそのご子息のアイファウスト王子殿下。
正にサチ妃殿下の生き写し。お美しくもお可愛いお顔立ちじゃて。
それで二代目だから。
何をゆうておられます。
素晴らしい実績があるではございませぬか?」
「魔物討伐でしょうか?」
「お戯れを。それも有りますでしょうが、もっと大きく、もっと偉大で、この世界の誰一人。本当に誰一人成し得なかった事が。
それはイサム陛下とサチ妃殿下が志半ばであなた様を置いて逝かねばならぬお気持ちを継承して、この世に姿をお現しになった。
とてつもない成果を以てして。
真エルファサ女神様教会の建立」
「あっ」
ハルサーラが。
「イズ大婆様のようにエルファサ女神様を信仰し続けた信者にとってはこの上ない喜びなのですよ。
あの時、エルファサ女神様に抱き着かれながら発したあの一言。
十年の年月を経て、イサム陛下とサチ妃殿下のお力がアイファウスト王子殿下の掌で、アイファウスト王子殿下の思う世界へと動き始めたのですよ。
創世の女神エルファサ様のこの世界を造るご計画にも沿った意志でもあったのでしょう。
そのように教育をなさったクラウス様に敬意を表するとともに、純真無垢に。悪は悪として。溢れるお力は民のために。
そうお育ちなったアイファウスト王子殿下をわたくしは尊敬し、愛して止まぬお方と思っておりますよ」
「ハルサーラ様は息子が出来たように嬉しそうじゃの」
「はい。
わたくしの可愛い息子です」
「わたくしの可愛い弟でもありますよ。
ユイミナお姉様もマインシュお姉様もアルミスもそう思っていますし、そう接していますよ」
「ありがとうございます。
か 家族が あぁぁ
「いらっしゃい」
「はい。ハルサーラ様」
「本当に良い子じゃのぉぉ。わしの孫に
「大婆様ぁぁ。さっきの繰り返しじゃねぇか」
「そうだったかえぇぇ?今日の朝食は食べたかえ?」
「食べたぁぁ」
「召し上がっておいでです」
「くっくっくっく。ハルサーラ様。ありがとうございました。
皆様。失礼いたしました」
「そんじょそこらの王子様とは違う事が分かってもらえたかえ?」
「で、あったとしても、驕らずに生きて行こうと思います」
「クラウス様は本当に真っ直ぐにお育てになったのですねぇ」
「クラウス様は本当に真っ直ぐにお育てになったのじゃなぁ」
「あのっ。ララヴール・ラトン隊長」
「どうされた。エイジット隊長」
「先程魔物の討伐が成果を。と、仰いました。
個人のランクなどは?」
「はい。いいですよ。
色々有りまして、現在複数の冒険者カードを所持しています。
正真正銘のわたくし。アイファウスト・カミミヤとしてのカードはこちらです。どうぞ」
「「え”ぇぇ?」」
「ユイ」
「お婆様。アイファウスト・カミミヤ王子殿下。SSSで30000です」
「さすがは使徒様。それぐらいは無いと認められんじゃろうて」
「「え”ぇぇ?」」
「クラウス様は本当に素晴らしいお方じゃったなぁ。
で、ララヴール・ラトン様。
わしらの移住はどうですかの?」
(あぁぁおばぁちゃぁぁん。クラウスがどう凄いのかおせぇぇてぇぇ)
「また、お話しする機会もあるじゃろうて」
(あれ?声に出てた?でも、ハルサーラ様達は何も)
「ララヴール?」
「ああ。はい。ハルサーラ様。
ハルサーラ様。スカッシュさん。わたくしは一旦、東門前に行き、受け入れ準備をしてきます。
こちらの準備のお手伝いをお願いしてもいいですか?」
「はい「了解」
「先程の赤ちゃんのお父さんは?」
「うちの隊のオガッシュが父親です」
「母子共にお元気ですとお伝えください」
「「「ありがとうございます」」」
「では二時間後にお迎えに来ます」
「「「はい」」」




