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五話 少し見ないうちに成長するのは若者の特権である

 

 福笑近くの公園。


 桜も満開になり、本格的な春が訪れた。


 今日は入学式である


 叶のスマホに一件のメッセージが入る。


 恵:着いたよ!

  叶:今行く


 メッセージを返信し、玄関を出て、エレベーターに乗る。

 1Fというボタンを押し、ドアを閉める。


 叶の住んでいる場所は最上階に位置するため、階段を使うとなると少しきつい。

 こんなところに住めるのも、父が転勤して管理職になってくれたからだ。


 にしても過保護すぎる、叶はつくづく実感していた。


 ドアが開くとともに一歩踏み出す。


 エントランスの自動ドアを越え、外に出ると一人の少女がいた。


 艶のある黒髪のミディアムボブ。

 引き締まりつつも柔らかさを忘れない頬

 誰もを引き付ける綺麗な瞳。

 通った鼻筋と綺麗な唇。


 美人の代名詞のような少女だった。


「おはよう、恵」

 叶があいさつすると

「おはよう」

 彼女は笑顔のおまけ付きで返してきた。


「恵、制服すごい似合ってる」

「ありがとう。君も似合ってるよ」


 叶との会話に慣れてきた恵は照れて目も見れなくなってしまう癖はなくなった。


 (やった、叶に褒めてもらった!)

 恵は表にはあまり出さなかったものの、内心はかなり喜んでいた。

 それは叶も同じだ。 


 だが叶は恵の言ってほしい言葉を思い出してちょっと後悔した。


 (しまった、可愛いって言うべきだったか。ちゃんと伝えないとな)


 恵の場合は言わなかったというよりも、言えなかったらしい。


(かっこいいって言いたかったのに……)


 二人は今日から同じ高校に通う。


 これは偶然ではなく、昔、中学の話をした際に高校のことも話していたのだ。


 叶にとっては賭けだったがどうやら間違いではなかったらしい。


 都立鶴羽高校。

 偏差値は平均の少し上で、ここら辺ではギリギリ進学校の部類に入る。

 叶の家から徒歩十五分、恵の家から徒歩二十分の場所に位置する高校だ。


「えっと、クラスは……あ、違うっぽいな」

 先に見つけた叶が言う。


「ぇ……ま、まあしょうがないよ、六クラスあるもん。君は何組?」

「B組だな。ちなみに恵は……隣のC組だな」


「直談判してこようかな……」

 恵の呟きを叶はうまく聞き取れなかった。


「ん?なんて?」

「君も友達出来るといいねって言ったの」

「恵も頑張れよ」

「うん、じゃあ私こっちだから」

「じゃあな」


「あ、待って」

 お互いの教室に行こうとしたが、恵が呼び止めた。


「ん?]

「……今日一緒に帰るから……あと君に拒否権ないから」

「いやどっちにしろ拒否するわけないだろ、先に終わった方を待つでいいか?」

 叶がそういうと恵はこくんと頷いた。


 恵は叶が教室に入ったのを見た後、小さくガッツポーズをした。


 教室に入り、叶は自分の席を探す。一番右の後ろから二番目だ。

 序盤にしてはなかなか良いポジションだと思う。


 と、叶の後ろの席に一人の男子が本を読み、座っていた。

 髪から除く眼光は少なく、鋭いとも、キリっとしているとも取れる目、ストレート髪質のウルフカット。

 普通の人なら自分からは話しかけずらい見た目だが、叶は気軽に話しかけることができる。


「久しぶり、よる君」

 叶が笑顔で声をかけると世瑠と呼ばれる男子がゆっくりと目を叶の方に向ける。


 辺りに緊張感が走り、それには周りの人もなんとなく気づいているようだった。

「何?喧嘩?」

「なんか前の席の人は笑顔だけど後ろの人はにらんでるように見えるよ」

「もしかして恋が始まるのか!?」


 いろいろな言葉に交じって一つあり得ない解釈があったが、それはアナウンスと共に徐々に消えていき、意識は完全に向けられなくなった。


 それと同時に彼は口を開く。

「え、もしかしてかなさん?」

 低く、それでも優しい声だった。

「そうだよ……一瞬本当に同姓同名の知らない人に話しかけたかと思ったよ」

「流石に俺の名前が()()()とは思えません」

 世瑠は小さく笑う。


 座席表には解輪晴世瑠(ときわばよる)と書いてある。

 彼は叶の小学生時代の友達であり、叶は学校では、世瑠、そしてもう一人の女子と一緒にいた。


「お久しぶりです。元気そうでほんと何よりですよ。やばい、まじでうれしい」


 何故に敬語、と思うかもしれないがこれが恵と叶の関係である。

 おそらく叶がこの世で最も信頼できる人間だろう。


 世瑠は何についても叶を尊敬する。

 それは昔、叶が世瑠を助けたことから始まったのだが、その話は少々長いのでまたの機会にしておこう。


「相変わらずかっこいいね、よるくんは。髪型もウルフになってるし」

「いえいえ、こちらのセリフです。カナさんも本当にかっこよくなりましたね。あ、もちろん今までもかっこよかったですよ?更にって意味です。あとなぜかカナさんが、この髪形の人をよく目で追ってたのでこの髪型にしました」


「まじか、俺追ってた?」

「はい。老若男女問わず」

「なんでだろう」


 それは誰かさんと同じ髪型だったからなのだが、叶は気づけてないらしい。


「そういえば、椿とはうまくやってる?」

「はい。まあ、あいつ鈍感なので全然気づいてくれませんが。この高校に入ったので多分会えると思いますよ」

(それはよるくんもなんだけどね)

 心の中でツッコミを入れる。

「この高校なんだ。クラスは別々になっちゃったか、残念」

「はい。去年まではずっと一緒だったんですが。」




 名前が出た、椿という女子は学校で叶と世瑠がよく一緒にいた子である。


 面倒見がよくお姉さん気質なのだが、身長が低かったためうまく年齢のバランスがとれていた。

 世瑠と椿は小学校から中学校までずっと同じクラスで、世瑠が馴染めてたのはおそらく椿のおかげだ。


 もちろんそんな椿のことを世瑠は好きだった。


 だが、椿もなんやかんやで世瑠に助けられていた。


 そのため椿も世瑠が好きなのだが、二人が両肩思いだということは叶しか知らないだろう。


「それでカナさんはあの子に会えたんですか」

 あの子とは恵のことだ。


 叶は恵のことを時々世瑠に話していた。

 もちろん恋愛感情があるということも。


 世瑠は毎回真剣に聞き、応援してくれていた。

 もし誰にも言えず、一人で抱え込んでいたらおそらく叶は恵を避けてしまっていただろう。

 それぐらい、あの時期の叶にとって世瑠は重要な存在だった。


「一応再会したんだけど……ちょっとね」


 叶は大雑把(おおざっぱ)な内容を伝えた。


「なるほど……それは少し複雑なことになりましたね。でもそれハッピーエンド確定じゃないですか」

「そうだね、それが唯一の救いかな」


 と、アナウンスが鳴る。


 『一年生の皆さんは体育館履きを持ち、体育館への移動を始めてください』


 二人は立ち上がり体育館履きを持つと、


「行きましょうか」

「そうだね。話はまた今度」


 体育館に向かった。


 ───放課後


 正直のとこ、叶にはあまり入学式の記憶がなかった。

 入場時には綺麗に歩き、指定された椅子に座る。

 名前を呼ばれたら返事をし、立ち上がる。

 校長の話……これは言うまでもないだろう。


 記憶がないのにも関わらず、退場し終えた途端、どっと疲れが降りかかってきた。


「カナさん、この後用事ありますか?」

「一応例の子と変える約束してるんだけど、よるくんも来る?」

「そんなことしたら恨まれちゃいますよ、俺。でも挨拶ぐらいはしときたいので行きます」


 教室を出ると恵が待っていた。

 それも見覚えのある少女と一緒に。


「な、なあ、あの二人めっちゃ可愛くね?」

「マジじゃん、やば!アイドルかよ」


 まあ、こんなこと言われるのも仕方がないだろう。


 恵も、恵と一緒にいる少女も誰が見ても一目で美人だとわかるくらいだ。


 すると叶と、少女の目が合った。


 茶色がかった髪色のロングヘア。茶色の大きな瞳。通った鼻と綺麗な唇。

 身長は低く、恵と並んでいても10センチは差がありそうだ。

 つまり150センチぐらいだろう。

 恵もそれなりに女性らしい体つきだが、その少女はそれを越えていた。

 大人と子供のいいとこどりをしたような美少女だった。


 その美少女は叶に微笑(ほほえ)みかけながら言う。


「久しぶりだね、叶」

















 


叶と少女の関係は?!





読了ありがとうございました!

少しでも「面白い!」「続きを読みたい!」「主殿、更新ファイト!」



と思ってくださたならブックマーク、広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれると嬉しいです。


皆さんの意見が作品をより良いものへと変えるので感想のほうもおまちしています。

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