第17話 一身三体
司馬章が魏匠と戦っている頃、孫操備は李光とともに王宮に到着した。李光は魏匠との戦闘で左の腕と指の骨を折ってしまったので、孫操備が彼の前に立って戦うことになった。
王宮門前で二人は門番の衛兵10名に遭遇した。
「なっ何者だ!貴様ら!」
門番たちは槍を構える。
「何って、楊国忠を倒しに来たんだよ」
孫操備があっさりと答えた。
「とっ…捕らえろ!」
もちろん、門番たちは突撃してきた。
「おい、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。コイツらが相手してくれるから」
「コイツら?」
その時、孫操備が三人に分身した。
「………"一身三体"」
「ふっ、増えた!?」
門番たちも李光も唖然としている。孫操備が三人もいるからだ。
「操備…なんだよその技」
「李光が見るのは初めてか。これが僕の"一身三体"。自分の保有するあらゆる身体能力や知能を3分した分身を2体生み出すんだ」
孫操備はペロッと舌を出した。
「ま、一人分の力は弱くなるけどね」
「それじゃ、どうするんだ」
不安がる李光の質問には答えず、孫操備は分身に伝えた。
「二人とも!なんとか引き寄せてくれー!」
二体の分身は無言で頷いた。
「さ、行くよ!」
孫操備は李光の手を掴み、門番たちをくぐり抜け、王宮に侵入した。門番たちは孫操備たちの方を振り向こうとしたが、後ろから彼の分身がビンタやタイキック、ひざカックン等で妨害し、門番たちを振り向かせた。
「くそッ!邪魔なんだよ……!」
分身を槍で突こうとしても避けられ、門番の一人は悔しがった。
(悪いね。完全な悪じゃない門番は、どうしても叩きのめせないや)
孫操備はそう心で呟きながら走った。
「てか、分身がやられたらどうなるんだ?」
「分身たちがやられても、自然消滅して僕の身体に還るだけだ。本体の僕に影響はない」
李光は不安を感じた。何故なら、分身がいる間は孫操備の力は3分の1に落ちているからだ。このまま次の敵に遭遇したら、右手しか使えない自分と弱くなった孫操備で上手く戦えそうにない。
「で?李光の怪我はどうするの?」
孫操備の質問で、李光はあの男のことを思い出した。
「実際に計画した訳ではないが…鄭回と合流したら直して貰うつもりだ」
あぁ、鄭回がいてくれたら。と、李光は思った。彼は戦力にはなりそうにないが、如何なる怪我にも対処できる。やはり、あのときに彼を引き止めて置くべきだったのだろうか。
「鄭回か…本当にここに来るのか心配だな…」
孫操備も彼のことを思い浮かべた。
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ちょうどその頃、魏匠と孟寧による長安襲撃で他の学者たちが慌てて逃げ出す中、鄭回は自身の思超書【血医学論】に自分の血で上書きした。
「よし、行くか」




