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最終話 ただいま

「ウィルコに会いたい!会える?」


「会えるよ。会いにいくかい?」

「行く!」


「いまの時間はカレンちゃん達と過ごした結界にいるよ。転移もアイテムボックスも以前と同じように使えるから試してごらん」


 ちょっと失礼してアイテムボックスを確認したら入れっぱなしだった加工肉なんかがたくさん入っていた。


「カレン、ベーコンとコンビーフが残っていたはずよ」

「一緒に包んだ餃子とシュウマイと春巻きもあるはずだ」

「唐揚げもあったはずね」


── 全部ありました。数年前の在庫を覚えているなんてモニカとルイスの食欲って凄いな…



 かなりの量と種類が残っていてモニカもルイスもご機嫌だ。



「じゃあウィルコに会いに行こう!」

みんなで転移した。



「ただいまー!」


 つい習慣で言ってしまったが正しくはお邪魔しますだったかも…と、後で思った。


 ソファで眠っていたウィルコが私たちの気配で目覚めたようだ。もぞもぞと動いている。


「ウィルコ!」

「むう…」


 ウィルコにしては寝起きが悪い。かなり疲れているようだ。無理に起こすべきじゃないから出直そうかと思ったらウィルコの目が開いた。


「ウィルコ!久しぶり」

嬉しくて飛びついた。


「え……」

寝ぼけた表情で私たちを見回すウィルコ。



「ルイスとモニカ?久しぶりだね、それにヨル?どうしたの?」


── 抱きとめている私をスルーするとは…


「もう!私もいるよ!!」

「可愛いワンちゃんだね、小さいのにお喋りが上手だね」


「………」

自分の手元を見たらモフモフで丸かった。


「私だよ!」

 ウィルコのお膝の上でポン!と人型に変化したら急に重くなってウィルコが驚いていた。


「……カレン!?」

「そうだよ!」

「面影はあるけど…顔つきが変わってる。その姿はどうしたの?ますます小さくなって」


 ますます小さくなって…ますます小さくなって…ますます小さくなって…


ウィルコの素直な感想が、やまびこのように心に響いた。…大きくなるもん!



「カレンは地球に転生したんじゃないの?」

「ルイスの仕業だよ!」

「ルイスがどうしたの?」


「ルイスは私の父親になって私を育てたかったんだって。それで無理矢理自分も転生して私の父親になったんだけど、ことわりを曲げて輪廻に潜り込んだから世界から排除されちゃったんだって。一緒にいた私も巻き添えで、また死んじゃった。ルイスの子供だから今は神狼の子供だって神様が言ってた」


「……ふうん、追いかけたくても僕は我慢したよ。しかも無茶苦茶に働かされてて、数ヶ月ぶりに帰宅したところだったんだけどルイスは楽しかったんだ?」


ウィルコからブリザードが吹いている。


「………」

無言でウィルコから目を反らすルイス。



ウィルコが寒い。


「くちゅん!」


 ウィルコに抱っこされているから寒くてくしゃみをしたら子狼に変化してしまった。


「ごめん!寒かったよね、僕が悪かったよ」

「ウィルコ、貫禄が出てきたね」

「そう?」


「あの後ウィルコはどうしていたの?」

「カレン達が帰った後、少し休暇を取ろうと思ったんだ。いきなり気持ちを切り替えるのは難しくて」

「ウィルコ…」

思わずウィルコのアゴをペロリとした。


「ふふ」

 ウィルコが嬉しそうに頭を撫でてくれた。頭を撫でられるのが、こんなに気持ち良いだなんて知らなかった。思わず目が細くなってしまう。


「でも休む間も無く父さんに呼び出されてね、立て直しが上手くいっていない世界の手助けをさせられたんだ。しかも3つも!同時進行で!」

「ええ…ブラック企業じゃん」

「そう思うよね!でもそれらの世界で生きる人間たちにとっては待ったなしで対策が必要だと分かっていたから、やるしかなかった」

「ウィルコ…」


「3つの世界を行き来して対策して、合間に僕の世界に戻る生活がやっと落ち着いてきたところなんだ」


「1人で頑張っていたの?」

「みかねたシモンが手伝ってくれたし僕は1人じゃなかったよ」

 ウィルコが優しく私の頭を撫でてくれた。


「それよりもカレンのことだよ!」

「私?」

「あんなに頑張ったのに何一つ実現しなかったんでしょう?」


「うん…でも前世でも転生後もルイスが可愛がってくれてた記憶があるよ。それに仲直りはしたけど全然許していないから!恨んでいるし!これからも、ことあるごとにルイスを責める気でいるし!」


『え、そこまで?ことあるごとに?』って表情のウィルコ。私のために怒ってくれていたんじゃないのか。


「それに神様が今の姿でもお酒を呑めるって言ってたし!それなら良いかなって!」


「カレンが良いなら良いけど、お酒はほどほどにね」

「もう死んじゃうほど呑んだりしないよ」

ウィルコがもう一度私の頭を撫でた。思わず尻尾が揺れてしまう。



「じゃあお祝いね!カレン、出しなさい」

モニカ狼の目が光った。

「唐揚げとトンカツ?」

モニカ狼がうんうん肯いた。


「アメリカでルイスが焼いてくれたような牛肉を食べたい」

ルイスが焼いた牛肉はヨルの大好物だ。


「肉も焼くけどクリームシチューとカルボナーラも作ろうぜ」

ルイス狼の目が光った。


「お祝いといえばお寿司だよ!ちらし寿司にしようよ」

「じゃあ僕がご飯を炊くよ」

「ありがとウィルコ。ウィルコの土鍋ご飯、久しぶりだね!」


 思いつくまま食べたいものを作ってシモンさんとテラ様も呼んでお腹いっぱい食べた。



 ウィルコは私たちの部屋をそのままにしてくれていた。

綺麗に掃除されて、ほこり一つ落ちていない部屋を見て切なくなった。私たちが戻る可能性はゼロだったのにウィルコは独りぼっちで、どんな思いで私たちの部屋を掃除していたのだろう。



 私はお役目もない子供なので自由に遊びに来ても許されるからウィルコの世界に頻繁に遊びに来ると決めた。自動的にルイスとモニカとヨルもついてくるだろう。


 子狼の生活も楽しそうだ。

最終話までありがとうございました。


完全な引き篭もりテレワークの生活で、毎日の投稿が生活の張り合いで、皆さまのご訪問が何よりの喜びでした。

不定期な投稿になりますが、今後は番外編として小さくなったカレンの日常を投稿する予定ですので、ご訪問いただけましたら幸いです。



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『飼い主を召喚しました ⋃ ╹ᗊ╹ ⋃』


― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろいです。毎日楽しみにしてたので終わってしまってさみしいです。エンマも好きでした。またいろいろ書いてください。待っています。
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