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第33話 今日は魚も肉も

── 昨日のアクアパッツァは美味しかったなあ。


 余韻に浸っていると夕方になり、今日の野営地に着いた。

「今日は肉?魚?」

 ウィルコの質問にルイスとモニカが強い視線で見てくる。

「どっちも!こっちのダッチオーブンで豚肉と野菜を焼いてローストポーク。もう一つのダッチオーブンで魚のオーブン焼きにしようよ!」

 ルイスとモニカの視線が柔らかくなった。


「じゃあ豚肉はルイスとモニカに任せていい?この野菜も全部使ってね?ちゃんと野菜も食べてね?」

 ルイスとモニカの舌打ちが聞こえたが素直に従うところが可愛い。


「じゃあウィルコは野菜を洗って皮をむいて大きめの一口大に切ってね。ルイスは豚肩ロースに粗塩をすり込んで、モニカはニンニクを厚めにスライスしてね」

「こんなものかな?」

 ウィルコがカットした根菜類を差し出してくる。

「うんいいね!じゃあダッチオーブンに根菜類を敷いて、その上に豚肉を乗せたら豚肉の上にニンニクとローズマリーを乗せて…オリーブオイルを豚肉と野菜全体に回しかけたら40分〜1時間焼きます。フタの上にも焼けた炭を乗せて上下から焼くよ」

 豚肉は火が通るようにね、生だったら3人は平気でも私が危ない。

ルイスとモニカが大人しく鍋と炭の番をしている。


「次は魚ね!粗く刻んだニンニクと多めのオリーブオイルを鍋に入れて弱めの火で香りを出したら玉ねぎの微塵切りを加えてしんなりするまで炒めたらトマトペーストを加えて炒める。

 全体が馴染んだら湯剥きしたトマトと白ワインを加えて煮る。塩、胡椒で味を整えて煮込んだらトマトソースの出来上がり。


 昨日捌いてもらったスズキにレモンを絞ってこすりつけて風味をつけたら塩、胡椒をふる。トマトソースを煮込んだダッチオーブンの中に入れて、スプーンで掬ったソースを魚の上にたっぷり掛ける。上からさらにオリーブオイルを回しかける。こっちの焼き時間は肉の半分くらいでいいから少ししたら火にかけよう」


「その間にまたキノコでも探しにいくか?」

 ルイスの提案は嬉しいが今日はスープを作るよ。

「ううん、ストラッチャテッラっていうイタリア風かき玉スープを作ろう!パスタとチーズ入りで食べ応えあるよ!」

「ほほう」

 食べ応えと聞いてルイスとモニカの目が光る。


「まずはパスタを折る。今回はフェデリーニを2~3cmの長さに折るよ。鍋に固形スープの素で作ったスープを煮立てて塩で味を調えたら折ったパスタを加える。

 パスタがアルデンテになったらボウルに卵を溶きほぐしてパルメザンチーズとイタリアンパセリを加えたら、溶いた卵液を回し入れて塩で味を調えて出来上がり。食べる時、器に盛ってからイタリアンパセリを散らしてエクストラバージンオリーブオイルをたらして香りづけすると美味しいよ」

 これは肉系の出汁のスープなのでルイスとモニカも食べる気満々だ。野菜の出汁で作っても美味しいんだけど今日はルイスとモニカ向けに肉系の出汁だ。大きな鍋に余るくらい作ったから明日の朝ご飯に回せると思う。ローストポークも余るくらい大きいしね!


「じゃあ魚のお鍋を火にかけよう!」

 魚のお鍋もフタに焼けた炭を乗せて上下から加熱する。

 この世界のカンパーニュっぽいパンをスライスしていたら野営地に馬車が入って来た。


「馬車だよ、商人かな?」

「ああ商人っぽいな」

 魚とローストポークはまだ火を通す必要があるし、その後でスープを温め直さないと…と考えていると商人たちも野営の準備を始めた。商人1人に護衛2人、大人の男性が3人のグループだ。


「カレン?」

「何?モニカ」

「あの3人を呼ぶつもりね?」

「あいつらは食うぞ」

「アイテムボックスのジャーマンポテトとチキンのガーリックレモン炒めも出すから!」

「あいつらは食うぞ」

「ピーマンの肉詰めも出すよ」

「…仕方ないわね」


 魚のオーブン焼きが出来たのでスープを温め直して、ローストポークをスライスする。

「良かった、ちゃんと火が通ってるね!」

 豚肉が綺麗なピンク色をしている。スライスして鍋に戻す。食べる時は肉と同じ重さの根菜類を取るルールを伝える。

 スープにパルメザンチーズが入ってるけど卵に混ぜてるから商人たちにチーズとバレないよね。コクがあるのは出汁が効いてるからってことにしよう。


 私たちが支度をしている間に商人たちは携帯食と水で夕飯を済ませていた。相変わらずこの世界の旅人の食事は残念だ。


「ルイス」

「仕方ないな」

 私がルイスと手を繋ぐとルイスが立ち上がった。

「僕らはあの3人の分もお皿を用意しておくよ」

「お願いね」

 配膳はウィルコとモニカに任せた。


「こんばんは!」

 子供らしさを演じながら商人と護衛達に声をかける。

「こ、こんばんは?」


 野営地で声を掛けて警戒される。商人が答える横で護衛の2人が剣に手を伸ばす。

「あのね、一緒にご飯を食べませんか?」

 商人と護衛がポカンとする。


「俺はルイス、向こうのモニカは姉でこいつはカレン。俺とモニカの姉が商人と結婚して生まれたのがカレンだ。カレンの両親は王都の商人だったが仕入れの途中で盗賊に襲われて死んだ。俺とモニカは傭兵を引退して一時的に商売を継いでいる。カレンが大人になるまでな。今は仕入れの旅の途中だ」

「あの金髪はルイスの弟子のウィルコ、3人とも料理が上手なの、一緒に食べよう!」


「し、しかし…」

 躊躇する商人と護衛。そりゃそうだ。でも流れてくる美味しそうな匂いに3人のお腹が鳴る。

「何も変なものは盛っていない、俺たちも同じものを食べるからな」

「さっき携帯食を食べてたでしょう?絶対に足りないよ!」

「こら」

 子供なのでハッキリ言った。ちょっと失礼なので形ばかり叱られる。叱られるところまでがシナリオだ。


「ね、早く!私お腹すいちゃった!」

 商人の手を取ってグイグイ引っ張る。

「来てくれ、そうしないとカレンが飯を食ってくれない」

「良いのか?」

「歓迎するよ!」


 警戒しながら腹の虫に逆らえない3人が着いてくる。

「まずは手を洗うよ、ちゃんとしないとお腹が痛くなっちゃうからね!」

 行った場所、出会った人たちに衛生面の知識を広めるのも忘れない。3人と一緒に手を洗ってキャンプ用の大型テーブルに戻る。


「連れてきたよ!」

「いらっしゃい、そっちに座って」

 モニカがカップにスープをよそって配る。


「お代わりあるからね」

 ワンプレートに肉と魚とパンを盛り付けたウィルコが声をかける。

「肉を取ったら野菜も取るのがうちのルールだから野菜も食えよ」

 ルイスの言葉に3人が私を見る。


── 違います!子供向けルールではなくて狼向けのルールですから!


「いただきまーす!」

 私はスープから

「美味しい〜!出汁が効いてて旨味がすごいね!」

「肉もちょうどいいな」

 ローストポークにかぶりついたルイスとモニカ。

「魚もふっくら仕上がったね」

 モリモリ食べ出す私たちに釣られて3人も食べ始める。


「こ!これは!?」

「美味い!」

「…ああ、美味いな」

 驚く3人のスプーンとフォークが止まらない。


 3人はルイスとモニカが言うほど食べなかった。さっき携帯食も食べてたしね。狼に唆されて多めに肉を出してしまった。


「夢中で食べてしまいました」

「ありがとうございます」

「お前たちは商人と護衛か?」

「どこから来たの?」

「私はカンパニアの商人です。この2人はうちの護衛を兼ねた商人見習いです」


やった!カンパニアの商人とエンカウントしたよ!

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『飼い主を召喚しました ⋃ ╹ᗊ╹ ⋃』


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