王太子殿下がお見舞いですって!
ジークフリド王太子殿下からお手紙ーーーー
アディル嬢
突然だが今すぐ見舞いに伺う
ジークフリド
みじかっ!
今すぐってどう言う事?
この手紙アディルに対する〝好き〟の微塵も感じないわ。
まぁ今までのアディルの行いからすれば仕方の無い事だわ。
傍に居るカインがニコニコしながら私を見上げている。
「カイン、ごめんなさいね。直ぐにでも此方に来られるみたいだわ、又後で遊びましょうね。」
カインは泣きはしなかったが涙目になり残念そうだった。
その時扉をノックする音がした。
「アディルお嬢様、ジークフリド王太子殿下がお越しです。」とメイドから声がかかった。
早っ!今手紙を読んだ所よ、早馬を出して直ぐ自分も来たって事?
何だか扉の向こうが騒がしい?
「どうなさったの?」少し扉を開けた途端ガバッと扉が開きそこにはジークフリド王太子殿下がいた。
早っ!実に早い。
「アディル、起き上がれるようになって良かった。君の様子を見に来たんだよ。」
いやだからって直ぐ過ぎるでしょ!
イケメンだから、主人公だから、王子様だから何しても良いって言うの!
じぶん勝って過ぎて、何だろうめっちゃくちゃ腹が立つ。
こんな奴がゲームの男主人公なの?
「あの失礼ではございますが、貴方様がジークフリド王太子殿下でしょうか?」
「そうだが、私の顔も忘れてしまったのか!」
「はいーーーー、申し訳ありませんが念の為確認させて頂きました。」再度申し訳ありませんと頭を下げた。
「よい、私のことも忘れてしまったのか、信じられない。」
私は信じられない様子のジークフリド様を客椅子に案内した。
「どうぞお掛け下さい。」私は近くにいた侍女にお茶の用意を促した。侍女は静かに退出した。
よく見ると長椅子にカインがいた。
「カインごめんなさいね。ジークフリド王太子殿下が来られたので又後で貴方のお部屋へ行くわ。」頭を撫でるとカインは嬉しそうに「うん」と頷いて部屋を後にした。
「アディル、様子を見せて貰った。元気になった様で良かった。」
本当にそう思っているのかしら?私は邪魔な悪役令嬢アディルなのにーーーーゲーム設定だと分かっている私は王子のことを胡散臭いと思っていた。
「はい、目覚めてから一週間も経ちますし元気にもなります。」
嫌味の一撃!
この一週間何の連絡も寄こさなかったのに何を思ったこの王子!
「それで今日は何をしにーーーー、只のお見舞いだけではありませんよね。」
「嫌、見舞いだ。アディル嬢の様子を確認したかったのだ。」
記憶障害の確認に来たって所ね。
「そうでしたがか、頭痛は治まりましたが記憶は曖昧です。医者も記憶障害でいつ前回するか不明です。ジークフリド王太子殿下にも会って直ぐには分かりませんでした。」
噓だけど。
私は記憶障害を押し通し婚約解消を推し進めるわ!私やメルフェル侯爵家の為にもね!
ジークフリド様はそうかと頷き納得されたようだ。
「私、思うのです。」私はじっとジークフリド様を見つめる。
「このような状態の私では、ジークフリド王太子殿下の王太子妃は難しいと考えています。」
言ったわ!言ってやったわ!
どうだ!ジークフリド。