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第252話 お姉ちゃんはライバル

 つかまり立ちから歩けるようになるまで、あまり時間は掛からなかったが、ヨルとモニカの爆舐めが何度か発生し、その度にギャン泣きされ、夢の中で反省会が開かれた。



「カレンが歩けるようになってきたな!」

「もうほとんど転ばなくなったわね」


 3人のサポートを受けて、つかまり立ち、伝い歩きをしていたカレンだったが、ある日、いきなり危なげなく歩いてみせて3人を喜ばせたが、その日はどんなに働きかけても、もう歩いてくれなかった。しかし翌日から何度も短い距離を歩くようになった。


 つかまり立ちや伝い歩きのサポート役は主にヨルで、ルイスとモニカは期待に満ちた顔でカレンを励ましていることが多い。



 その日もヨルがつかず離れずカレンを側で支える中、カレンが立ち上がった。

 正面左にモニカ、正面右にルイス。ヨチヨチと歩きながらモニカとルイスの少し前で立ち止まった。


「ワフ!(カレン、こっちよ)」

左からモニカが呼びかける。


「カレン、こっちだ」

右からルイスが呼びかける。


 モニカとルイスがお互いを牽制するようにカレンを呼ぶ。


 カレンは困り顔でヨルを振り返り、引き返してヨルに抱きついた。もちろんヨルの尻尾は大喜びだった。



「…ていう事があったわ」

「俺も覚えている」

 夢の中でモニカとルイスが回想する。


「モニカもルイスも、あまりカレンを困らせるんじゃない。2人の内どちらかを選べなんて可哀想だろう」

 大人なヨルがモニカとルイスを諭すが2人は聞いていない。


「そろそろカレンがお喋りするわ」

「最初のお喋りは俺の名前か姉ちゃんか…」

「この勝負は譲れないわよ」

「俺だって負けるつもりはないぜ」


「だから止めろと言っているだろう」

ヨルの言葉は狼の姉弟には届かなかった。



「モニカ」

ルイスが赤ちゃんカレンにモニカを指差してみせる。


「ヨル」

今度はヨルを指差す。


「ルイス」

自分を指差した。


 大型犬のモニカとヨルは人間の言葉を発音できないためルイスがカレンに教えている。常にモニカとヨルが側にいるため抜け駆けはできない。

 カレンはまだ喋れないがルイスに向かって聞く姿勢を崩さない良い子だ。


 カレンの右隣には期待に満ちたモニカ、左にはソワソワと落ち着かないヨル。いつも冷静で大人なヨルがソワソワしているのは珍しい。



モニカを指差して

「モニカ」

ヨルを指差して

「ヨル」

自分を指差して

「ルイス」


 何度も繰り返すがカレンが喋る気配はない。しばらく続ける必要があるのだろう。


「今日はこのくらいにしておこうか」

「ワフ!」

 モニカが返事をしてヨルが肯いたので今日の特訓は終わりだ。


 ルイスがカレンをクッションに運んでお気に入りのぬいぐるみを渡すと嬉しそうに受け取って、ぬいぐるみを掲げてみせた。


「わんわん!」


 柴犬のぬいぐるみを掲げて『わんわん!』を3回繰り返した。



 カレンの最初のお喋りはモニカでもルイスでもヨルでもなく、わんわんだった。3回も繰り返したので勘違いとしてスルーすることも出来ない。


『あんな、ぬいぐるみを買うから!せめてハスキー犬にすれば良かったのに』と、ルイスは夢の中でお姉ちゃんに泣かれた。

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『飼い主を召喚しました ⋃ ╹ᗊ╹ ⋃』


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