第251話 溺愛
「そろそろ、つかまり立ち出来るようになるんじゃないかしら?」
今日も夢の中でルイスとモニカとヨルが会話をしている。
「ハイハイするカレンを見られなくなるのか…」
ヨルはカレンのハイハイが気に入っているため、カレンの成長に淋しさを感じているようだ。
ハイハイするカレンの横にぴったり付いてモニカのところまで誘導する遊びをヨルは気に入っていて毎日何度も繰り返している。
ハイハイでモニカのところまでたどり着くとモニカがカレンにご褒美のスリスリ。
ヨルがベビー服の頸部分を咥えて少し離れた場所にカレンを運ぶ…を繰り返すのだが、かなりの運動量になるため、カレンは毎日たくさん食べてよく眠る。モニカとヨルが側に居てくれるため、いつも機嫌が良い赤ちゃんだ。
「ヨチヨチ歩くカレンも可愛いと思うぞ」
「そうね、きっと可愛いわ」
「…そうだな。歩くようになっても側にいてやらんとな!」
ヨルの尻尾が勢いよく振られる。
ヨルとモニカとルイスは付きっきりでカレンと一緒に過ごしており、些細な変化も見逃さない。
3人の推測通り、間もなくカレンはつかまり立ちに挑戦するようになった。失敗しても、すぐ側で見守るルイスが抱きとめたり、ヨルがベビー服の頸部分を咥えて転倒を防ぐため危険は無かった。
そうやってつかまり立ちしそうで出来ない日々を過ごして…
「立った!」
「ワフ!」
「ウォフ!」
── カレンが立った。
「偉いぞカレン…!」
すぐにヘナヘナと座ってしまったカレンは大喜びのモニカとヨルに爆舐めされて大泣きしてしまい、乳母のマリアさんにお風呂に入れてもらった。
「カレンを泣かせてしまったな…」
「可愛くて止められなかったわ」
その日の夢の中は反省会だった。ヨルとモニカとルイスの耳と尻尾が垂れている。
「…カレンが歩き出すのも時間の問題じゃないか?」
ヨルの一言でモニカとルイスの耳と尻尾が、ぐん!と、上を向く。
「ヨチヨチのカレンは絶対に可愛いわよ!」
「歩けるようになったら一緒に散歩に行こう!」
「カレンが疲れたら俺の背中に乗せてやる」
「いやいや俺の抱っこだろう。俺はカレンの父ちゃんだからな!」
「いやいや俺の背中だろう」
答えの出ないお喋りは明け方まで続いた。




