4、緋ノ寺隊
「炎さん……!ありがとうこざいます!」
蓮士が炎に話しかける。
「あんたが……炎さん?」
「話は聞いている。凪砂蓮也。お前はもう少し周りを見た方がいい」
なんだ、説教かよ。そう思ったが……
「まだわからんのか、俺の手を離せ」
「え……っっ!す、すいません……」
恥ずかしいじゃねぇか。気が付けば炎さんの手を握っていた。蓮士が凄い形相で見つめてくるが、今は気にしないでおこう。
「俺は怪我人を運ぶ。妃香音が負傷した。それと蓮士、お前は医療室で見てもらった後、報告するように」
「はい!炎さんも怪我、大丈夫ですか?」
よく見れば、炎さんの頬に切り傷があった。あんなに強そうなのに。そんだけ強い悪魔が沢山いるのか。
俺の知らないところで、沢山の悪魔が湧き上がってんのか。
考えただけで身震いする。
「俺は問題ない」
そう言いながら、炎さんは消えてった。
正しくは、瞬間移動した。だろうか。消える直前に真っ黒い穴が見えた気がしたが。
「俺らも行こう。炎さんのこととか聞きたいだろ?」
「あぁ、」
さっき来た道のりを辿り、ドアを開ける。鈴音が本を読んでいた。
「鈴……妃香音は……」
「大丈夫。命に別状はないよ。炎さんもかすり傷で大丈夫だったみたい。本当に炎さんって強いよね〜。私なら守りきれなかったよ」
「そ、そのさ、炎さん見たんだけど、なんで目の色違うのか?」
ずっと気になっていた。オッドアイなんて見たことないし、いたとしても相当な確率だろう。
「さぁね。炎さん自分のこと語るような人じゃないし。でも噂によれば炎さんの右目の灰色が本当の色みたいだけど」
謎が多い男。かっこいいな。
「それと、それと、鈴音と妃香音って……」
「あぁ、双子だよ。血は繋がってないけど、この世界では双子認定なんだ」
妃香音はまだ見たことはないが、鈴音と似ているのだろう。
「蓮也、俺達には家という概念が存在しない。好きなところで休むといい。あ、それか、俺の部屋にいろ。お前はまだ来たばっかりだ。色んなところに行かれては困る」
そう言われ、蓮士は入れに鍵を渡してくれた。
キーホルダーは、猫?黒猫だ。
「今日はもう解散。鈴も帰るといいぞ。今夜は長くなりそうだし」
「じゃあ、お言葉に甘えて!」
鈴音がドアを開け出ていく。気づけば蓮士もいなくなっていた。
「……場所教えて貰ってねぇんだけどぉぉぉぉ!?」
叫んでも誰にも声が届かなかった。
―――
あれから数分、俺は蓮士の部屋に行くために、ウロウロしていた。
同じような部屋が沢山あって、俺には見分けもつかない。
「くそぉ、何処だよ……何も言わずに行きやがって」
独り言を呟く。
誰かとぶつかってしまったみたいだ。
「す、すいません」
「あ、俺こそすみません!」
ペコペコ頭を下げ、じゃっと何処かに走って行こうとしている。
「あの!蓮士の部屋って……」
「あぁ、紗月司令官ですか。部屋ならすぐそこです」
男が指した先には、黒猫のネームプレートが掛かっている部屋があった。
『紗月』
明らかに蓮士の部屋だ。あいつ、黒猫が好きなのか。
「サンキューって、もういない……」
俺は黒猫のキーホルダーが付いた鍵を使って中に入る。
間取りは1LDKっぽい。几帳面が部屋全体に広がっている。
……俺ここで過ごすの?
なんだかイケナイようなことをしているみたいだ。
例えば、空き巣に入ったとか、無断で友達の家に入ったみたいな。
まぁ、好き勝手使っていいってことだろう。
俺はベットに入った。今日1日で沢山経験した。
炎さんが気になる。昔、どっかで……
思い出そうとしても頭にモヤがかかり思い出せない。
ゆっくり目を閉じる。疲れていたのか、直ぐに眠りについた。