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  レマン君が助けた命

 入浴と昼食を虹の泉で摂った後、宿の前で騎乗し整列したエルファサ女神様真教会近衛公安騎馬隊三十名とハルサーラ。アルミス。

 マックストールとイルミ。受付の整理を終えたナルッシュは各教会の状況確認に向かった。


 隊の前に出たララヴール。


 「では、諸君。今より盾と矛に向かう。前へ」


 「了解」


 先頭がララヴール。その右後ろを徽章を持ったアルファ。その隣にキャルス。その後方にハルサーラ。その後方にアルミスとシュルキーが並び二列縦隊で第一小隊と続いた。

 街道を行く者達は道を開け両脇に避けた。

 既に王都の中心部では知れ渡り大きな混乱無く盾と矛に到着した。


 一足先に戻り警護に当たっていたガルカク兄妹は跪いて迎えた。


 「全員その場で待機」


 「了解」


 ララヴールとハルサーラ、アルミスが馬を降り、隣の者に手綱を預け、ララブールは隊から見えないところで木こりになり、ガルカク兄妹と盾と矛に入った。


 「サホタブル。すこしいいか?」


 「ガルカク。改まってどうしたんだ。木こりのお嬢ちゃんが戻って来たんだろう。

 店の外に待たせちゃ悪い。入れてやんな」


 「お お前本当に見えないんだな」


 「違うのか?直接は見えないがちゃぁぁんと判るさ。雰囲気ってもんがある。

 さぁお嬢ちゃん入った入った。そんなおっさんに遠慮なんかいらないさ。今はまだ俺の店だ。

 良かったらお茶を貰えないか。カスミナのお茶もいいがお嬢ちゃんのも飲んでおきたい。奴隷に行っちまったらもう飲めねぇからな」


 「おじ様」


 「あぁ。いらっしゃい。最後の客。あぁ来てくれた知り合いがお嬢ちゃんで俺は嬉しいよ」


 「はい。お茶です。ぬるくしてありますから大丈夫ですよ。これです」


 「あぁありがとう。うぅぅん。うまいねぇ。ガルカクの知り合いだってなぁ」


 「はい」


 「なんかな。急に見えなくなっちまってすまない。もう全部がぼんやりしか見えないんだ。

 最後にお嬢ちゃんの顔を見ておきたかった。娘達が聞いたら怒っちまうな」


 「おじ様。今から言う事を聞いてください」


 「ああ何でも聞くよ」


 「おじ様は中央教会と北都教会に騙されていました。

 そしてお薬と術で目が見なくなり、鑑定のスキルも使えなくなりました」


 「そうかい。エルファサ女神様の罰が当たったんだろうよ。

 儲けたのに献金しなかったからな。

 ああ中央教会じゃねぇぞ。あそこは嘘っぱちだ。

 本当の女神様はお嬢ちゃんの中に居るだろう。目が見えなくても、ちゃぁぁんと見えてる。

 奴隷に落ちる前に会いに来てくれた。ありがとう」


 「もう、おじ様ったら」


 「ああすまない。はぁ。そろそろだろう。

 もう直ぐ奴隷売買の連中が来る。さぁお帰り。

 お嬢ちゃんが見ていい輩じゃない


 「おじ様。聞いてください」


 「お おうっ」


 「おじ様。もし奴隷にならず、目が治ったらお店を続けたいですか?」


 「そうだねぇ。そんな夢みてぇな事になったら続けたいと思うよ。楽しかったからなぁ。

 冒険者がぶっ壊れた武具を持ち込んできて、判り切った嘘八百の武勇伝を大袈裟に言うのを聞きながら大笑いしたいねぇ。

 お嬢ちゃん。冒険者と話しをする時は両手を縛るんだよ。

 大袈裟な話しが尚でかくなって、ヒヨコが最後にはドラゴンに成っちまうからなぁ。

 わぁぁっはっはっは」


 「あははは。

 おじ様。わたくし用事を思い出しました。

 お客様も来たようなので帰りますね。このお茶は一気に全部飲んでください」


 「うめぇぇ。今度の茶は少し甘いのか。いや、むかぁぁし飲んだリンゴジュースだ。久しぶりだぁぁ美味しい」


 「全部飲みましたね。それではお元気で」


 「お嬢ちゃんも・・転移で行っちまったな。

 で、お嬢ちゃんが連れ来たエマルサーラ商会のハルサーラ頭取は俺にぃぃぃぃ見える。見えたぁぁぁあぁぁスキルも戻って来たぁぁ。

 見えるよぉぉ何もかもぉぉはっきりとぉぉ。何でだぁぁありがてぇぇありがてぇぇお嬢ちゃぁぁん。

 ガルカク。何でだ?どうしてお前達が見える?何をした?」


 「初めまして。盾と矛の店主。サホタブルさん。エマルサーラ商会のハルサーラです」


 「なぁ教えてくれないか。木こりのお嬢ちゃんは何者なんだ。さっきのリンゴジュース。ただのリンゴジュースじゃねぇ。

 むかぁぁしキューレット王国で大ケガした時にBランクのアバター様がぁぁあぁぁぁレマン君。思い出した。レマン君の声だ


 「ご想像はご自由ですが彼はわたくしの商会の


 「ガルカク達のチョーカー。フジミヤ君だろ。いやこの名前わぁぁえぇぇぇ


 「今は言うな」


 「秘匿なのかガルカク」


 「ああ」


 「判った。今はフジミヤ君でいいか?」


 「それでいい」


 「凄い鑑定のスキルですね。貴族にも狙われるはずです」


 「囲われる方ならまだマシなんだが潰しに来る奴らばっかでよ。

 で、ガルカク。借金は?」


 「フジミヤ様に返済して頂いた。で、変な言い方になるが奴隷として雇ってもらった」


 「昨日から聞く内容で、三食付きの屋根付き風呂とベッドで可能な限りの自由付きか?それを奴隷と言わねぇよ。

 でよ。全部わかっちまった。店番の小僧を使って、俺の目とスキルを使えなくして奴隷落ち。

 身動きできなくして治して馬車馬のように働かせ大儲け。悪党の考えそうなこった。

 フジミヤ君が来て帳簿を見て全てが解ったようにガルカク兄妹を連れてきた。まるで俺を護衛するように。

 ハルサーラ様よ。どうせ奴隷に落ちるんなら、俺もフジミヤ君 いや、フジミヤ様に付いて行きたい。家族共々どうしたらお側でお力になれる。

 もうすぐ奴らが来る。頼む。この通りだ。二度も助けられた。何とかしてレマン君のフジミヤ様のお側でこの恩を。この恩義に報いたい


 ハルサーラの前で五体投地しながらそう叫んだ。


 「アバター様に助けられたのは判りました。

 どうしてそこまでレマン君に恩義を?」


 「むかぁぁし、キューレット王国の俺の師匠の元で修行していた居た頃、素材集めに仲間三人と森に入った時だ。

 大型のイノシシに追われ四人が散り散りになって逃げた。

 しかし、イノシシは俺に的を絞った。そして鼻っ面でぶっ飛ばされ崖に叩きつけられた。

 両足の骨は太ももで折れ、右腕と肋骨も数本折れた。崖にぶつけた頭は切れ、牙で突かれた腹からは血が止まらねぇ。

 あぁぁ俺はもうここで死ぬんだ。と、思った。

 そこへアバター様とレマン君が来た。当時は六歳ぐらいだったと記憶している。

 俺に狙いを定めたイノシシをレマン君が誘導して方向転換させ、俺から引き離した。

 アバター様は俺の前で立ってレマン君の動きを見ていた。

 そして突進してきたイノシシを躱して小さな剣一本で一瞬で仕留めた。

 凄かったよ。自分の何十倍もあるイノシシの首の横に一突き。本当に一瞬だった。

 そしてアバター様は振り返って言った。


 『自分の技量も知らずに森のここまで入るとは自業自得ですよ』

 と。


 確かにその時は俺一人だった。俺は言い訳をした。


 『逃げ惑う時点で技量が足らないのです。そして散り散りになって逃げていくような者らを仲間とは言いません』

 と。


 当然だ。走馬灯のように反省したさ。

 レマン君がでかいイノシシを一瞬で収納して。


 『爺や。助けてあげないの?大けがだよ』

 『こう言った輩は繰り返します。今ここで死ぬか。明日死ぬかの違いだけです。今こうしている時点でも仲間も来ません』


 レマン君は血まみれで横たわる俺に抱き付き。


 『爺や。ほら。おじさんはぼくの仲間だよ。ねぇおじさん。爺や。おじさんうんっていったよ』

 『若様。これで判りましたね。一人で森に入る事の恐ろしさ。

 先程のお姉さん達のようなお方ばかりではありません。

 お友達だと思っていてもいざとなれば見捨てるお方もいることを』

 『うん。すごくわかったよ。おじさん。めっ。だよ』


 俺は溢れる涙を抑えきれず、そして動いた左腕で抱きしめちまった。


 『爺や。おじさん痛くてないちゃったよ。はやくなおしてあげようよ。おじさんは、ぼくの仲間だよ』

 『そうですね。若様の仲間になりましたね。これを飲ませてください』

 『うん。おじさん。ゆっくり飲んでね』


 それが今飲んだリンゴ味のポーションだった。

 そして完全回復した俺は今の様に五体投地した。そして治療費を聞いたら。


 『おじさんはぼくの仲間。だからお金をもらってはダメなの』


 もうよ。涙が止まんねぇの。溢れ出て溢れ出て言葉も出ねぇの。


 『まだどこか痛いの?だいじょうぶ?』


 そう言いながら俺の横にしゃがんで、丸めた背中を小さな手で優しく優しく擦ってくれた。

 そして俺は返答に首を横に振るのが精いっぱいだった。

 その間にアバター様が仲間三人を連れて来てくれた。

 そして、四人が正座をさせれた。


 『己の持つ技量の範囲で森に入りなさい。仲間を見捨てて逃げるとは言語道断。次は有りませんよ』

 『おじさん。もう痛くなぁい。おうちに帰れる?』


 そう言って俺の元に駆け寄って来て、俺の頭を撫でながら。


 『おまじない。痛いの痛いのとんでけぇぇ』


 多分アバター様にされたことを俺にもしたんだろうな。滅茶苦茶可愛かった。


 『レマン。もう大丈夫ですよ。わたくし達も行きますよ』


 レマン君は何故か俺に一礼をして、アバター様の元に戻って。


 『おじさん。かんばってください。バイバイ』


 二人は転移で消えた。


 森から出た頃、レマン君は小さくしゃがんで何事も無かったかのように薬草を取っていた。

 駆け寄ろうとしたらアバター様が声も出さずに行きなさいと指図した。

 恐らく俺達が森から出るまで道中を見守っていてくれたのだと思う。

 お二人とも優しかった。強かった。神様だったよ。


 そしてその後判った事だが、三人は俺を騙して素材を横取りする予定だったらしい。

 そして余罪があるとかで捕まった。死人もいたらしい。

 噂ではアバター様が証拠を集めて提出したようだ。

 その後、一度もアバター様にもレマン君にも会うことは無かった。


 そんな命の恩人のレマン君を知っていながらお嬢ちゃんとして入って来たレマン君に気付かず礼も言えなかった。

 自分の身の上話しに夢中で。

 ガルカクのチョーカーで名前が判った。

 あんな形で両親を亡くしていて・・・まさか。アバター様はクラウス様。か。

 そうかぁ。そうかぁぁ。うぅぅ。

 あ あんな。あんな無邪気な子を。あんな優しい子を一人にしやがってぇぇ何てことをしやがるんだぁ馬鹿野郎がぁぁ」


 ハルサーラとアルミスはもう言葉でないほどになっていた。

 ガルカクも涙の止まらないマスケットとカスミナを抱きしめていた。


 「フジミヤ様はレマン君をそのまま大きくしたようだった。正しくあの時のレマン君だ。

 おじ様かぁ。

 優しく。強く。知的で優れた判断力。正しく使途様とお育ちになった。

 クラウス様もすげぇなぁ。

 あの時のアバター様かぁ。

 俺は今回もあいつ等の事をいい仲間だと思った。

 何度失敗すればいいんだ。アバター様が仰った通りだよぉ。ほんとぉぉに大バカ野郎だよぉぉ。

 あんな連中に騙されて本当のドアホウでバカ野郎だぁぁ。

 申し訳ないぃレマンくぅぅん。おじさんはバカだったよぉぉ。

 だから。だからハルサーラ様。恩義を返せる方法をぉおぉぉぉ」


 目頭にハンカチを当てたハルサーラが直って深呼吸をして。

 

 「フジミヤ様も小さくて覚えてはいなかったのでしょうね。数ある救出の一場面でしょう。

 それで、迎えに来る奴らはフジミヤ様が全員正当な理由と証拠を揃え牢にぶち込みました。

 借金の返済も必要ありません。誰も来る事も追い回されることもありません」


 「あぁぁぁわぁぁぁ


 五体投地したまま大泣きになり、床に涙溜まりができた。

 そして。


 「お 俺には 俺には見てたぁ ハルサーラ様のペンダントの様にお嬢ちゃん いや フジミヤ様の胸の中に美しく優しく微笑むエルファサ女神様がいらっしゃるのがぁぁお願いだぁぁお側にお側にぃぃ


 「はぁぁ。そこまで凄いとは。今からそのお話しをしようとしたところです」


 「聞かせてくれぇぇ 聞かせてくださいぃぃ」


 「はいはい」


 ガルカクの背中に顔を埋めるカスミナが。


 「あたしも小さいフジミヤ様に会いたかった。可愛いだろうなぁ」


 「俺は今のフジミヤ様も可愛いがな」


 「「兄さん?」」


 「あっ。おう」




 ララヴール達はその後も騙されていた店を巡って治療をしていき、ハルサーラが契約を結んで行った。

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