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 明かされる財宝が眠るナーガ橋

 会合が始まり、開口一番マウレスが挙手した。


 「マウレス宰相。どうぞ」


 「ありがとうございます。

 まず初めにアルーモアギルド長ファンザテットの件。

 アルーモアの冒険者の件。

 キムカスイコム・ポット都長の件。

 情報提供を頂けましたこと、誠に


 「「「ありがとうございました」」」


 「それで、全て主犯格を捕縛いたしました。

 都長に・・・失礼。

 今、誘拐された婦女子を全力で捜索しております」


 「ありがとうございます。

 その件は教会は関知致しておりませんので、そちら側で処理をお願いいたします」


 「畏まりました。

 一点のみご報告を良いでしょうか?」


 「お聞きするだけですよ」


 「はい。今回の一連の件に関しましてジャクリード・レ・イザルッシュ公爵の旧知の仲の者の素早動きで解決に導きました。

 ジャックレイ署長もエウマイアーギルド長も舌を巻くほどでした。

 良いお知恵を頂き感謝いたします」


 「「「ありがとうございました」」」


 「いえいえ。では続きをどうぞ」


 「はい。

 先日の中央偽教会の一件以降、王都内の小規模店舗が軒並み姿消しました。

 調査の結果、エマルサーラ商会の傘下に入りこちらに移住した者ばかりです。

 エマルサーラ商会の傘下に入る事自体に何ら問題は無いのですが王都の都民がこの先困るのでは、と、懸念しております」


 「それはマウレス宰相自身のお考え?もしくはノネジット陛下も含めた国としてのお考え」


 「現状はわたくし個人です」


 「そうですねぇ。現在までにあの通りに面した、もしくはあの周辺からこちらに移住した店舗は全部で八店舗。

 内、三店舗は食料品以外。

 半年以上前から北都教会の傀儡だった。出入りは他のお客様でも出来た。

 異常な価格設定で客足が遠のいた。一部の心ある常連客などは警察に相談に行った。

 警察から異常な価格設定として議会に答申されましたが 問題無し と、して処理。

 一度も行政の調査は行われなかった。放置されていた状態です。

 たった一度でもあなた。マウレス宰相が市井の調査に赴いていてれば教会の異常に気付いたはず。

 わたくしのような十年引きこもり生活の若造でも見抜けたのですよ。

 非常にまれなスキルをお持ちのお方達ばかり。

 捨て置かれみすみす悪魔へ奴隷落ちさせようとしていた、あなたから彼らを奪って何の謂れが有るのでしょうか?」


 ノネジット、ユーミルナ、マウレスが立ち上がり。


 「「「申し訳ございませんでした」」」


 「そうですね。お三方に責任はあると思います。

 国の事に関し、わたくしの父。イサムがマッドジョイ陛下に向けた言葉をご存じですか。ノネジット陛下」


 「市井を見て回れ。でしょうか?」


 「はい。市政。それよりもっと小さな規模。そこにはいろいろな問題が凝縮されています。

 王城には決して無い問題。

 その問題を蔑ろにしたマッドジョイ陛下のトウショウ王国は人口が減り続け、奴隷ばかりになり税収は激減。

 他国でしたら既に民衆の手によってどこかの国王と妃のように王家の首が断頭台で転がっている頃です。

 下々を使ってもいいです。前回のギルドのように直にお忍びで行かれるのもいいです。せめて噴水広場周辺だけでも見て回ることをお勧めします。

 とても愛くるしいアイファル王女殿下をわたくしのようにしないでください」


 「「「はい」」」


 「マウレス宰相。地方を見て回るのも結構です。

 ただ、行きやすい場所。便利な場所ばかりでいけません。

 この地にも来られたことはないとの事。

 もし、ここで暴動の火種が在ったら王都内の中央協会の転移陣に暴徒と魔物が押し寄せる所でしたよ。

 ちなみに常設転移陣や転移紋は術師さえ居れば同一国内で魔物でも転移は可能です


 「「「えぇぇぇ」」」


 「本来は父と母が手に負えない場合に、市街地から外へ向けて放り出すことに製作した魔方陣なのですが、逆も使えることをごく一部ですが知っていますよ。北と南は」


 「ご忠告を頂き感謝申し上げます」


 「これ以上は国政に関わる事。マウレス宰相頑張ってください」


 「はい。それで今しばらくお時間を頂戴しても良いでしょうか?」


 「どうぞ」


 「ご存じでしたらご教授願いたのですが、例の暴動を阻止したナーガ橋。

 いつからか、どこからともなく国が買えるほどの財宝が眠っていると言う噂がありまして裏の利権争いの火種になっています」


 「そうですね。決着は付けておいた方がいいでしょう」


 「「やはりご存じでしたか」」


 「ノネジット陛下もお困りでしたか?」


 「勿論でございます。国家を揺るがすような財宝が出ては、たまったものではありませんから」


 「マウレス宰相は先日、自戒しておいででした。それに連なるお話しです。

 あの橋は父と母が設計から現場監督までを務め完成した橋です。

 間違いないですね」


 「「はい」」


 「今現在の所有者はノルトハン王国。ですね」


 「「はい」」


 「現状は父と母の防御魔法が効果を発揮している状況です。破壊できる代物ではありません。

 これは聞いた話しですがその昔、とあるAランク冒険者が橋の上で哀愁を漂わせこう呟いたそうです。


  {この橋がかのイサム様とサチ様の遺品。国が買えるような、とんでもない財宝がありましたな}


 と」


 「アイファウスト王子殿下。まさかそれは」


 「ノネジット陛下。誰かがそれを聞き、酒場で酔って誇大して面白おかしく酒のつまみ。

 やがて尾ひれ背びれが付いて皿の上に乗ったら?」


 「財宝が隠されている夢の話し?」


 「はい。各地に女神様が破壊しなかった建造物は多々残っています。

 その中でもナーガ橋は大型建造物に入ります。

 橋ですから住居建物よりも高度な技術が多数使われています。

 橋脚はローマンコンクリート。アーチ形の鉄筋構造で欄干はデザインされ防錆加工が施された鉄。

 自動点灯の常夜灯も川から魔力を吸収し魔石の取り換えは不要。

 投光部分はガラスでレンズ効果を使用して通常よりも明るい。

 道路の下に電熱線と言われる導線がコイル状に敷設され、外気温が五度を下回ると作動し、路面温度は十五度まで上昇。

 橋中央のメンテナンス小屋から入れば全てのシステムが見れる、橋の下の通路に出られます。

 ノネジット陛下はその小屋の開錠用のミスリル製カードキーを母から預かっておられるはずですが?」


 「あ”ぁぁぁぁ


 「つ つまりあの橋の構造自体が財宝だと?」


 「マウレス宰相。昔は良かった。の、学者さん達が見たら涙で橋の上が大洪水ですよ」


 「再現できなくとも、技術の探求が出来、我が国の知的財宝となって、いつかその時がこれば我が国が率先して受注を受けられた」


 「はい。正解です。外貨を稼ぐ大きなチャンス。アドバンテージが取れます。

 勿論、ナーガ橋の直接の工法や素材では使えません。

 ですが、頭のいいお方達ですから、それらを応用して木材や石材。鉄や銅、鉛なんかでも土魔法や錬金術で様々な用途で活用できた。

 巧妙に模写された偽金貨も錬金術で出来るくらいですよ。誰でしたっけぇああ、バーブルさん。彼に研究の成果で造って貰えればかなり良いものが出来ていたでしょうねぇ」


 「マウレス宰相」


 「処刑しました。そもそも簡単に犯罪に手を染める輩に技術を公開は出来ませんよ」


 「だなぁ」


 「そう言った技術をコツコツと積み上げていれば、今のような生活環境ではなく、カミミヤファミリー涙の日以前の生活環境により近い状態だったでしょう。

 その技術は輸出も出来た。そう思いますよ。

 元々、お金の循環装置をノルトハン王国は持っていたのです」


 「「あ”ぁぁぁぁ」」

 「くちおしいほど十年間何もしなかった自分達を自身で恨みます」


 「父と母が突然やって来て、橋を造ります。ご許可を。どうぞ。出来ました。

 皆さんの心のどこかにまた、技術は空から降って来る。寝て起きたら橋が出来ている。そんな気持ちが有ったと思いますよ。でなければ十年なぁぁにもしない訳がありません。

 そんな事は思っていません。

 嘘です。だって、同じ物を造ったら殺すとはエルファサ女神様も仰っていないんですよ。同じ物が出来ないだけでコピーは出来るんです。

 制約の掛かっていない、皆様お召の服もケーキもアップルパイも紅茶の製造も馬車も道路の造り方から、通信機の使用方法まで全て父と母のコピー品ですよ」


 「そうだったぁぁ」

 「そうでしたねぇ」

 「本当にバカだなわたくしは」


 「国民の皆さんの多くは不便を少しでも解消しようと地道に努力をなさっているのです。少しでも豊かな生活に戻ろうと頭を使っていらっしゃるのです。

 だからこちらの皆様は技術が空から降って来る。寝て起きたら橋が出来ていると申し上げたのです。

 国民が寝る間も惜しんで技術の探求をして出来上がった物を献上。気に入った。買おう。以上です。

 マウレス宰相。

 そのお方に対価はお支払いになった。何か叙勲でもなさいましたか?

 例えば今お履きになっている靴。二十年前。父がこちらに来て初めて作った靴です。

 それまでは今ではサンダルと呼ばれる物と皮の袋状の物。木の靴でしたよね。

 十年前。その時履いている物以外は消滅しました。技術継承者も囲い込まれましたが父と母の素材が無いと作れないと判ると全て殺されました。そして、製法は消滅。

 しかし、各国の不便を感じた国民が似せた物を造り上げ、現在に至る。

 今現状最も父の靴に近い製品を編み出して世に貢献しているのはデービッシュさんですよ。

 陛下とお妃様。宰相の靴はデービッシュさんの技術を応用・・・盗んで作った貴族の手柄になっているんですよ。

 既に処刑されたエマルサーラ商会を潰した男ですよ。

 デービッシュさんは研究開発費を銅貨一枚も貰っていませんよ。

 マウレス宰相さん。特許。と、言う言葉を聞いた事が有りますか」


 「あ 有ります。有ります。意味も理解しています。あぁぁぁ申し訳ございませんでしたぁぁぁ」


 「デービッシュさんにお話ししておいてください。

 王様は頭をひねっておいでですので、簡単に申しますと、デービッシュさんが考案し、世界に同じ靴は存在しない。これはデービッシュさんの靴である。この技術が使いたければデービッシュさんにお金を払いなさい。国の命令ですよ。

 こんな感じです。

 アイファル姫様がおもちゃを考えました。それはこの世界のどこにも無い。

 でも、城内の何方かがこれは売れると思い町中で売って大儲け。わたしが考案したおもちゃ。名声も博した。ノネジット陛下はどうなさいますか」


 「許せるはずがない。何かしらの手を打つ」


 「はい。国王の名で横取りです。アイファル姫様が考案した事実は身内が知るだけ。

 そのお方は既に国内外で名を馳せている。所謂周知の事実。

 ノネジット陛下は国民から奪う王に成りあがってしまうのです。

 それで先程マウレス宰相も仰られたように知己財産。

 ナーガ橋の技術をノルトハン王国の知的財産として内外に発表し、その権利を得る。

 知的財産権ですね。これを早急に整備しないとせっかくノルトハン王国の財産を使って開発したのに他国に横取りされてしまう。それこそ銅貨一枚にもならずに。

 もしかするとどこかの国王は『それは我が国の者が考えたのだ。故に我が国の技術である。金を出せ』と、言ってくる可能性も有ります。

 実際、ナーガ橋の資金はトウショウ王国が全額支払っていますよね。マウレス宰相。解りましたかぁ?」


 「今はまだナーガ橋の秘密を知らない。今のうちに特許に関する法整備を行い内外に発表。

 それからナーガ橋の技術確認と開発を行う。研究員や関わる者にも秘匿義務を課す」


 「はい。頑張って下さい」


 「陛下。デービッシュ殿にも遅ればせながら、なにかしらの叙任をなさっては如何でしょうか」


 「ユーミルナ王妃様。既に時は遅く、その価値も存在しません。

 ノルトハン王国の歴史書の一ページにデービッシュさんの功績を称えるページを設けてください。

 それには秘密裏にデービッシュさんとの会合が必要です。

 その時に研究開発費の一部でもご苦労さんでしたと渡してあげてください」


 「わたくしからもそれを望みます」


 「判りましたよハルサーラ。その様に致しましょう。

 アイファウスト王子殿下。わたくし達の無知をお許しください。

 今後もこのような会合をもっては頂けないでしょうか」


 「アキツシマ自治区と教会の建立式典までです。

 それ以後は国家の政に神官長が頭を突っ込む事になりますからご遠慮申し上げます」


 「判りました」


 「それでユーミルナ妃殿下。先に言われると言い出しずらいので先に謝罪します。

 申し訳ございません」


 アイファウストは座ったままで深々と頭を下げた。

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