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ルドベキアの天誅  作者: なつみかん
2/4

2、出会いと同意

ガバっとベットに寝ていた俺は起きた。

夢……流石に夢では無いか。


あの夜の出来事はまるで、誰かが作った御伽噺(おとぎばなし)の中にいるような気分だった。

朦朧としている意識の中にいた俺は、ふと時計を見る。

7時……か。

いつもなら遅刻ギリギリだが、今日は遅刻前に学校に行けそうだ。

歯を磨き、制服に着替え、バッグを持つ。

誰もいない部屋に向かって、

「行ってきます」

と言葉を放った。

―――


学校に着き、下駄箱に靴を入れ教室に向かう。

俺らのクラスは2階にあるから、階段を登らなければならない。

教室に入ると、既に高木が席に座っていた。

「あれ、蓮也今日早くね?」

「いつもより早く起きたんだよ。」

俺はさりげなく昨日のことを聞いた。


「昨日さ、夜どこにいた?」

「夜?家で勉強してたよ。あとはテレビとか?そんなこと聞いてどうしたんだ?」

「いや、なんでもない」

やはり、記憶が無いみたいだ。昨日の出来事は、夢だったのか?確か、俺の背中に翼があったような……


俺は考えることをやめた。これ以上考えても何も起こらないし。

―――


3時限目になる前になった。まだ11時ということに絶望を覚えながら、窓の外を見る。俺の席は窓側だから、授業もサボりやすい。

校門の前には木があるが……ん?


木の近くに誰かがいる。しかも、昨日見たような……

「蓮士……」

「どうした?」

「あ、次数学だったよな。俺具合悪いから早退したって言っといて」

「え、具合悪いのか?大丈夫?」

俺は荷物をバッグに入れて小走りになる。

「大丈夫じゃねぇよ!」

色々とな。俺は廊下を走って昇降口を出た。

―――


「おーい!蓮士ー!!」

手を振りながら近付いていく。

「って、昨日のやつじゃねぇか!」

「何してんだ?」

「……やることねぇから少し探索してんだよ。人間界に来るのが久々だし」

黒髪が風になびく。

なんだコイツ、いるだけで絵になるじゃねぇか。

なんだか腹が立ってきた。


「お前、そういえば天使の使命を授かったな」

「あぁ、その使命ってなんだ?それと、昨日のは夢なのか?」

夢?と蓮士が首を傾げた。


「お前馬鹿なのか?」

「馬鹿じゃねぇし!」

「それはどうでもいい。丁度いいところに来てくれた。俺はお前に聞きたいことが山積みだ」

「なんだよ……」

「お前は何故自分の才能を隠している」

「はぁ?才能?」

「お前の能力だよ。使命を授かったとき、お前は能力を使わずに悪魔を倒した。能力は常套句(じょうとうく)を言うと発動する。どうしてあの時言わなかった。天使になった瞬間に頭に常套句が浮かんでくるはずだ。」

一気に言われ頭がこんがらがる。


じょうとうく?俺はそんなの頭には浮かばなかった。ただ、自分の意思で動いただけだ。

常套句って、確か蓮士が言ったやつか?


「……惚けた顔しやがって。あと、お前は天使になった。だから任務もこなしてもらう。」

「俺は高校生だぞ?平日とか無理だ」

「お前は例外だから仕方がないだろ?俺らがいる天界に行くか現世に留まるかのどっちかだな。まぁ俺も今日帰らなければならないんだ。報告しないといけないし」

「はぁ……」

意味が分からない。こいつは何を言ってんだ?


すると、突然地響きが鳴った。

「っ!悪魔だ!行くぞ!」

「おい!俺蓮士みたいな服きてねぇけど、戦えるのか?」

「ぁぁぁぁ!そうだった!どうする俺!どうする!帰ったら天使の能力を持ってくるんだった!」

あーだこーだ1人でテンパっている蓮士の背後にズズズと迫ってくる。

「おい!後ろに悪魔が……」

「ぐぉぉぉぉぉぉ!!!」


喰われる。そう思った時、

「お前は黙ってろ!このゴミクズ!」

そう言って一振で悪魔を倒してしまったのだ。

「よし!決めた!俺の力をこの耳飾りに込める!お前は悪魔が来るか見張っててくれ!」


そう言って俺に刀を投げ渡した。そう言われても……

悪魔が空を飛んでいるのが見える。

(昨日も2体来てたよな……)

「ま、まずい!こっちに来る!!」

悪魔が突然急降下してくる。俺は刀をブンブン振り回す。

「蓮士!早くしてくれぇ!こっちに来る!」

蓮士はよし!といい耳飾りを引きちぎるようにして取り投げる。

「刀をよこせ!」

俺は言われた通りに刀を蓮士に投げる。

「その耳飾りを付けろ!お前は天使本来の力を手に入れるはずだ!」

「……っあぁ!」

急いで耳飾りを付ける。すると、昨日のように光が体を取り囲み、目を開けると、俺は蓮士と同じ服を着ていた。

「蓮也!行けーーー!!!」

俺は剣をおおきく振りながら悪魔に向かって走る。


「死ねぇぇぇ!!」

斬った!と思ったその瞬間、悪魔が雄叫びをあげた。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「っ!なんだコイツ!」

斬ったと思った悪魔が、どんどん再生していく。

傷口は完全に塞がってしまった。


「蓮士!なんかこいつ、おかしいぞ!」

「くそっ、こんな時に限って面倒なやつが現れる!そいつは堕天使だ!堕天使は斬っただけでは死なない!心臓が急所だ!心臓を狙うぞ!俺はやつを引き付ける!お前は心臓を狙ってくれ!」

そう言うと、蓮士は常套句を唱える。

「黒炎よ!燃え上がれ!」

刀はみるみるうちに黒い炎で包み込まれる。

「こっちだ!」

「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

蓮士が走っていく。堕天使は、停車している車や家に当たりながら蓮士を追い掛ける。


俺にやれるのか?

一瞬、迷いが脳裏を横切る。


だが、やるしか無い。蓮士は、俺に任せてくれた。


俺は、天使になった。天使としての責務を、全うしなければならないのか?


「っ!おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

剣を持ち直し、剣を突き刺す。が、そう簡単には上手くいかない。

「っ!くそ!」

かわされてしまったのだ。

「ったぁ!」

蓮士が刀で腕を斬り、斬った箇所が黒い炎で燃え上がる。

「今だ!蓮也!」

「今度こそ……!」

遂に、剣が堕天使の胸を貫いた。

「ギャァァァァ!」

悲鳴のような声が聞こえ、堕天使は燃え尽きていく。


「お、終わった……」

「……ありがとな」

「え?」

「天使になったばかりの奴は、恐怖で戦えず、殺される奴が多いんだ。だけど、蓮也は違った。お前は、強い。」

「そ、そこまで言うなよ……照れるだろ?」

感謝なんて言わなそうな奴に言われると、少し嬉しいのは気のせいか。


あの時、本当は足が引き攣った。だけど、蓮士がいたから、蓮士が共に戦ってくれたから。


「お前は実力がある。お前は俺らと一緒にくるべきだ。」

「行ったとして、この世界での俺はどうなる?」

「いなかったことになる」

「え?」

「俺もそうだ。この人間界にはそもそも存在しないことになっている。」

天使が存在している。ということは、人間には知られてはいけない。そして、普通は人間には見えない。と蓮士は話した。


「じゃあなんで雑誌に載ってたのと、俺は見えるんだ?」

「雑誌?俺が載ってたのか?」

「バッチリ乗ってたぜ?不審者だって」

「……多分、俺がこの世界にいすぎたせいだ。もう行かないと。お前も来るだろ?」

俺はこの世で産まれたことは消される。

それはどうなることかも分かっている。だが、


「……俺は、悪魔と戦った。悪魔から人間を守れるのは俺だ。高木を守れるのも俺だ。だから……」

「だから、一緒に行きたい。守りたい。命を守りたい」


俺は痛い程人間の命がどんだけ儚いか分かっている。

分かっているからこそ、守りたい。


「分かった。お前の意志を感じた。共に行こう。お前なら行くと言ってくれると思っていた」

にっと笑った蓮士は、俺の前にグーにした手を差し出す。

「……おう!」

覚悟を決め、グータッチをする。

俺らの物語は、始まったばかりだ。


ルドベキアの天誅(てんちゅう)を読んで頂き、ありがとうございます。

服について↓

服は黒く、左胸に紋章と一緒に短いリボンが付けられています。紋章とリボンについては今後説明が本文中に出てきます。

学ランのような生地ですが、動きやすい設計になっています。服は着る本人に合わせられるので、その人によって服の形は違ってきます。

例 ワイシャツのみ着ている等

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