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転生転移者の英雄譚  作者: 7氏
第1章 望んだ日々と願う未来
5/11

第4話 望外の幸運

今日は出産7ヶ月後の健診らしい。


内容は軽く身体やその動きを確かめたり、離乳食の話などだろう。

今回が初めてという訳ではないが今世の記憶にも前世の記憶にも寝ていたのか残っていない。

ただ何をするのかは前世で読んだ本に書いてあった。


健診に関して()問題無いだろう。すくすくと成長しているため検査に不安なんてないし、そのときにいろいろ触られることになることも少し気にするがもう慣れた。


では俺が何を気にしているかと言うと、相変わらず我が母の思考が読めないことだ。

そう、つまりは散歩と全く同じ不安を抱えていることである。


とはいえ、流石の母でも赤ちゃんを抱えて病院まで行くつもりではないようで、今回はベビーカーを使うみたいだ。

では何を問題視しているのか?

そんな疑問を持つことだろう。


確かにベビーカーを引いて病院に行くのは何の疑問も無い。

今日は父もいるから危険も少なくなるだろう。

ただ、家には自動車が存在している。父も母も免許証を持っている。


ここまで言えば、何が言いたいのか分かるだろうか?


そう、何故か母は家にある車を使わずにベビーカーだけで病院まで行こうと思っているのだ。


つまりは、車使えよ!なんで徒歩なんだよ!という事である。


しかし、言いたいことがあっても俺はまだ生後7ヶ月。

舌も発達しておらず声を出すことが出来ても、話すことは出来ない。


しかし、既に同じ状況で何回か健診を受けているため今更な話ではある。


もはや諦めの境地に至った俺は、大人しくベビーカーに揺られることにした。






❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖






住宅街を抜けると色んなものが見えてくる。

某牛丼チェーン店や某ファストフード店、レストランなど食事関連のものや、コンビニやスーパー、デパートなどのショッピング関連のもの、株式会社など本当に様々だ。


もちろん前世でも似たような光景を飽きるほど見ていたが、7ヶ月も経つとむしろ飽きはなくなるようだ。

もしかしたら超常現象に遭い沸いた不安が、この風景を見て安心したのかもしれない。


ただどことなく新鮮に感じられるのは、慣れ親しんだ光景の中の過去であるここに新しい建物――時制的には古い――があるからだろう。赤ちゃんであることも関係しているかもしれない。



色んなものに目移りしながらお出かけを楽しんでいると、一際大きな建物が目に入った。

高さはないがこの辺りでは最も大きいそれは、これから俺たちがお世話になる建物、病院だ。


それが見えると、お出かけが無事に終わった安心感と少しの寂しさが湧き上がる。

父と母も同様のようで、嬉しいような悲しいような顔で病院を見ている。


とはいえ、今回の目的地なのだから行かない選択肢はない。

病院の自動ドアを通り中へ入ると、暖かな空気が冷えた体を温め、その後に続くように独特な匂いが漂ってくる。



暖房があったかい…



まだ冬ではないが両親が冷えないようにと厚着を着せてくれていたが、顔などは冷えていたため暖房の温かさが気持ちいい。



最近は秋というのが存在せず暑いと思っていたらあっという間に寒くなる。

この寒暖差は赤ちゃんの体にはキツイです…



そんな冗談を考えていると急に瞼が重くなってくる。



はしゃぎすぎたかなぁ…



お出かけ自体は散歩よりも気を使わずに済んだが、見当たらしい光景を前に我慢出来なかったことが原因だろうと考える。

同時に、体力の無い自分の身体を悲しく思う。


最後に父が受付から戻って来るのを見て、温かく落ち着く空間で眠りについた。






❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖






ひんやりとした空気が顔を襲い、不快感から目を覚ます。

どうやら病院の外に出たようだ。


日は低くなっており、そろそろ夕方になるかといったところだ。



健診は終わったのか…いつの間に…



病院から出た理由を推測し、簡単な推理結果に愕然とする。


かなり今更な話だが、理性があるのに本能的な行動を抑えられないのはものすごく情けなく感じる。

前世が理性の化身みたいな人間であった分心の傷は大きい。


しかもまだまだ寝足りないとばかりに眠気が襲って来るのだからどうしようもない。


今回だってなにか不快なことがなかったら起きずにそのまま寝てたのだろうとウトウトしながら考えていると



「あっ!見て、宝くじ10億だって。すごいわね。」

「あぁ、だがあんなものは当たらないだろ。」



宝くじか…

そういえば、母さんは好きだっけ

ただ、逆に父さんはギャンブル性のあるものは嫌いなんだよなぁ



「え〜、分かんないじゃん。もしかしたら当たるかもしれないわよ?」

「どうせ1000円買って100円になって戻って来るだけだな。」



こういう所は父さんに似てるんだな、俺。

まぁ母さんだってギャンブルが好きな訳じゃなく娯楽として見てるんだろうけど



「10億は無理でも10万100万ぐらいは当たりそうじゃない?」

「当たってるやつはいるだろうが、1%にも届かないだろうな」



実際どれくらい居るんだろうな

興味無いから調べないけど…

というか…眠い……



「当たってる人が居るなら可能性はあるでしょ?買わなきゃ0%!ってことで買ってみましょ ♪」

「はぁ、もう何言っても買うことは決定なんだな…。まぁ良いけどあんまりたくさん買うなよ。」



さっき起きたばっかり…なの…に…



「はぁーい。じゃあ1人10枚でどう?」

「1人ってことは俺も買うのか?」

「えぇ」

「分かった。さっさと済ませよう」



1人10枚か……ん?言い方変な気が…



俺は少し嫌な予感を覚えるが、気の所為だと意識を手放そうとする。



「すみません。宝くじ買っても良いですか?」

「えぇ、どうぞ。いくつ買いますか?」

「30枚でお願いします。」

「30枚ですと九千円になります。お選びになりますか?」



「はい」と言うと母は振り向き、ベビーカーに乗っている俺を抱きかかえる。


「なぁ、ちょっと待て。なんで30枚頼んだんだ?」



ん〜…?



父(とついでに俺)の疑問に母は答えず



「3人で選びたいんですが良いですか?」

「え、えぇ…どうぞ…」



3人…?



「私はこれで!ほら、あなたも選んで」

「あ、あぁ。ではこれでお願いします。」

「じゃあ次は真夜ちゃんね。どれが良い〜?」



はぁ…やっぱりか…

嫌な予感が当たってしまったらしい。



「ん〜……これかな?それとも、これ?」

「なぁ、なんで真夜にも選ばせているんだ?」



ホントにね

しかしこの頃の母さんはかなりテンション高いんだなぁ



「だって〜、真夜ちゃんだけ仲間はずれにするのは可哀想じゃない?…そうだ!なんならみんなで勝負しましょうよ!」



ね?ね?と可愛いらしく父へアピールする母。

それに対し父は――



「はぁ〜…。もうこれに関してはお前の好きなようにやって良い。」

「じゃあ決まりね!」



諦めが早いよ父さん

まぁ母の押しの強さを俺以上に分かっているだろうから仕方ないんだろうけど



「あ!これなんてどう?違う?」



ガチで選ばせてるよこの人

寝てるから反応しない、なんて思わないのか



父と同様に母の奇行には諦めて対応するしかないかと頭痛を感じながら考える。

それに確かめたいこともあったし、今回は良い機会だろう。



適当でも良いんだけど…どうせなら当ててみたいしね



そうして前世の記憶を呼び出し当選番号を確認する。

とはいえ、宝くじセンターなんて全国にあるからドンピシャな番号がここにあるとはならないだろう。



まぁそれでも10万円ぐらいは当ててみたいなぁ

ズルかもしれないが今回は実験。

俺の記憶が正しいとは限らないわけだし



これは俺の記憶がどこまで正しいのかを探る良い機会だから利用するだけ、ズルじゃないズルじゃない。

そんなことを考えながらなるべく高いものを記憶と照合しながら選んで行く。


とは言っても場に出てているのは連番で10枚セットのものが10個あるだけ。


そこまで時間もかけたくない。適当に1万円が当たるものにしようかと考えながら、最後の1セットに目を向けると…



あっ、これって…

………

やばい…かなぁ…



何度も記憶と数字を照合し、間違えていない事を確かめる。



あぁ…これは…うーん……どうしよう

というかなんであるんだよ…10億…


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