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第97話 ハルミレ村の回答

 いくつかの村にモヤシ栽培を伝えた頃、ハルミレ村から回答があった。


「それで?」

「で?」

「どうだった?」

 結界の共有リビングでウィルコにグイグイ迫るルイスとモニカと私。


「厳しい環境ほど熱心な信者がいてくれるんだよね…志願してくれたのは神官5人と3人の巫女。つまりハルミレ村の教会関係者全員」

 厳しい環境ほど熱心な信者がいるという話は心が痛い。生きるためにすがるものが必要で、それが信仰だったのだ。

 ウィルコ神に縋るのか……ちょっとアレだな……。


「じゃあ防護服や防護手袋をインターネット通販で買うから、この世界の素材や技術レベルに変換してね」

 いろんなサイズの防護服や防護手袋、フェイスガードなどを何種類か買った。フェイスガードは透明で頭にくくり付けて両手がフリーになるやつだ。この世界の基準に合わせると重たくなるのは仕方ないね。


「これは神託と一緒に教会に下賜するね。消耗品だから使っているうちに劣化するし壊れるから、似たものをハルミレ村で作るように伝えるよ。間違っても聖遺物にしないように念を押さないと…」

 それはヤベーです。自力で作れるようになったら劣化したものは消滅させた方がいいかもね、劣化した防護用品を使い続けるのは危険だ。


「石鹸の製法はマルセイユ石鹸ではなく、アレッポの石鹸ね」

「どうしてアレッポなの?」


「アレッポの石鹸はオリーブオイルとローレルオイルから作られているのに対して、マルセイユ石鹸はオリーブオイルが7割、パーム油が1割、ココナツオイルが2割で材料が多いしパーム油もココナツオイルもハルミレ村では手に入らないから」

「ローレルは豊富にあるね」

「それにマルセイユ石鹸は暑い時に作ると品質が落ちるっていうから」


「なるほど…じゃあ次の神託で手順を伝えるよ。僕、最初はずっと見守っていたいんだけど」

「その間、私たちはウィルコを待ってるしか出来ないんだけど…」

「いつも僕の世界のためにありがとう。ここは僕に任せて!」



 アレッポの石鹸作りは楽ではない。オリーブオイルとローレルオイルを3日間熱しながら練り上げる釜焚き。これを暑い気候の村でやるのだ。石鹸のクオリティーが決まるもっとも重要な工程だというから気を抜けないよね。

 その前にローレルオイルの抽出とか、教えなきゃいけないことはたくさんある。


 釜焚きが終わったら平らに慣らして、風通しの良い室内で自然乾燥して固まったらカットして刻印を押す。ここまでは柔らかいうちに行う。

 カットした石鹸は少し隙間を空けながら高く積み上げて、風通しの良い室内で1年以上自然乾燥させる。


 今回作る石鹸の半分はウィルコの力で強制的に乾燥させて完成させる。出来上がった少量のハルミレ石鹸とインターネット通販で買った大量のアレッポの石鹸を行政で販売するよう神託を下す予定。販売するのは、ほとんどがアレッポの石鹸になっちゃうけど熟成に時間がかかるから仕方ない。


 これからもハルミレ石鹸は行政で高く買い上げて安く売る。生活必需品は誰でも買える価格でないといけない。

 ウィルコが結界の自室に篭って1週間…ウィルコはつきっきりで見守っていた。



 ウィルコが篭っている間、私は再現レシピを作らされていた。

「惜しいわね」

「美味いけど、ちょっと違うな」


 出前が解禁になって直ぐに注文したフライドチキンの再現レシピだ。ルイスもモニカも気に入って、ネットで評判の再現レシピを検索結果1位から順番に試すことになり、私は飽きた。


「もうやだ」

「カレン?」

「チキンは食べ飽きたし、もう揚げ油の匂いは嗅ぎたくない」


「なに言ってるの!」

「そうだ、あと少しだぞ」

「惜しいところまできているのよ」


…………無理です。

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『飼い主を召喚しました ⋃ ╹ᗊ╹ ⋃』


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