始まり
メインで書いているやつを改稿していたら、フッと頭に浮かんだので書きました。
【フリー・ミソロジー・オンライン】
それは、突如としてネット界隈を騒つかせた新世代のゲームの名称です。
【クリエイト】と呼ばれる運営に発売されたこのフルダイブ型のゲームは、【クリエイト】創設者【赤嶺徹】とその他運営メンバーの悪ノリと元来持ち合わせていたその天才性によって開発されたそうで、【赤嶺徹】曰く、『現実にできる事は確実にできる。その上で、現実以上の事もできる。……魔法とか。』なのだとか。
さて、何故わたくしが、そんな事を考えているかですが……
「ねーねー、綾っちもFMOやろーよー。」
と、わたくし……【黒木綾音】が、友人である【波河静音】に現在進行形で言われているからに、他なりません。
ちなみに今は、通っている高校の休み時間ですね。
「ねー、やろぉーよー。一緒に人外ロールしよー?」
ふむ。
人外ロールですか。
というか、肩を掴んでブンブン揺さぶるのを止めてくださいな。
あー、視界がガクガクと……。
「ゲーム機器は、あたしが出すからさ、やろー?」
むむ、ゲーム機器を貰えるというのなら……。
「……分かりました。わたくしもやりましょう。」
わたくしは、静音にそう言いました。
「やったー!帰ったらゲーム機器持って綾っちの家行くからねー。」
静音は、そう言うと、こちらに手を振りながら、自分の教室に帰って行きました。
帰宅後
「やっほー、来たよー。」
帰宅後、そう言って静音は、ゲーム機器を抱えてわたくしの家にやって来ました。
あぁ、ちなみにわたくしの家と静音の家は、お隣さんです。
家族ぐるみの付き合いですね。
「よし!準備終わったよー。後は、これを被ってベットに横になるだけだね。」
静音は、わたくしのベットの枕元に機器を設置すると、そう言いました。
なかなか素早い手付きで……。
「ありがとうございます。……ところで、静音は、どんな能力構築にしますの?」
わたくしは、静音にそう聞きました。
FMOでのキャラクリエイトでは、種族、職業、スキルを選ぶのだそうです。
この三つの設定の組み合わせで能力構築が決まります。
確か、初期枠のみで作られる能力構築だけでも多岐に渡るのだとか。
「ふふん。聞いて驚きなさいな!あたしは、【骸骨】の【死霊術師】を選ぶつもりなのさ。ほら、不死の軍団とか、楽しそうじゃん。」
静音は、胸を張りながらそう言いました。
前持って確認した公式サイトによると、【死霊術師】は、死体を死霊化させ、使役する事に特化しているのだそうな。
特化している分、その操作難易度は、数十倍に上がるのだそう。
まぁ、昔の、パソコンやファミリー向けのゲーム機器ならともかく、フルダイブ型のゲームでは、向きませんね。
普通に、指示が追いつきません。
……まぁ、静音ならイケそうですが。
「そう言う、綾っちはどうなのさ?」
静音は、わたくしにそう返しました。
「わたくしは、【悪魔】の【従魔士】をしようと思います。」
【従魔士】、それは契約した魔物と共に戦う職業です。
【死霊術師】が、死霊特化型なら、【従魔士】は、魔物全般型です。
「【悪魔】は分かるけど、【従魔士】?」
静音は、首を傾げながらそう言いました。
「魔王ロールには、良いと思いません?確か人類種側には、【勇者】もいるそうですし。」
わたくしは、静音にそう言いました。
わたくし達は、人外ロールをするのです、やるのでしたら、とことんやってやろうという訳です。
「なるほどねー。……よし、乗った!じゃああたしは、魔王の右腕ロールするね。」
静音は、ウンウンと頷いた後、ニチャァとした笑みを浮かべ、そう言いました。
「そうと決まればさっそくログインだね。プレイしてみないと、何処スタートか分からないから、今日は個人でプレイして、明日、合流を目指そう?」
ふむ。
確かにそうですね。
取り敢えず、今日は、個人プレイをして、明日の休み時間に、何処スタートかを話し合って、帰宅後に合流を目指して行動しますか。
「そうですね。」
わたくしは、静音にそう言いました。
「そんじゃまた明日ー!」
そう言うと静音は、走って家に帰って行きました。
「……さっそくログインしますか。」
わたくしは、そう言うと、ベットに横になり、頭にゲーム機器を装着しました。
(意識を沈み込むイメージ……)
そうイメージすると、不意に周囲の景色が変化しました。
全方位が真っ白になりました。
そして、どうやら身体も無い様です。
ふむ?
《意識データから、待機場用の身体を生成を開始します。……残り3秒》
そんな事を考えていると、脳内……まぁ、今は、脳内そのものなのですが……に直接語りかける様にそう言われました。
ふむ、なるほど、これが待機場という場所なのですか。
……徐々に身体が形成されていきますね。
お、もう完成しました。
リアルと同じです。
服装は……麻の服?
ライトノベルの平民が着ていそうですね。
或いは、初心者装備ですかね?
《身体の生成が完了しました。現実の身体と差異が有る場合はお申し付けください。……どのゲームを開始しますか?》
完成してすぐにまた頭にそう言われました。
すると、目の前に、ゲームのアイコンが現れました。
ところで、ログアウトとかは……あ、意識を浮上させるイメージですか。
視界の端っこに有るハテナマークのヘルプをタップしたら教えてくれました。
……さて、ゲームを開始するには、これをタップすれば良いのでしょうか?
ポチっと。
《FMOが選択されました。ゲームを起動します。》
そう頭に言われると、また、周囲が変化しました。
今度は、夜空の様です。
全方位夜空なので、宇宙空間の方が合っていますかね。
「ようこそ、異邦人よ。」
そんな事を考えていると、背後から、そう言われました。
振り返ってみると、そこには、背が高く細身の体で、若々しい容貌で、虹色のローブをまとい、黄金の王冠を被った男がいました。
……。
「初めまして、ニャル様……で合ってますか?」
わたくしは、彼にそう言いました。
「これはこれはご丁寧にどうも。ええ、僕は、ニャルラトホテプで合っていますよ。この世界の世界管理AI……所謂神の一柱をやっています。」
ニャル様は、わたくしにそう返しました。
「さて、それではこの世界に於ける肉体を作成しましょうか。さぁ、そこに座って。」
ニャル様がそう言うと同時に、目の前に、椅子とテーブルが現れました。
ニャル様は、すっと座るのに遅れてわたくしも座りました。
「では、こちらを。あぁ、現実の名前は、よしてくださいね。」
ニャル様は、わたくしが座った事を確認するとそう言いました。
すると、わたくしの目の前に、名前、種族、職業、スキルの選択肢が出てきました。
名前は、【アーニャ】、綾音をローマ字読みにして、Eを取って入れ替えただけです。
種族は、【悪魔】です。
おや?種族スキルとして、【魂喰】、【不死】、【憑依】、【契約魔法】を強制的に獲得する様です。
これは、スキル枠とは被らず、別枠としてのカウントの様です。
職業は、【従魔士】に……こちらもですか。
【従魔術】という職業スキルを獲得しました。
今度は、一つだけの様ですね。
アーツとして、【従魔契約】も習得した様です。
アーツは、【剣術】や【魔法】のスキルを獲得すると特定レベルで強制獲得するものだそうです。
さて、残りは、スキルなのですが……初期枠として、5個有るのですが……ふむ。
ニャル様にお勧めのスキルを選んでみてもらいますか。
かくかくしかじかうまうま。
「なるほど、そう言うことなら、お勧めは、【識別】、【鑑定】、【死霊術】、【闇魔法】、後は、武器系スキルを一つ取ると良いよ。【鑑定】が、有ると便利だし、【識別】は、【鑑定】の補助にもなる。君の目指すところなら、【死霊術】は、【死霊術師】の職業スキルほどでは無いけど使い勝ってが良い上に、【闇魔法】は遠距離攻撃に使える。」
ニャル様は、わたくしにそう言いました。
ふむ、武器系スキルですか、初期装備枠の中に有る物が良いですね。
何か良い物は……あ、細剣なんか良さそうですね。
突き刺したり、斬ったり。
「では、武器系スキルは、【細剣術】で、他は、ニャル様のお勧め通りにします。」
わたくしは、そう言いました。
「そう。なら反映するよ。あ、【細剣術】にしたって事は、初期装備は、細剣で良いんだよね?」
ニャル様は、思い出したかの様にそう言いました。
「はい。」
わたくしがそう言うと、「分かった」と言い、パチンっと指を鳴らしました。
すると、わたくしの目の前に、今度は、立体映像の様な小さなわたくしと、髪色等の設定が現れました。
小さなわたくしは、現実のわたくしを悪魔風にした様な感じでした。
額には、2本の鋭利な角。
瞳には、蛇の様に縦に伸びる瞳孔。
背中には、蝙蝠の様な一対の翼。
臀部には、先の尖った尻尾。
そして、服装は、初心者装備で有る麻の服一式と皮の靴と腰に一振りの細剣。
「それで、髪色とか色々変更してね。」
ニャル様はそう言うと、右手を横に突き出したかと思うと、黒い闇が生まれ、そこに手を入れると、中身の入ったティーカップを取り出し、飲み始めました。
数分後、わたくしは、小さなわたくしの色の設定を完了させました。
「終わりました。」
わたくしは、優雅に紅茶を楽しんでいる、ニャル様にそう言いました。
「ん?なら君の身体に反映させるね。立ってご覧。」
ニャル様にそう言われ立ち上がると、小さなわたくしは消え、わたくしの身体に変化が始まりました。
少しすると、変化が終わり、わたくしは自分の体を確認すると、小さなわたくしと同じ様になっていました。
……悪魔部分少し邪魔ですね。
「翼とか角は、消したいと念じれば消えるよ。」
わたくしがそう思っていると、ニャル様はそう言いました。
……本当ですね。消えました。
「それじゃ転移させるけど良いかい?」
ニャル様はそう言うと、椅子から立ち上がり、机やら何やらをスッと消しました。
「はい、大丈夫です。」
わたくしは、ニャル様にそう返事しました。
「そう。んじゃまたねー。あ、そうだ、ステータスとかのUIは、念じれば表示させるからね。」
ニャル様がそう言い始めると同時に、わたくしの足元には、大規模な魔法陣が展開され、言い終わると同時にわたくしは、何処かに飛ばされました。