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第93話 次の目的地と石鹸とカレー

 ルイスとモニカの夏バテを結界で癒した。結界は時間経過無しなので何も気にせずゆっくり出来て良かった。


「そろそろ次の目的地を決めないの?」

「俺たちを気にしているのか?」


 言い出せずにいるとルイスとモニカから話題にしてきた。

「…オリーブの収穫は9月くらいから始まるでしょう?そろそろかなって」

「オリーブオイルが欲しいのか?」

「作りたいのはオリーブオイルで作った石鹸…」

「それは大事ね。この世界に必要だわ」

「ウィルコもカレンも衛生面について一生懸命やってきたからな、次は石鹸だな」

「でも…」

「それなら時間を工夫しよう、カレンは心配しすぎだ」

「ありがとう」


 インターネット通販で買ったアレッポの石鹸とマルセイユ石鹸をテーブルに並べる。


「アレッポの石鹸はオリーブオイルとローレルオイルから作られていてね、肌に良いビタミンやスクワランを多く含む実や種もまるごと絞った2番絞りのオリーブオイルで作られることが多いんだって。

 マルセイユ石鹸はオリーブオイルが7割、パーム油が1割、ココナツオイルが2割くらいの配合で、品質が落ちるから夏に作ってはいけないとされているの」


「なら涼しくなってから行ったらいいよ」

「でもねウィルコ、貧しくて新しい特産品を作りたいハルミレ村は常夏なんだ」

「ああ、あの辺りは貧しいな」

「オリーブや野生のローレルくらいしか資源が無いのよね」

「いつ行っても暑いところだね…」


「問題はもう1つあるんだ。どっちの製法で作るにしても苛性ソーダは必要なの。劇薬の苛性ソーダの製法を伝えていいのか迷いがあるし、現在の日本では薬局で買えるけど印鑑と身分証明書が必要なくらいなの。扱う時は保護めがねや保護手袋をつけないとダメ」


 皮膚についたら火傷するし目に入ったら失明するかもしれない危険な劇物なのだ。

「扱い方の教育も必要だし、許可された人しか扱えない仕組みが必要かなって」


「僕たちにも準備が必要だね」

「そうなの」

「じゃあ、その仕組みをみんなで一緒に考えましょう」

「ここは時間経過無しだから急がなくても良い。ハルミレ村に特産物を作るのは賛成だ」

 ルイス狼とモニカ狼に抱きついてギュッとした。

「ルイスもモニカもありがとう」

「ウィルコは家族だからな」

「助け合うのは当然ね」


「ねえ、久しぶりにテラとシモンを呼んでご飯にしない?」

「あら良いわね」

「どの肉をどのタレで焼く?」

── ウィルコの提案にモニカもルイスも賛成だ。呼ぶのも肉ばっかりメニューも確定らしい。当然私も文句はない。


「ねえ、カレーは?」

「かれー?」

 3人揃ってキョトン顔だ。ルイスとモニカは狼だし可愛いな。


「以前、自家製ロースハムを作った時、ついでにカレーヴルストも作ったでしょう、覚えている?焼いたソーセージの上にケチャップをかけてカレー粉をまぶしてポテトフライを添えたもの。あのケチャップに振りかけたスパイスがカレー粉だよ」

 タブレットで画像を見せた。スパイスをたくさん使っていて辛いんだけど、みんな辛いの好きだよね?


「このカツカレーって奴はなんだ!」

「このタンドリーチキンも作るわよ」

 ルイス狼とモニカ狼の目が光った。

「じゃあみんなでプロの調理動画を見ようか、私のおすすめはバターチキンカレーとキーマカレーとエビカレーね」



「やるわよ」

「野菜とスパイスの準備は僕に任せて」

「俺と姉ちゃんは肉を準備しよう」

 関連動画を全部見た。そんなに作らなくても…と思ったけど3人ともやる気だったので止められなかった。


 ウィルコがフードプロセッサーで大量の玉ネギをみじん切りにして生姜とニンニクをおろす。スパイスを調合してカレー粉とガラムマサラも作った。

 モニカとルイスは大量の鶏肉の下ごしらえに入った。タンドリーチキンとバターチキンカレーの準備を同時にするらしい。


 ジッパー付きのビニール袋にモモ肉と手羽元、ヨーグルト、ケチャップ、オリーブオイル、カレー粉、塩、胡椒、ニンニク、生姜を入れて揉み込む。モニカ渾身のもみ込みで美味しく漬かったようだ。

「これは食べる直前に焼きましょう。次はカレーよ」


 バターチキンカレーのためにヨーグルトと生姜、ニンニク、カレー粉、塩、ガラムマサラに肉を漬けこんだ。これもモニカが揉み込んだ。

 たっぷりのバターで玉ネギを炒めたら、おろしニンニクとおろし生姜を加えてさらに炒めたらトマト缶とヨーグルト、ナッツのペーストを加えてさらに混ぜる。

 全体が馴染んだら漬けこんでおいた肉を加えて煮込む。仕上げに生クリームを加えて塩で味を整える。


 味見をした3人が衝撃を受けている。


「早く食べたいから急ぎましょう。私はキーマカレーを作るわ」

「俺はビーフカレーとポークカレーだ」

「僕はエビカレー」

── ありがとうウィルコ、肉以外のカレーも欲しかったんだ。


 やる気になった3人を横目に私はご飯を炊いて、ナンを作っている。ご飯は白いご飯とターメリックライスの2種類。


 ターメリックライスは研いだお米に白ワイン、水、ターメリック、スープの素を加えて炊いた。


 ナンは強力粉とヨーグルト、塩、砂糖、重曹、ベーキングパウダーに牛乳を加えて混ぜる。生地がまとまったらバターを加えて捏ねる…ここはウィルコが手伝ってくれた。ありがたい。

 生地を寝かせて綿棒で伸ばしたら温めておいたオーブンで焼く。タンドール窯みたいに高温にはならないけどオーブンで焼くと充分に美味しくできる。

 焼いている間にゆで卵を作ろう。キーマカレーに乗せると美味しいから。


 キーマカレーはモニカが作っている。ウィルコがみじん切りにした玉ネギ、ニンジン、ピーマン、ニンニクとトマトをひき肉と一緒に炒めて火が通ったら、塩胡椒、カレー粉、トマトケチャップ、ウスターソースを加えて作り置きのコンソメスープを注いで煮こむ。水分が飛んだら完成。


 ルイスがお鍋に油とスパイスを入れて香りを引き出している。生肉を好んで食べる野生の狼とは思えない繊細な調理風景だ。

 スパイスに玉ネギを加えて塩を振りキツネ色になるまで炒めたら生姜とニンニクを加えてさらに炒める。そこにトマトピューレを投入して水分が飛んだらカレー粉と塩を加えて、スパイスの香りが立つまで炒める。

 塩胡椒を振った牛肉と赤ワインを加えて全体を馴染ませるように炒めたらヨーグルトとブイヨンとローリエを加える。煮込み時間は1時間くらい、仕上げにバターを加えてコクを出している。


 煮込んでいる間にポークカレー、これは私のリクエストで日本のカレールウを使って箱に書いてあるとおりに作ってくれた。


 他にもほうれん草のカレーとかマトンとかダルカレーとか美味しいカレーはたくさんあるけど今日はここまで。そろそろシモンさんとテラ様が来るよ。


「ご招待をありがとう」

「いらっしゃいシモンさん」

「久しぶりねカレンちゃん」

「テラ様!」


 テラ様に駆け寄ると抱き上げてくれた。母なる地球…好き。


 テーブルにカレーとナンと土鍋ご飯とトンカツを並べた。今日も好きなものを好きなだけ取るスタイルだ。ゆで卵とラッキョウと福神漬とチャツネとピクルスも並べた。味変とか箸休めにいいんだよね。スプーンだけど。


 みんな好きなものをお皿に盛っている。私はご飯にしよう、ターメリックライスにエビカレーとビーフカレーを半分ずつ吉祥寺のハモニカ横丁にあるピワ○みたいに美しく盛り付けた。

「美味しい〜」

 エビも美味しいしビーフも美味しい…。後でポークも食べよう。


「トンカツと合うな!」

 ルイスは白いご飯にトンカツを乗せてポークカレーをかけてる。最初にタブレットで見せた画像を忠実に再現したみたい。カツカレーも美味しいよねえ。モニカは白いご飯にキーマカレーか。


「モニカ、キーマカレーにゆで卵を乗せても美味しいよ」

「…合うわね、キーマカレーにゆで卵」

モリモリ食べている。


「このビーフカレーというのは美味しいですね。大きな肉がゴロゴロ入っているのも実に良いですね」

 肉食のシモンさんらしいコメントだ。ナンで肉をすくって食べている。

「たくさん食べてね!」


 テラ様はターメリックライスにキーマカレーとビーフカレーとポークカレーを全部掛けている。バターチキンカレーはかける余地が無かったんだな。

「どれも美味しいわ、ウィルコちゃんの世界でも作られるようになると良いわね」

「ありがとうテラ」


ウィルコはバターチキンカレーをナンで。

「美味しいね、ただ辛いだけじゃないんだよね、コクと旨味がすごい。ねえカレン」

「スパイスが全部揃ったら出来るよ」


「急ぐ必要は無いわ」

「ああ、これからが楽しみだな」


カレーパーティーは楽しかった。


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『飼い主を召喚しました ⋃ ╹ᗊ╹ ⋃』


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