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転生転移者の英雄譚  作者: 7氏
第1章 望んだ日々と願う未来
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第9話 不安と成長

「やーい!お化け女〜」

「キモイんだよ!」

「こっち来んな!」



「うぅぅ…ぐすっ…うぅぅ…」



「またお前らか…いい加減やめろ!」


「うわっ!やべっ!」

「真夜が来たぞー!」

「逃げろー!」



「うぅぅ…ぐすっ…ぐすっ…」


「ったく…泣き虫だな、雪は。ほら、ティッシュ。」


「うぅぅ…ありがどう…」


「言い返すのが難しくても無視すれば良いんだぞ。あんな言葉。」


「うん…」




あれから何年か経って今俺は幼稚園に通っている。


妹の天道真昼(てんどうまひる)や隣の家に住む幼なじみの白波瀬雪(しらはせゆき)も同じ保育園だ。


そして今、幼なじみの雪は色素の薄い灰色の髪の所為で虐めに遭っている。


これは先天性白皮症や眼皮膚白皮症と呼ばれる所謂アルビノという病気が原因だ。

この病気により、普段から紫外線を浴びない様に気を付ける必要があるため、外で遊ぶことはおろか歩くだけでも制限がかかってしまっている。


とはいえ、子どもにそんなことを理解出来るはずもなく、灰色の髪に白い皮膚と細い身体からお化けを連想した子どもが普段から揶揄い続け、虐めの様な状況になってしまっていた。


特に灰色の髪は目立ってしまうため自然と周りの人の目を集めてしまっている。大人でもそうなのだから子どもの反応もお察しの通りという訳だ。



「まーた雪ちゃんいじめられてたの?ホント、アイツらも懲りないんだから!」

「まぁしょうがねーんじゃねーの?目立つんだから。」

「何!?将磨(しょうま)はアイツらの味方なの!?」

「そんなことねーって!」

「あっ!おにーちゃんだ!」



俺が雪を連れてもう2人の幼なじみのところへ行くと急に喧嘩が始まる。

そしてそれを全く気にせず俺の方へと駆け寄ってくる妹。


まぁいつもの光景だ。



「真昼、走るのはまだ危ないよ。抱きついて来てくれるのは嬉しいけど、怪我したらそれ以上に悲しいんだからな。分かった?」

「あい!」



今日も真昼は元気いっぱいで微笑ましいが、走っているのを見るととても心配になる。

過保護なのは分かっているが、心配になるのは変わらない。


これで転んだことがあるという訳ではないが、下手に危ない目に遭うと超能力が暴発する恐れがある。


元気良く返事をした真昼を見て、思わず頭を撫でながらも警戒は怠らない。

真昼を見ると気持ち良さそうに目を細めていた。



……可愛い。



十分に真昼の頭を撫で回した後、幼なじみ達の方へと振り向く。



「2人とももう止めろよ。うるさいぞ。」



喧嘩する程仲が良い、というのが本当なのかと疑うほどヒートアップしている2人へ静止の言葉をかける。



「だって将磨がアイツらの味方するんだよ!!」

「だから!してねーって!」



しかし収まりそうもない。


まぁいつもの事だ。



愛梨(あいり)ちゃん、将磨くん、私のことは良いから…仲良くしよ?」

「う…うん。ごめんね?雪ちゃん…」

「あぁ…ごめん…」



そして雪が収める。

いつもの事だ。



普段から雪と付き合っていて、雪の脆さを知っている俺たちは雪に強く当たることはできない。

今回は特に2人とも雪のことを心配して喧嘩してた訳だからなおさらだ。


当人が良いって言えば収まるのは当然

だが――



「雪は自分を悪く言わない。それだと俺たちまで悪い様に思えるだろ?」

「う…うん…分かった…」



うーん…子どもに伝わる様に言うのは難しいな

伝わる語彙が分からないから中途半端な日本語になる…



「そうよ!別に雪ちゃんは悪くないんだから!」

「まぁ、そうだなー。悪いのは悪口言ってる奴なわけだし。



お?フィーリングで意外と伝わるもんなんだな

こいつらの頭が良いだけかもしれないが…



「お前ら2人もあまり熱くなるなよ。お前らの所為で雪が虐められるかもしれないんだから。」

「「え?」」



これは伝わらないのか…

頭が良いって訳ではなさそうだな



「ま、よく考えて行動しろってこと。」

「うー…分かった…」

「あぁ気をつける」



聞き分けが良いのは好評価だ。

まあこの2人は俺と違って優秀だったから普通に育てば問題ないだろう。



「よし!じゃあ遊ぶか!」

「おー!」



こうして幼稚園の日々は過ぎて行った。






❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖






「真夜くん、真昼ちゃん、雪ちゃん、将磨くん、愛梨ちゃんお母さんが来ましたよ〜」



夕暮れ時、幼稚園の先生が迎えが来たことを知らせに来た。



「えぇー…もうそんな時間〜?まだ遊びた〜い。」



トランプのババ抜きで今日はまだ1勝もしていない愛梨がまだ遊び足りないと文句を言う。



「愛梨、あんまり先生を困らせるなよ。また明日遊べるんだから。」

「そうだよ愛梨ちゃん…また明日遊ぼう…ね?」



愛梨が遊び足りないと言うのはそこそこあることなので先生が困ることはないだろうが一応注意はしておく。



「うぅ…分かった…」



愛梨も言っていることは本当なのだろうが、本気で文句を言うつもりはなかったのだろう。直ぐに帰りの支度に着いた。



また明日、か

いつも何気なしに言ってるけど…良い言葉だな…



前世でそう言ったのはそれこそ今と同じぐらいの年の時だけだ。

だからこそこの言葉がどれだけ貴重なのかがよく分かる。

特に、突然死ぬことになった俺は。


まあ後悔どころか死ねて良かったと思ってた訳だけど。



「おかあさ〜ん!」



母のことを呼びながら真昼が母に駆け寄って抱き着く。

どうやら今の真昼は走って抱き着くのがブームみたいだ。



「真昼ちゃん、今日も楽しかった?」

「うん!」



真昼はまだまだ元気だなぁ…



真昼に遅れて俺も母の元へ行く。



「真夜ちゃんも楽しかった?」

「うん。楽しかったよ。」



身体や見た目以外はほとんど大人と変わらない俺でも実際、本当に楽しめている。

最初の頃は子どもの面倒を見るだけ、と思っていたのが今では一緒になって楽しんでいるのだから人間の適応能力は怖い。本気で楽しもうとすれば何でも楽しめるのだから。



前世の俺はなんで楽しめなかったのか…



「雪ちゃんも愛梨ちゃんも将磨くんも家の子といつも遊んでくれてありがとうね。」

「ううん…私も…楽しいから」

「私も!私もー!」

「俺もだ!」



どうやらみんなも楽しめているみたいだ。



まぁ楽しくなかったら言ってるだろうしね

このくらいの年齢の子だったら自分の感情に素直なはず



将磨と愛梨も喧嘩ばかりしているが仲は1番と言える程に良い。もっと言えば、なんだかんだで譲りあってもいるため素直に楽しくないと言えばみんな他のことで遊ぶことにするだろう。



「それに今日の真夜は凄かったんだ!ずっと誰もボールを真夜から取れなかったんだぜ!みんなで真夜からボールを取るのすっげー楽しかった!」

「確かに!凄かったよね!楽しかったし!」

「うん…真夜くんかっこよかった…」



確かにあれは自分でも凄いと思ったな

あそこまで取られないなんて前世では考えられなかった

しかもまだまだ余裕はあったわけだし



俺の通っている幼稚園では年長のほとんどがサッカーを遊び時間にしている。

そこでいつも通り試合をやった訳だが、今日は俺がドリブルで何人か躱してみようと思った結果、永遠と躱し続けられてしまうという事が起こってしまった。


結局、途中から味方さえも俺のボールを取ろうとし、30人以上が集まって来るという事態になり、適当なところで止めることにしたのだ。



まだ子供の動きが遅いからどうすれば躱せるのかを考える時間があったんだよな…



人数が多かったとは言え、一人一人どうすれば対処出来るのかを考える時間があれば余裕な話ではあった。

周りの状況、自分の状態、ボールの位置などを考えた対処方法で動かせば良いだけだったため、身体の運動と言うよりは脳の運動に近かった。

実際に身体は一切疲れを感じなかったが、脳は久しぶりに深く思考出来ていたと思う。

正直、これぐらいであれば無限に続けられるだろう。


一瞬、前世の俺は出来たのかと思ったが、多少疲労するくらいで意外と出来たんだろうと考えることにした。


やったら出来た、なんてことは世の中意外とあるものだ。

前世の俺もそういった経験はかなりしていた。

それに、ただのおっさんが大勢の子どもとサッカーをする、なんて経験する方が稀だろう。



「そう!なら真夜ちゃんは将来プロサッカー選手ね!」

「おぉ〜!おにいちゃんかっこいい!」

「うん、ありがとう。なれそうならなってみるよ。」



なれないだろうけど



「うーん…?サッカーは嫌なの?なら他のスポーツやってみる?」

「ううん、サッカーが嫌な訳じゃないよ。でも他のスポーツもやってみたいかな。」



我ながら夢のない話だが、一流になるのはどんなものであっても難しいだろう。



「そう!なら、小学校に行ったら色んなスポーツをやりましょうね!」

「良いなー…俺もやりたい!良い?お母さん。」

「大丈夫よ!真夜くんと一緒に色んなことをやろうね。」



うーん…なんか流れで決まっちゃったな…

まぁ俺もやりたくないと言えば嘘になるけど



やりたいこと。夢あふれる子どもなら当然持っているもの。俺にはそれがない。大人になって余裕が出来てからずっと探して結局見つけられなかったもの。



果たして俺は成長出来るのだろうか…



街灯が灯り始めた街の中を俺はみんなと一緒に歩いて家へと帰った。

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