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第83話 選挙とグラノーラ

 北部の西側を一通り回ったところで7月が終わった。


 この世界の王政をぶっ壊してから現在まで、こまめに神託を下しながら仮の体制でやってきたが、出来るだけ早くこの世界の人間たちだけでやってゆけるようにしたい。

 新たな指導者を民主的に選ぶため、冬に選挙を行う。立候補の受付は8月1日から10月1日まで。投票日は12月15日で即日開票。


 8月になり、立候補者の受付が始まった。初日の立候補者は2人。どちらの候補者も王政時代に王族や貴族から民衆を守るための自衛組織を率いていたリーダーだ。

 北西部の反政府組織のリーダーはソニアさん。南部の反政府組織のリーダーはユセフさん。どちらの候補者も現実と理想のバランス感がよくて行動力もあり人望もある。違いはソニアさんが女性でユセフさんが男性ってことくらいかな。2人ともミドルエイジの働き盛り、これまでの行動を見ると分別のある2人だし最高だ。


 独裁を防ぐために任期は4年で連続立候補は不可なので、落選した候補者さんは次の選挙での立候補をお願いしたいくらいだ。


「第一次産業の保護政策について立候補者には発表してもらったよね」

「食糧の安定需給や他産業との所得均衡を図るために、第一次産業の保護政策は絶対に必要になると思ってる。すでに地域の格差もあるし。就任後すぐにも動いてもらいたいな」


 この世界のことは出来るだけこの世界の人たちで決めるべきだから、私たちは手を出し過ぎないようにしたい。神託もいずれゼロにしていきたい。


 第一次産業は農業・林業・水産業など自然から直接資源を採取する産業のこと。すでに地域で格差がある。第一次産業の保護政策を含めた立候補者の情報は国内のすべての教会に貼り出すので誰でも知ることが出来る。


 さっそくソニアさんとユセフさんの実績や政策などを貼り出したところ国中で話題だ。あちこちで議論されていて、投票率にも期待してしまう。


 日本は政治について話すのはタブーみたいな雰囲気があったけど私は必ず投票した。都合が悪い時は期日前投票を利用した。


 選挙といえばスイス人から『スイス女性が参政権を得たのは最近なのよ』と聞いた時は驚いたな。1990年だよ…まさかと思うよね。後で自分で調べてみたら州ごとに女性参政権が認められた年に違いがあって、1番遅く認められた最後の州の話らしいけど、その他の州も早くはなかったんだよね。


 選挙を巡る市民の熱は世界を変える力がある。この世界の人が自分で考えて選んだ候補者に投票するように、引き続き投票日まで神託も出していこうとウィルコと一緒に決めた。



「選挙のことは引き続き私たちの定例会議で確認していこうね」

 打ち合わせの資料を片付けていたら小腹が減ったことに気づいた。


「おやつにしようか」

「何か作るの?」

「グラノーラ!」

「ぐらのーら?」

「うん、オートミールを美味しく食べるのに良いかなって。燕麦を脱穀して押し潰したものがオートミールね」



「ボウルに砕いたナッツとオートミール、蜂蜜、オリーブオイルを入れて混ぜたら、天板に広げてオーブンで焼く。途中でオーブンから取り出して全体を混ぜ合わせたら、また広げてもう一度焼く。焼けたら熱いうちに刻んだドライフルーツを混ぜて、冷めたら出来上がり。パラパラのそぼろ状でも平たく固めたのを細長くカットしてもいいよね。今日は細長くカットしてグラノーラ・バーにしよう」


「甘い香りだね!」

ウィルコはいい反応をしてくれるから嬉しいね!


「今のが基本ね、次にシナモン風味と、生姜入りのハニージンジャー味を作ります。作り方は同じ、それぞれシナモンと生姜のすりおろしを混ぜるだけ」

「こっちも良いね!」


「最後にキャラメル・グラノーラ!ダッチオーブンで作るよ。ダッチオーブンでオートミールとナッツを香ばしく炒って、いったん取り出す。次にダッチオーブンにハチミツを入れて火にかけて色づいてきたら生クリームを加えてよく混ぜながら煮詰める。ここに炒ったオートミールと刻んだナッツとドライフルーツを加えて混ぜたらクッキングシートに広げて完成!」

「美味しそうだね!」

「食べようか」


 ルイス狼とモニカ狼は後ろの方でゴロゴロしている。肉を焼いている時はいつも真後ろで尻尾を振ってヨダレを垂らしそうな顔してるのに…。


 紅茶を入れて出来立てのグラノーラ・バーをテーブルに並べるがルイス狼もモニカ狼も寄ってこない。

「ルイス、モニカ、一緒にグラノーラ・バーを食べようよ」

「カレンとウィルコが好きそうだな」

「2人で食べなさい」



…肉じゃないとこれだ。分かりやすいな。

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『飼い主を召喚しました ⋃ ╹ᗊ╹ ⋃』


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