第5話 ロリコン除けの狼 ੯‧̀͡u
「私を呼び出す能力を授けるから困ったことがあったら呼んでちょうだい」
── ありがとうございます。でも違う世界のことでご迷惑をおかけする訳にはいかないので自力でなんとかします。
そんな会話をしてから24時間も経っていないのに地球の神様を呼んでしまった。
「うわああああああん!」
ウィルコの世界の私の部屋で地球の神様にしがみついてギャン泣きしています。
床に正座しているのは無能なロリコン神のウィルコ。頭には大きなタンコブ。ザマァだ。その横には事務員のシモン。
シモンの顔が怖い、ものすごく怒っている。
「あの…僕はロリコンじゃなくて…パパと愛娘の設定にあこがれてるだけだから。カレンの世界の映画『Meet the Parents』が好きなだけだから!」
「お黙りなさい」
シモンが怖い。
『Meet the Parents』はロバート・デ・ニーロ主演のコメディ映画だ。娘を溺愛する元CIA職員で心理尋問官を務めていた父親と、その娘と結婚したい青年とのバトルがコミカルに描かれた楽しい映画だ、花蓮もお気に入りの映画だが、苦手なタイプのヒョロ金髪に添い寝されていた恐怖と嫌悪感でパニックだ。
「ひっぐ…もう次の人生をえらべなくてもいい。変態とかかわりたくない、いますぐ成仏したい…えぐえぐ」
「……」
「……」
シモンと地球の神様が無言だ。
「……ひっく…すんっ?」
「あのね花蓮ちゃん、もう契約してしまったから…」
まさか…
「花蓮さんには申し訳ないのですが成立してしまった契約を覆すことはできないのです」
「う、うえっ!でも!重大な事実を隠していたから無効です!!」
「ウィルコの世界は暗黒中世です、法律も整備されていないのでクーリングオフは効かないのです」
なんてことだ…ロリコンのヒョロ無能神が無能すぎるせいで………死にたい…今度こそ死にたい…
「しかし! このまま花蓮さんをロリコン神と一緒にロリコンの世界に戻す訳にはいきません。花蓮さんのボディーガードを召喚いたしましょう」
シモンがタブレットを操作すると目の前に二頭の巨大な狼が現れた。
「ロリコン神よりも高い階層の世界を治める神の眷属ですのでロリコン神よりも高い神格を持ちます。つまりロリコン神よりも強いのです」
シモンが召喚した狼たちに事情を説明する。
見るからに位の高そうな狼たちだ。花蓮のボディーガードを頼んでいい雰囲気ではない。この狼たちに断られて次の手段を講じることになるだろう。…この後の展開を予想して、これは揉めそうだと覚悟していると狼たちがヒト型に変化した。
「ロリコンか…」
「クズね」
「お願いできますか?」
「もちろんよ」
「見捨てるなんて出来るわけないだろう」
あっさり引き受けてくれた!
美女と男前に変化した狼。
美女の名前はモニカ。
モニカ・ベルッチっぽい美人だ。
男前はルイス。
ルイス・フィーゴ似の男前だ。
とても覚えやすいし二人ともラテン好きな花蓮の好みにドンズバだ。頬を染めて見惚れているとモニカに抱き上げられた。
「私たちがついていれば安全よ」
「よろしくお願いします」
ロリコン神の世界で、安全に暮らしていけそうな見込みが立った。