【ドラマを魅せる】
翌日、池田さんからメールが届く。十二人に一斉送信されたそれには、五分後である二十一時に特設サイト上に一つの動画が上がるから各自で確認してほしいと記載されていた。
パソコンを起動し、キッチンに降りる。ケトルに水を入れてスイッチを押し、待っている間にマグカップにココアの粉を入れる。……カチッと音が鳴り時計に目をやると二十一時を数分過ぎたことを知らせる少し右にズレた長針。お湯を注いでティースプーンをカップに突っ込みかき混ぜながら自室に戻る。
テーブルの上に置かれたノートパソコン。その横にココアをスタンバイさせて特設サイトへアクセスした。トップには今までなかった動画が一つ。再生ボタンを、押した。
こちらをご覧の皆さんこんにちは、リンクです。最終審査に挑んだ十二人もこんにちは。いきなりですがこの動画上でこのオーディションの合格者をお伝えしたいと思います。ちなみに、候補者もこの動画で初めて結果を知りますので、応援してくださる皆さんと心持ちはきっと一緒です。では、いいですか~。この発表、する側を何度も経験しているんですけど何度やっても慣れないです。まあ、皆さんのほうが緊張していることでしょうけど。
それではまず一人目。……函美咲。このオーディションを通して彼女が一番意図を理解してくれていたなあって。あと世界人気が凄くてね。外交官だよ。彼女にはこのグループのリーダーを任せたいと思います。沢山ドラマ、魅せてくださいね。
そして二人目。……松前香織。素晴らしいステージ構成だったな~。演出上手だね。一番クリエイティブな子だった気がする。あと僕がプロデュースしてきた中に女優ってのがいなかったから面白いなと思って選びました。
で、三人目ですね。……森清香。歌唱力が圧倒的だったね。自分でミックスとかもできるなんて選ばない手はないよ。困ったら僕プロデュースの他のグループのミックスとか動画製作とかもお願いできたらな~なんて。そんな魂胆もあったりして。
はい、四人目は、……八雲百合子。誤解を恐れずに言うよ、顔とスタイルが才能すぎる。彼女もねそれを謙遜したりしないで誇って、振り翳して活動してほしいです。
そして、五人目。……乙部有希。彼女、凄い人気だったね~。アイドルとは何たるかを全身で理解した振る舞いしてたね。アイドルオーディションとしてのアイドル枠としての採用です。
そして、最後になります。
六人目は……南茅乃。彼女はこの子が選ばれたらドラマチックだなっていう言わばシンデレラ枠。あんな物騒な騒動に巻き込まれて本当に不憫だったなと思う。でも見事な快進撃を見せてくれたな。ありがとう。
さて、選んだのはこの六人。六人にはドラマチックアンソロジーというグループ名を与えます。まあ、誰を選んで誰を落としても賛否はあると思いますが、不正は一切ありませんので!
僕が全力でプロデュースするこの六人が紡ぐドラマを、これからも是非見届けてやってください。
それでは、バイバイ。
(完)
お読みいただきありがとうございました。
こちらはドラマチックアンソロジーシリーズの函美咲編としてUSBに眠っていたものでした。いつか他の子目線で続編を残せたらいいな、と思っております。
(今は思っているだけで起承転結で言うところの起の部分しか存在しないけどね)