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第54話 チーズを広めたい!

 選挙の神託なんかで後回しになっていたチーズですよ!


 少し働き過ぎたので4連休を取って結界でダラダラ過ごした。観たかった映画も観たよ。Blu-ray買っちゃった。

 気力と体力の充電はばっちり!チーズを広めるよ!


「王都で試食会をするのか?」

「誰も来ないと思うんだよね…」

 この世界の乳製品て、そんな認識なのだ。

「でも広めたいんでしょう?」

「うん」

「僕、この世界の人間たちにピッツアの美味しさを知ってもらいたいな」

 ウィルコがキラキラしてる。このアメリカかぶれな神め。


「食べたいと思った人に自主的に食べて、美味しいって思ってもらう」

「そんなこと出来るのか?」

「イタリア式の切り売りのピッツアの持ち帰りのお店をやろう」


 インターネット通販でイタリアの屋台で使われている鉄板を買って王都の家…ウィルコ側の通りに面したところを改装した。この通りは昼も夜も人通りが多いから。

 ピッツアはイタリア風に四角くカットして、一切れ260ディル。ちなみにケチャップは1ビン500ディルで販売している。


 種類はマルゲリータとペパロニと野菜と肉のミックスの3種類が定番。秋になったら日替わりでボスカイオーラ(キノコ)もやりたい。キノコがある時だけね。

 具材が多いミックスはチーズ少なめ、ペパロニはチーズほどほど、マルゲリータはチーズたっぷり。具材とチーズの量を調整して価格を揃えてる。


 クワトロフォルマッジに蜂蜜をかけて熱々を食べると美味しいよねえ。でもこれはチーズ上級者向けだから無し、私たちは結界で食べよう。


 改装も終わって今日から営業だ。『チーズたっぷり!焼きたてピッツア』のノボリを立てて、A字型の黒板も出してアピールしてる。あとはお腹が空く匂いで呼び込むよ。

 ウィルコを中心に調理してルイスとモニカがヘルプとお会計で私は接客。ウィルコの成長がすごいよ…。



「カレンちゃん」

「テラ様!」

 いきなりは絶対に売れないのでサクラを用意しました。地球の神様、テラさんです。久しぶりの再会が嬉しくて抱きつく。


「元気そうね」

「うん!」

「順調って聞いているわよ。偉いわね」

 神様が頭を撫でてくれる。…不思議と子供扱いが嬉しい。さすが母なる地球だよ。

「今日はピッツアを食べにきたのよ、そうね…ペパロニをいただこうかしら」

 地球の神様がウィルコからペパロニのピッツアを受け取って一口。

「……美味しいわ。どの素材もちゃんと美味しい。カレンちゃんもウィルコちゃんも頑張ったのね」

 嬉しい…ウィルコと目を合わせて喜ぶ。


「じゃあ私はミックスをもらおう。肉は多めで頼む」

 シモンさんが現れて予想通りのオーダーをしてくる。

「特別は今日だけだよ!」

「分かった分かった」

 溢れる具材を大きな一口でガブリと食らいつく。そんな姿も上品なんだよね、さすが神。


「美味いな…」


 エリート眼鏡のワイルドな一面。こういうタイプが好きな人には堪らないだろう。濃いめのラテン好きな私のタイプじゃないけどモテそう!エリートだし!

…いやそうでもないか、エリートだけど悲しみの中間管理職だしね。

でも顔は整ってるな、今は眼鏡を外しているからハンサムがダダ漏れだ。



「チーズが美味しいわね」

「ああ、ちゃんと作ってあるやつだ。美味い」


「…あのー」

 きた!一般人だ!若い男性の2人組。


「何でしょうか?」

「お手伝い?偉いね」

「あのね、チーズって何?」

「牛乳の加工品!温めると、びゅーんて伸びて美味しいんだよ」

「牛乳って?」

「牛の乳!」

「……」

「……」

 2人は固まった。私は子供らしい無邪気さをキープ。


「これは伸びますね!」

 シモンさんがワイルドにチーズを伸ばして食べてる。


みょーん!

 地球の神様も伸びたチーズを美味しそうに食べてる。


「ウィルコ、次はペパロニをください。ペパロニとチーズを3倍で。追加料金は払いますよ」

「払ってくれるなら良いけど、シモンさんでも3倍は食べにくと思うよ」

「構いませんよ」


 固まった2人を他所にチーズとペパロニがマシマシマシのピッツアを食べるシモンさん。


 熱々なので少し汗をかいて、顔が赤い。シモンさんがハフハフってするの珍しい。あ、指を舐めた。

 今まで気づかなかったけど、この人すっごく色っぽいな。今日は時代考証を合わせるために眼鏡を掛けていないし、服もスーツじゃないし。


「私はマルゲリータにするわ」

 地球の神様がマルゲリータを受け取って食べながら固まった2人に流し目をくれたかと思ったら唇を軽く舐めた。


── セクシーに食べる選手権じゃなくて、ただのサクラですからね?


「そ、その肉のやつを1つ」

「俺も」

 固まっていた2人がフラフラとペパロニを注文して、パクッとかじりつく。


「美味い…」

「ああ…」

 2人が夢中で完食した。


「新しい店だよね?」

「今日からお昼に2時間だけ営業しているんだ、元々卸売の商売をしてて、仕入れ先の北の地方には、チーズみたいに美味しいものがいーっぱいあるんだよ」


 ちょっと大袈裟に言った。『いっぱい』になるのはこれからだし、仕込むのは私たちだ。

「仕入れの旅に行かない間は、ここで営業しているから、気に入ったらまた来てくれ」

 また来ると言って2人組は帰って行った。


「私は次もペパロニで、チーズとペパロニは2倍で」

シモンさん?3枚め?


 シモンさんは、ものすごく色っぽく食べた。途中でボタンを1つ外して胸元の素肌を見せたよ!絶対にセクシーを意識してる!

 通りすがりの女性たちがシモンさんに釣られて3人ほどフラフラと注文したのを見て、シモンさんが満足そうに肯く。


「…明日も来るわ」

地球の神様?

「私も来ます」

シモンさん?


 2人(2柱)のセクシー競争により、ウィルコの世界にチーズが広まった。

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『飼い主を召喚しました ⋃ ╹ᗊ╹ ⋃』


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