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転生転移者の英雄譚  作者: 7氏
第1章 望んだ日々と願う未来
4/11

第3話 新鮮で不安な日常

あれから大体1ヶ月が経った


病院からは退院し、母は産褥期ではあるが問題なく過ごしている。


俺が夜泣きなどをして手を掛けさせるようなことがないようにしているのもあるが、母の回復は普通に比べてかなり早いと思う。

何せ、俺を抱き抱えながら散歩をしているのだ。それなりの距離を、それなりの時間をかけて。


俺の体重が今どれくらいかは分からないが、3~5kg程はあるだろう。

それを30分も抱えて散歩をするのは産後の人にとってはまあまあ辛いはずだ。

しかも1日おきにしているのだから大丈夫かと言いたい。


実際に辛いかどうかや他の人がどう感じるのかなんて俺には分からないが、ベビーカーがあるのに使わないのは何故なんだ。


正直に言うといつか落とすんじゃないかと毎回ハラハラしながら散歩するのはもう嫌だ。


死ぬのは嫌ではないが、どうしても本能的に死を恐怖してしまう。


母いわく「リハビリ」だそうだがベビーカーを引いて散歩するだけで十分だろうし、息子をリハビリ道具に使うのはどうなんだ。


しかも昨日は「少し筋肉痛になっちゃった」と朝起きて言っていたにも関わらず問題なく家事を熟し、ヨガやバランスボールを使った運動をしていて、少し頭痛がした。


「本当に産後1ヶ月か?」と。


転生の影響が両親にまで及んでいるのではないかと思ったが、父の方は特段変わったことはない。

むしろ俺と同じく母に対し、化け物を見たような目を向けていた。


そして今日は例の如く散歩の日だ。

安静にする、とはなにか不思議でならないが母は今日も「のんびりしましょうね」と言いながら俺を抱き抱え、家を出た。


因みに俺は、青と白の幼児服に身を包み横抱きにされている。

母は艶のある黒髪をストレートにし、白のガーリー服を着ている。長いまつ毛に整った目鼻立ち、健康的な桜色の唇をしており、全体的に幼い印象を受ける。


これで化粧は全くしていないのだからかなりの美人だろう。

父は渋くて厳つく、顔立ちも中の上から上の下と言ったところなんだがよくこんな美女と結婚出来たなと今更ながら不思議に思う。


前世の俺は母親似ではあったが、長く勉強をしていた影響で眉間に皺が寄り、最終的には父のような厳つい顔立ちとなった。


今世では勉強をする必要もないのでこのまま母親似の顔でいたいと思う。

厳つい顔が嫌という訳ではないが父と似た顔立ちというのはなんとなく嫌だ。

どうせ似るなら母の方が良い。



美空(みそら)さんこんにちは。今日も散歩してるんですね。体は大丈夫なんですか?」



話しかけて来たのは隣に住む白波瀬(しらはせ)(みお)さんだ。家の近所は一戸建ての住宅街となっていて、白波瀬家も家と同じ二階建ての一軒家だ。



「澪さんこんにちは。体は全然大丈夫です。むしろ、前よりも健康になったような気がします!」

「体調は回復しているんですね。良かったです!でも、せめてベビーカーは使った方が良いと思うんですが。落とさないか心配です。」



本当にその通りだと思います。どうやら俺の常識は間違っていなく、並行世界かと思っていたがそういう訳でも無さそうだ。

最初の散歩のときは使っていたのに2回目から使わないのはおかしい。



「大丈夫ですよ。もう慣れましたし。それに、こっちの方が真夜ちゃんを直に感じ取れるので良いんですよ。」

「え〜、慣れで済ますのは良くないと思うんですが…。」



白波瀬さんに強く同意する。

慣れてる時が1番危ないというのを知らないのか?勘弁してください…



「それよりも!大きくなってますね、お腹。今で4ヶ月目ですか?」

「えぇ…。今は4ヶ月目ですね。まだまだ出産は遠いですが、最近大きくなってきましたね。」



あぁ…流された…

まぁ母の押しの強さを知っている身からすれば期待はそもそもしてなかったが。

そしてこの人も常識がない側だったらしい。確認のために前世の記憶を見てみたが、この場面のからそう遠くない時期に出産を迎えていた。特に何事もなく無事に。



「まあ!女の子ですよね!楽しみです!真夜ちゃんと仲良くしてくれるでしょうか?」

「きっと仲良くなりますよ!お隣さんですし。もしかしたら恋人になるかもしれませんよ!」



この世の母親は全員が超人なのかと考えている間にどうやら俺の心配ごとの話は完全に流れてしまったらしい。

まぁ期待はしていなかったが(2回目)。

それに、この散歩で落ちないようにバランスをとっていたためか段々と首が座り始めていた。


早く成長出来るから良いのか…?


命の危険を感じているのであれば、その危機感から成長が早まるというのはありそうだ。

命の危険を感じることが良い事なのであればだが…



「それは良いですね!何でしたら、今からくっつけるために色々考えてみましょうか?」

「それは楽しそうですね!そうすると、何をするのが良いんでしょうか?お泊まり会とかどうです?」



女性が3人集まれば姦しいとは言うが、2人でも十分だなぁ…


日常的な会話の延長線上のことだとは思うが、こんなことを画策されていたとは、少し背筋が寒くなってくる。

もしかしたら、前世で起きたことのいくつかがこの井戸端会議から生まれたのかもしれない。


その後も他愛のない会話は続き、体感30分程で終了した。

散歩も家から徒歩10分程の場所にある公園に行き、少し休憩した後来た道をそのまま戻るのではなく、少し遠回りをして家に帰った。

散歩時間の合計としては1時間程。



家に帰ると、俺は直ぐにベットへ寝かされた。

母はしばらく俺の様子を見てくるので安心させるために寝たフリをすることにした。


この1ヶ月で俺の演技力はかなり上昇した気がする。

とはいえ、初めの方は両親共に初めての育児ということでどんな反応が正しいのかなんて分からなかったみたいだし、反応も変わらないから本当に演技力が上がっているのかは、俺の気分的な問題だ。


そもそも赤ちゃんの正確な振る舞いなんて分からないし、そんなことを考えながら動く赤ちゃんもいないだろう。


基本的に前世の記憶から離れないように突拍子も無いことをしなければどんな反応であっても良いと思う。


そんな事を考えていると、母は満足したのか家事をしに部屋を出ていった。

それと同時に眠気が襲ってきた。


意外と疲れていたのかもしれない。

楽な姿勢をとり、目を閉じた。



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