自称本物教会と未知の本物教会
東の門の前に騎乗整列したアイファウスト達。
ララブールの隣りのハルサーラが。
「ララヴール殿。心引き付けられる素晴らしい演説を聞かされましたね」
「なかなかのものでしたねぇ。優しく問いかける所から笑いを引き出し、力強く訴えかける。
そして人が嫌がる命令形の言葉は何処にも無かった。
わたくしも聞き入ってしまいました」
「ありゃ心酔しきっていますよ。私でも真相を知らずに困窮していたら心揺らぎますねぇ」
「ナルッシュ」
「ハルサーラ様。ナルッシュさんは間違ってはいませんよ。
そしてエルファサ女神様の神託以外、あの演説の内容も間違ってはいません。
皆さんが経験してきた真実であるからこそ、余計に引き付けられます。
あの小芝居で一気に本物になってしまいました。
しかし、わたくし達の方が今更感が出てきました。勿論、本物である証拠もこちらにはあります。
ですが、あの演説内容を信じた者達の心を動かすだけのインパクトと時間が足りません。
ヘッルズ村の教会の転移陣は破壊したので転移は出来ませんがどうしたものでしょうかぁ」
「確かにナルッシュの言う通りなのかもしれませんねぇ。
あの演説内容を考えた者は人心掌握に長けているのでしょうね。
国や行政が手を差し伸べなかった所を巧妙に突いて来ています。
嘘だろうが信じたくなる内容です」
「嘘も百回言われれば本当になる。嘘とも断言できない内容ですからねぇ。
さてさて」
演説を終えたフイッシーとヨガブットが瓦礫の上から降りて来て、ヘッルズ村へ転移で向かう準備に取り掛かったざわめく冒険者達の少し離れた前。
ヨガブットがフイッシーに耳打ちするように。
「いかがでしたかな。フイッシー・クッサスメル大司教」
「うむ。素晴らしい演説内容だ。ヨガブット副司教。
ほんの五分程で愚民共の心を掴んだ。全て嘘とは知らずに信じ込みよったわ。脳筋のバカ共が。
嘘も使いようだな。
偽造金貨を握りしめた、愚かな者達よ。何ひとつ本当のことは無いというのに」
「何処で誰が聞いているか判りません。お言葉を慎んだ方がよろしいかと」
一人の教会職員が駆け寄って一際大きな声で。
「ヨガブット副司教。報告します。ヘッルズ村へ転移が出来ません」
「どう言う事か?」
冒険者達は。
「「「「なんだってぇぇ?」」」」
東門前で騎乗するララブールに斥候中の妖精から連絡が来て。
「ルアッキーぃぃぃうっしゃぁぁ」
女性らしからぬガッツポーズ。シルクちゃんも驚いて振り向いた。
隣のハルサーラが。
「ララヴール殿?」
「あっうん。すみません。でも面白い会話が聞こえちゃいました」
「例の遠くの会話が聞こえるスキルですか?」
「はい。この魔石に録音迄できますよ。ほら」
{いかがでしたかな。フイッシー・クッサスメル大司教}
{うむ。素晴らしい演説内容だ。ヨガブット副司教。
ほんの五分程で愚民共の心を掴んだ。全て嘘とは知らずに信じ込みよったわ。脳筋のバカ共が。
嘘も使いようだな。偽造金貨を握りしめた、愚かな者達よ。何ひとつ本当のことは無いというのに}
{何処で誰が聞いているか判りません。お言葉を慎んだ方がよろしいかと}
{ヨガブット副司教。報告します。ヘッルズ村へ転移が出来ません}
{どう言う事か?}
{なんだってぇぇ?}
「あららぁ。イサム様のお言葉でしたか『壁に耳あり障子に目あり』でしたでしょうか?」
「はい。ヨガブット副司教が言っていたように、迂闊に言葉にしてはダメです」
ナルッシュが。
「お義母様。これ聞かされたら敵が味方になっちまいますよ。元からの教会側の兵士は別ですが」
「でしょうねぇ。動かぬ証拠となってしまいました」
スカッシュが。
「冒険者達のあの驚きの声がですか?」
「あれは重要でしょうね」
「セルファンさん。どうでした?」
隠蔽を使って調査に向かっていたセルファンが戻ってきて。
「凡そ三百が教会兵士。千が元冒険者。内二百はCランクで完全に教会に金を握られていますね。いわゆる用心棒です」
「その二百はこっちには?」
「無理です。甘い汁をたっぷり吸わされて脳が溶けていますよ」
「ありがとうございます。さてさて。お仕事の時間ですね」
「ようやく気付いてくれましたね。向こう側の国軍も痺れを切らしているでしょう」
ナルッシュが。
「俺は北都のジャックレイ署長と南都のエウマイアーギルド長。それに王城のマウレス宰相が寝ていないかが心配ですけどね」
セルファンが。
「もう一点報告です。西都はもぬけの殻でした」
「そうでしたか」
集会の方から東門前に教会側の男が一人来て。
「貴様らは何者かぁぁ」
「本物です」
ハルサーラ達が少し噴き出した。
ナルッシュが笑いを堪えつつ。
「いやいやララヴール様。面白いにも程ってもんが有りますよ」
「ああ、すみません。ナルッシュさん。
うっうん。姿勢正せぇぇ」
「「「「「はっ」」」」」
「我々は創世のエルファサ女神様の神託を直接受け東の地に大教会を建立しエルファサ女神様真教会とアイファウスト・カミミヤ王子殿下を守護する。
真教会近衛公安騎馬隊だ。わたくしは隊長のララヴール・ラトンだ。
親愛なる創世のエルファサ女神様を愚弄する不審な動きを察知し、ここに参った。中を検めさせてもらう」
「あの。すみません。もう一度言って頂く訳ににはいきませんか?長すぎて覚えきれないんですが」
「ああそうか。すまない。文字は読めるか?」
「はい。一応これでも教会の職員なので」
「これを渡す。名刺と言うものだ。
今言った全てが書かれている。フイッシー・クッサスメル大司教殿に見せると良い」
「ありがとうございます。うおぉぉすんげぇぇ。かっけぇぇ。俺も欲しいぃ」
「迅速に頼めるか?」
「はいっ。行ってきます。短距離転移」
「内から外へ出られぬように結界を張りました。念話も不可です」
「フイッシー・クッサスメル大司教報告いたします」
「今はそれどころではない」
「お聞きくださいっ」
「おっおう」
「東門前に騎馬兵隊凡そ五十名が整列して待機中です。こちらを預かって来ました。名刺と仰っていました」
「名刺だと。十年前になくなった代物だが今は羊皮紙で代用・・・・
「フイッシー・クッサスメル大司教。
これは再現できなくなった上質の厚紙。大きさも当時の物。しかも凸版印刷。版画ではありませぬ」
「ここに書かれておる真教会近衛公安騎馬隊 隊長ララヴール・ラトン殿はどのような風貌だ」
「全員グリーンの統一軍服で両肩に階級章。すみません。その名刺のデザインを模った紋章が付いています。
袖には隊長様が三本の金の縁縫いのような刺繍。他に二本と一本。
全員奇麗に背筋を伸ばし騎乗し整列しています。
馬は全て白馬。滅茶苦茶でかい馬が一頭。騎乗状態で凡そ四メートルは有ると思います」
「その近辺に警察や国軍は居たか」
「居りません」
「アイファウスト・カミミヤ王子殿下は居たか」
「十五歳ほどの黒目黒髪のお方は居りませんでした」
「ハルサーラとアルミスは居たか」
「お顔を知りません。
ですがエルファサ女神様を模った水晶のペンダントをお二人のお方が首から掛けておりました。これ位のでかいの。ほんのり光っているようにも見えました」
「他には」
「スカッシュさんは居ましたね」
「ハルサーラの三女のか」
「はい。服屋の店長です。
お奇麗なお方ですが姉妹の中では、まだご結婚をされていないお方です」
「知っておるわ。私も狙っておったか
「大司教?」
「おっふぉん。
スカッシュが単独で動くとは思えん。
と言う事はハルサーラも居るな」
「それだと不味いですぞ。本物が来たようです。組織として公安の文字は記することすら
「黙れ、ヨガブット。本物はここだ。思い知らせてやる。
確認に行く」
「「はっ」」




