悪役令嬢の安心
「嘘ぉぉぉぉーーーーー。」
絶叫するのも当たり前、「何故って?」そりゃ鏡の中の私を見れば一目瞭然、目の前には青銀色の髪に金色の瞳、目がつり上がった猫目にぷっくりしたチェリーのような脣。
陶磁器のような輝く白い肌。
どう見ても、あれやん!
あれ!
昨日購入した、『プラトニックラバーズ』の悪役令嬢 アディル・メルフェル侯爵令嬢。
今の私は、どう見ても今野弥生じゃあ無い!
弥生は黒髪黒目のザ・日本人でこんな美人じゃないんだよ。
「なんでーーーーーどうしてーーーーーこうなった!」
私ーーーーーもしかして死んだの?酷い頭痛で意識がぶっ飛んだようなーーーーー?
まさか、あのまま会社の事務所で死んでしまったの?
だからって『プラトニックラバーズ』の悪役令嬢に転生するかしら?
そりゃ~確かに『プラトニックラバーズ』のアディルに憧れはあったわよ。
死に際の念が、アディルに転生したの?
ーーーーー本当になんで?
アディル?弥生には意味が分からなかった。
そう考えていると、部屋のドアがノックも無しに開いたのだ。
『何事、』と弥生はビクッとした!
そこには青銀の髪に青い瞳のイケメン男性が立っていた。
「アディル!起きて大丈夫なのか?パパは心配したよ。」そう言いながら、自分をパパと呼ぶ男性が近づき、弥生を抱きしめようとする。
「いや、ちょっと待って下さい。パパって?私のでしょうか?あの、ーーーーー貴方は?どちら様でしょうか?」
弥生は思わず、イケメンパパとやらの抱擁を拒んだ。
イケメンパパはびっくりしたように目を見開き、傍に居た老執事に声を掛けた。
「アディルの様子がおかしい、控えているドクターイクシィーを呼んでくれ!」
イケメンパパは抱擁を拒んだアディル(弥生)に悲しそうな顔をした。
「アディルどうしたと言うんだ?アディルがパパを拒むなんて?」
『いや、いくらイケメンパパでもアディルはもう17,8歳でしょうが、親と抱擁なんかしないから!』弥生は心の中で叫んだ!
「あぁ、きっと頭を押さえて倒れたからその後遺症か?それは行けない、早くベッドで横になろう!」そう言いイケメンパパはアディル(弥生)をひょいと抱き上げお姫様抱っこをした。
がっしりとした腕や胸がアディル(弥生)を包む。
いやー、イケメンーーーーーイケメンが私を抱き上げてるーーーーー!
いや~、アディルちゃんのパパだけど、今のアディルちゃんは弥生なんだよ、男性に免疫ないのよ。
いや~、恥ずかしい!でも嬉しい~!
弥生はイケメンパパに萌えていた。
イケメンパパにベッドに下ろされ、横たわる。
そうこうしていると、ドクターイクシィーが老従僕の案内で部屋に入って来た。
見立てて貰ったが、イクシィー先生いわくどこも外傷がなく頭痛の原因としては、脳腫瘍、脳梗塞、血栓ーーーーー
だが普通に起き上がり手足の麻痺も無いがーーーーー「そうですね、記憶障害です。」一時記憶を無くしてしまっているだろうとイクシィー先生の見解だった。
『本当は違うしーーーーー、弥生がアディルちゃんになったのだからーーーーー。』
「アディルの記憶は戻るのだろうか?」イケメンパパはイクシィー先生に問う。
「分かりません、直ぐに戻るかも知れないがーーーーー、今のところは様子を見ましょうーーーーー」と頭痛薬として痛み止めや胃薬を処方して帰られた。
「アディルが記憶障害だなんてーーーーー」燃えるような赤い髪に金色の瞳の美人がイケメンパパの横に立っていた。
髪の色が違うだけのアディルに似た美人だ。
「大丈夫、徐々に思い出すように私達でアディルをフォローしよう、いいね。」とイケメンパパは美人ママにそう言った。
『私、記憶障害って事になってしまったわ。イケメンパパと美人ママには心配させて申し訳ないけどーーーーー他の人と辻褄が合わなくてもこれで安心だわ。』と安心してしまい、アディル(弥生)は眠りについてしまった。