第6話 束の間の幸せ
「「ハッピー バースデートゥーユー、ハッピー バースデイ トゥ ユー、ハッピー バースデイ ディア 真夜〜、ハッピー バースデイ トゥ ユー」」
パチパチパチ〜
歌い終わったと同時に母が拍手をする。
父も恥ずかしそうにしながら母につられて拍手をしている。
父さんが歌ってるのは、なんか面白いな…
前世で父がこんな風に歌っているのは見たことがなかったので、新鮮でくすぐったく感じる。
前世の記憶は全て残っているため、父の歌う姿は何度か見ているのだが、実際に体験するのは不思議な感じで面白く感じた。
今日で1年…か
圧倒的に短く感じたなぁ
寝てばかりいたんだから当然か…
冒頭の部分で分かるかもしれないが、今日は俺の1歳の誕生日だ。
起きている間は楽しく過ごし短く、寝る時は一瞬で時間が経ったため、この1年が異様に速く感じた。
問題なく1年を過ごせた…今年も大丈夫なんだろうな
転生してから1年、超常現象が起こったにも関わらず記憶通りで変わり映えはしなかった。
しかし、元気いっぱいすぎて問題が起きている訳だが…
記憶の通りだとやっぱり変だよね…
でも父さんと母さんは驚いてはいても不思議に思って無さそうなんだよね…
実は今、身体の成長が早すぎるという問題が起こっている。
例を挙げると、舌足らずではあるが五十音をはっきりと発音できたり、アルファベットを全て言え英語が話せたり、ハイハイするどころか二足歩行が出来たり、と1歳児の身体ではおかしな成長をしているのだ。
しかし両親は全くもっておかしく感じていない。
それどころか「おぉ〜!よく出来たね!」という言葉を「もっと出来るんでしょ?」みたいなニュアンスを大いに含んで言ってくるのだ。
ここは前世と全く同じ世界のはず…だよな…
父と母がカメラでパシャパシャと写真を楽しそうに撮っているのを見ると段々自信が無くなってくる。
「じゃあ今度は、ロウソクの火を消すのよ。フゥー!って息をふきかけて。できる?」
「なら俺はその場面をビデオで撮るか。」
うーん…1歳児には難しい気がするんだけどなぁ
言葉を理解してその動作をする。単純な話だが、子供には難しい話だろう。
見本があるのであれば真似をしてその動作をすることができるだろうが、火の着いたロウソクは1つしかなく母がやっているのは息を吹き掛ける動作のみ。
これでは息を吹くことは出来るがロウソクの火に向かって吹き掛けるのは出来ないだろう。
更に言えば、1歳児の肺活量でロウソクの火を消せるのかという問題が出てくる。
ものにもよるが、ロウソクの火を消すのは大人であっても手こずる場合があるため子供には矢張り難しいと言わざるを得ない。
まぁこれは全部普通の1歳児ならの話だ
俺なら何の問題もない。
フゥー!と大人と何ら変わりのない勢いでロウソクに息が吹き掛かる。
「おぉ〜!すごいすごい!よく出来ましたね〜♪♪」
「こっちもバッチリ撮れたぞ。」
気合いを入れた甲斐あって火はあっさりと消えた。
母が上機嫌な様子で褒めてくるので嬉しくなり、父も撮ったビデオを楽しそうに眺めているのを見て更に嬉しくなる。
それにより普通では出来ないことをやってもっと喜ばせたいと思ったが、流石に調子に乗りすぎだと自重する。
こんなにも家族らしいことがあったなんて前世では考えられない。というより覚えていなかった。
でもやっぱりおかしいよなこの身体…
出来たことは先程挙げた例の通りだが、実は実際にやっていないだけでできそうなことはもっとある。
走ることや跳ねること、字を綺麗に書くことなどで、どれも1歳児が出来るようなものではない。
「ケーキって赤ちゃんにも食べさせて良いのかしら?」
「1歳では駄目みたいだな。糖分や油分の多いものは消化出来ないらしい。」
ケーキかぁ…離乳食から離れてきているとは言え流石に無理でしょ
でもこの身体なら問題なく食べれそうなのが怖い…
繰り返すが、普通の1歳児には駄目だろうがこの身体は普通ではない。
思考能力、身体能力、器用さなど大人並の能力にまで成長しているこの身体であれば消化能力もまた大人並に上がっている可能性は全然あるだろう。
流石に食べないけどね…
でもこの身体がどんなもんなのかはいい加減知らないとだよなぁ…
「そうなのね…。なら仕方ないけどケーキは私たちで食べましょう。それじゃあ今度は、プレゼントね!何か用意した?」
「あぁ、もちろんだ。1歳にもなれば何か遊ぶものも必要だろうから、積み木とレゴブロックだ。」
おぉ〜これは嬉しい…赤ちゃんになってから暇を持て余してたんだよね…
いくら混乱していたり、寝てばかりいたりしていても起きている時間はある。
今まではただ寝転がっていたり、家の中を少し探検するだけで時間を潰すにしてもあまり楽しめなかったが、遊び道具があるなら暇な時間でも楽しんで過ごせるだろう。
「良いわね。私たちも一緒に遊べるというのが凄く良いわ!」
「ああ。ブロックもそれなりの量買ったから俺たちも問題なく遊べるぞ。大人でもはまる人はいるらしいから楽しめるだろうしな。美空からのプレゼントは無いのか?」
積み木もレゴも赤ちゃんの教育には良い物だよね
俺に教育はいらないかもだけど…父さんは良いの選ぶなぁ
これは母さんも期待できるかな?
前世で独り立ちしてからは自分の誕生日を祝うことはそうそうなく、祝ったとしてもケーキだけでプレゼントを貰うことなんてなかったため、今プレゼントを貰っていることにどうしても興奮を抑えきれなかった。
浮かれていることに気付いてはいるが期待を止められず、プレゼントは何だろうと予想しながら母の言葉を待つ。
「あなたには前に言っているわよ?」
「ん?何の話……そうか。そういえば言ってなかったな。とはいえ伝わるのか?」
え〜?前から話してたことかぁ…なんだろう…?
「まぁ、私たちの子だし。会話も出来るようになったんだから驚いてくれるわよ♪♪」
「あぁ。そういえば俺たちの息子は普通と一緒にしてはいけなかったな。」
ん?やっぱり俺は異常だったのか
まぁそうだよな、記憶の通りだったら
「そうそう。うちの子は天才なんだから!」
「はぁ、否定出来ないとなると俺は親バカなのか?いや、客観的に見ても天才だろうから判断は出来んな…」
まぁ天才って扱いになるのは普通だよね
しかし…父さんって親バカのけがあったんだ
個人的にはそんな気はしないけど…
「じゃあそろそろ発表するわね。」
「おう。」
おぉ〜ついに!
なんかものすごく楽しみになってきた!
「真夜ちゃんの誕生日プレゼントは〜〜「妹」です!」
おぉー!…お?
え、ぇぇぇええ!?
…え、妹?ホントに?
拝啓、前世の俺へ
妹が出来ました。




