第246話 生まれ直したカレン
── ここはアメリカ。カントリーミュージック界で人気を集める20代の男性ソロミュージシャンの豪邸。
豪邸の主人であるミュージシャンが愛娘を抱いている。
「ほんぎゃあー!!」
「カレン、腹が減ったのか?おーいマリアー、マリアー」
豪邸の主人が愛娘の乳母を呼ぶ。
「はいはい、お待たせしました」
「頼むよマリア」
主人が抱いていた愛娘を乳母のマリアさんに渡し、両手で顔を覆って衝立の向こうへ隠れる。
子供部屋の真ん中でカレンと名づけられた赤ちゃんに乳母のマリアが授乳する。
乳母のマリアはメキシコ出身のシングルマザーで、授乳やオムツ替えのたびに自ら衝立の影に隠れる主人を、少し変わっているけど良い主人で良い父親だと思っている。普通に考えたら隠れるのは授乳するマリアだ。
マリアの雇い主は、全面的に愛娘の世話をしたいけれど愛娘が思春期になった時にオムツ替えやお風呂の世話をしていたことが発覚したら『お父さんのエッチ!』と嫌われてしまうかも…という理由でオムツ替えとお風呂の世話を諦めたという。たまに発生する粉ミルクの授乳に大喜びしている。
愛娘の母で別れた妻は野心家のプレイメイトだ。カレンを産んで即離婚、メジャーリーグのスター選手と熱愛、すぐに別れて現在は全米に展開するスーパーマーケットの御曹司と熱愛中だ。
「おや、お腹いっぱいですか?ルイスさん、カレンちゃんがお腹いっぱいですよ」
「よかったな、カレン!」
衝立から出てくるとマリアからカレンを抱きとって背中をトントンする。
── ルイスだった。
生まれ変わったカレンの父親になりたくて理を曲げて自分も転生してしまった、聞き分けのないルイスだった。




