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 王都教会の後処理

 中央教会の瓦礫の東側に並べられた投降者凡そ百人は武装解除され、正座をさせられていた。

 その前に立ったララヴール。その右後方にハルサーラとアルミスが立った。


 「さて、諸君。君達はエルファサ女神様に盾ついたにもかかわらず生き残った百十名だ。

 何故残ったか。それはたった一つ。

 妻がいる。もしくは父子家庭で尚且つ十五歳以下の子供がいる家庭の父親だからだ。子供のお陰で生き残っていると言っても過言ではない。

 ただ、中にはかなりの犯罪行為をしてきた者も居る。

 殺人。強盗。恐喝。強姦。暴力行為。

 ただ、ノルトハン国王の法律に則ればどれも奴隷落ちがせいぜい。

 エルファサ女神様の経典に照らし合わせると殺人と強姦は教会裁判後に理由如何では処刑となる。

 君達は冒険者を辞めこのエセ教会に雇われた教会の職員である。何をどう言い訳をしようがこれが現実である。

 故に後者の選択になる。ただ、エセ教会なので前者での処罰を受ける事になる。

 大方、国営の農場や採石場。重労働奴隷となるだろう。五年から二十年と言ったところだ。

 そこでわたくしから提案がある。

 改心して真のエルファサ女神様の教徒となる気は無いか?

 勿論、奴隷としてだ。主はここに居るハルサーラ大司祭となる。

 皆ギルドカードや住民カードを持っているだろう。見てもいいぞ。


 「えっ?「はぁ?「無い「何も無いぞ」


 「そう。諸君のスキル。レベル。経験値や過去の功績。討伐数。魔法に関する全てが無い。

 わたくしララヴールが全て預かっている。

 コングレイ君。手を挙げなさい。


 「はい」


 「周りの者達も彼を知っているね。彼のカードも空っぽだ。

 スキル保持数は七。レベルは二百三十五。冒険者登録が無いのでランクは無し。

 コングレイ君。もう一度カードを見て見なさい。


 「戻ってる。あっ消えた」


 「これが教会のトップランクに与えらた特権。ハルサーラ大司祭とアルミス司祭は今修行中。間もなく出来るようになる。

 これはギルドのトップでも出来ない行い。犯罪が有った時に水晶で一部が行使できるのと警察などが所持する特殊な手枷足枷のみ。

 しかし、わたくしは装置が無くても出来る。

 魔法やスキル。レベルと言った技術や数値化は創世の女神エルファサ様が作ったからこの世界に有るのだ。

 魔法の特性や力の優劣はこの地上の魔力で決まって来る。

 子供と親双方が選べないように、生まれてくる子は魔法も選べない。持って生まれる天性となる。

 しかし、女神様は不平等を好まない。努力すれば全員Sランクに成れる器を与えて下さっている。本人の好き嫌いとは別の話しだ。

 話しを戻す。教会の職員、信者になったからわたくしのような技術を与えられる訳ではない。

 先程、聞いたであろう。エルファサ女神様に選ばれた者のみに与えらるものだ。

 わたくしはこの世界で唯一ただ一人のスキルを持っている。全員下を見るといい。

 正座のまま全員が五十センチ浮いている。一度、王都を空から見て来るといい。上昇。


 「うぎゃぁぁ「落ちるぅぅ「止めてぇぇ「あぁぁぁぁ」


 「今どの辺りまで?」


 「標高で二千メートル位です。多分、寒いかもしれません。転移で戻します。はい。おかえりぃぃ」


 「お許しをぉぉ「なります許してください「ごめんなさいごめんなさい


 「これがエルファサ女神様の真の御力です。判りましたか?」


 「はい」


 「どうです?二千メートルの上空から見た王都は?人の姿など見えるか見えないかちっぽけなものでしょう?

 女神様の目線です。

 あなた方が悪事を働いていても見えもしません。助けてと言っても聞こえもしません。それで女神様を怨みますか?

 今、山の向こう。そこの建物の向こうで悪事が行われているかもしれません。あなたがたは見えますか?

 女神様も創世以外では万能ではないのです。だから、教会を建立し、人々の心を癒し、人一人の悪事を減らしなさいと教えているのです。

 それをどう履き違えるのか、教会は偉い。称えよ。敬え。金を出せ。女を差し出せ。されば女神様からの神託が受けれるであろう。

 ここまで言えば判りますね。十年前に破壊された意味が。


 今からレベルだけをお返しします。そのお方は立てないでしょうからあなた方の右側へ這いずってでもいいですから出て下さい。

 レベルを受け取れなかった方は動けません」




 「はい。百十人中改心しなかったのはあなた一人だけ。バーブルさんです。おめでとうございます。

 このお方は錬金術師さんで今だに自分のスキルが無くなった事に納得がいかないようです。

 何故なら、あなた方が受け取った偽金貨を作ったのがこのお方。

 ここから出さえすれば偽金貨を作って生きて行こうと今だに真剣に考えています。

 バーブルさん。あなた目の前の砂すら掴めませんよ。ほらね。

 言葉は遮断しています。改心できないお方に女神様が授けた言葉は必要ありません。

 あぁジャックレイ署長様。ご苦労様です」


 「こいつですか?」


 「はい。バーブルさん。錬金術のスキルや全ての魔法はもう持っていません。念話すらできません。

 お子さんは奥さんに任せても大丈夫です。離婚間際ですから」


 「俺が転移で連れて行くことは?」


 「可能ですよ」


 「うんじゃ行くわ。少し寝たいんだが?」


 「明日から少しは眠れますよ。ご苦労様です」


 「ララヴール殿。ご協力に感謝する。おら行くぞ。転移」


 「さて、そちらのお方達は一旦国軍に引き渡し、全てを話してもらいます。

 何のスキルも無い事をお忘れなく。

 お願いいします」


 「了解」


 「あれ?足が痛くない「俺もすんなり立てる」


 「エルファサ女神様の御力ですよ」


 「はい」


 「セルファンさん」


 「はい。資料は全て持ちました。

 偽金貨も全て回収済みです。

 そしてあちらの女性達は攫われて来たそうです。幹部クラスのお相手用に」


 「やはりいらっしゃいましたか」


 「はい」


 「ウィスローヤ衛生班長」


 「はっ。ララヴール・ラトン隊長」


 「彼女達を保護」


 「了解。彼女達を救護テントへ。女性隊員。付き添え」


 「「「了解」」」


 「ご苦労様でした。セルファンさん」


 「いえ」


 「それでは行きましょう。

 アルファ。騎乗。整列」


 「了解。全員騎乗。整列」


 「了解」


 「スカッシュさん」


 「時間ピッタリ。開けて有るわよぉぉ」


 「ハルサーラ様。騎乗したまま行きますか?」


 「少々返り血が」


 「判りました。洗浄クリーン」


 「あらまぁ「すごぉぃ「全員お奇麗になりましたとさ」


 「セルファンさんとガルカク兄妹はそちらの馬を使ってください」


 「「「了解」」」


 「ポコマイミさん達はそこに出しました馬車です。中にメイデスもいます。最後尾を」


 「了解。って、いつの間に出したんだよ」


 「マックストール。先頭。徽章の旗を掲げよ」


 「了解」


 「二列縦隊でベル・ユイミナまで行進。進めぇぇ」


 「了解」




 落雷や花火の音で騒ぎを聞きつけた都民たちが東門に集まり始めていた。

 国軍たちが。


 「道を開けろぉぉエルファサ女神様真教会近衛公安騎馬隊が通るぅぅ。道を開けろぉぉ」


 「兵隊さん。エルファサ女神様真教会近衛公安騎馬隊ってなにかね」


 「婆さんは噴水が稼働したのを知っているだろう」


 「わたしゃこの年で初めてお空のお姿を拝見できたよ。

 ビーナス女神様もいらっしゃった。

 虹も美しかったねぇ。お二人のお声も聞いたさ」


 「十年を経てエルファサ女神様が新たに教会を建立なされた。

 エルファサ女神様とアイファウスト王子殿下。教会を守護するお方達だ」


 「アイファウスト王子殿下がぁぁ「教会を建立ぅぅ?「エルファサ女神様にまた会えるのぉぉ」


 「ここの教会はどうなったんだね」


 「エルファサ女神様が偽物の教会と認定。

 北都。西都。南都の教会も犯罪組織で有った。

 故に国軍とエルファサ女神様真教会近衛公安騎馬隊が共闘して壊滅に至らしめた。

 大司教と偽っていたフイッシー・クッサスメルとその手下ヨガブットは処刑された」


 「やっぱり偽物だったんだね」


 「われわれも調査して、その資料をエルファサ女神様真教会近衛公安騎馬隊に提供。

 王城の偽教会はマウレス宰相様が制圧。

 他の教会の方も警察署長と王都のギルド長が向かって制圧した」


 「あんた達もやるときやるねぇ。偉いよ」


 「痛ぇぇぇ何すんのおばぁちゃん。俺曲がりなりにも兵隊だよ」


 「孫みたいなもんさ。やっぱ長生きはするもんだねぇ。涙が出てきたさ」


 「兵隊さん。教会は何処に在るんだい?」


 「現在は混乱を避けるため国王陛下と宰相様のみが知っていらっしゃる。

 エルファサ女神様の勅命だそうだ」


 「そりゃ仕方ねぇな」


 「このお方達はどちらへ向かっていらっしゃるのですか?」


 「国軍は噴水広場までの街道警備に当たっている」


 「みんなぁぁベル・ユイミナのケーキ屋よぉぉ


 「おぉぉぉ「あそこかぁ「知ってるぅぅ」


 「おぉぉい。混乱を起こすなよぉぉぉ」


 「王都国軍兵集合。これより元協会の調査に向かう」


 「じゃぁな。おばあちゃん」


 「あんたも壮健で頑張るんだよ。

 あたしより早くに死んだら承知しないからね」


 「ああ。ありがとう。おばあちゃんもいつまでも元気でな」


 国軍兵は後ろ手を振りながら集合場所に向かった。

 その背中を見ながら。


 「当然さね。

 やっと。やっと落ち着いた世界が来たんだ。

 これからも長生きしてやるさね。

 若者も早死にするんじゃないよ。いい時代を謳歌しなきゃならんからね。

 イサム陛下。サチ妃殿下。クラウス様。アイファウスト殿下。

 そしてエルファサ女神様。

 どうかあの優しき国軍の若者らに祝福を」

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