第245話 シモンさんとテラ様が来た
安成村を訪問した翌日は結界で休養日にして狼の姿でくつろぐルイス狼とモニカ狼をウィルコと私がブラッシングしている。
「無事に醤油と味噌が手に入って良かったな!」
「安成村に寄ったのも良かったわ。これでウィルコの世界にも旨辛いメニューが定着するわね」
「ありがとう、みんなのおかげだよ」
さらにブラッシングするとモフモフが増してルイス狼とモニカ狼がデカ可愛い。
「お邪魔しますよ」
ふかふかになったルイス狼とモニカ狼をモフっているとシモンさんとテラ様がやって来た。
「シモン?」
「テラ様、いらっしゃい!」
「今日はどうしたんだ?」
特に約束は無かったと思うんだけど会えて嬉しい。
「今日はカレンさんを迎えに来ました」
「私を?」
何か約束していたっけ?
「カレンさんのポイントが上限に達しました」
── それって…
ウィルコの世界の倫理観や文化レベルの向上に協力、達成度合いによって来世の環境を希望通りにカスタマイズ出来るって話だったっけ。
食料自給率、倫理、治安、芸術、いろいろな指標を合わせて100%を超えたら好きな国の好みの経済状態の家庭を選択して生まれ直せるって約束だった。
指標100%を超えた分はオプションで美人度とかIQとか文学の才能とかオプションで何でもつけられるって言ってたっけ。
「西の王国の改革で経済も治安も文化もオーガニックな成長を見込めるようになりました。国内の格差も遠からず解消見込みです。さらに大陸の東側へのテコ入れ。カレンさんのポイントが上限を超えました」
不安そうなモニカ狼が右にぴったり密着してきた。ウィルコは左に、ルイス狼は真後ろに密着して私の頭に顎を乗せている。
「シモンたらカレンを連れていくつもり?」
「モニカ、カレンさんは生まれ変わるのです。これは誰にも止められません」
「そうだけど…カレン…」
モニカの耳と尻尾が下を向いてしまった。
「モニカ…いつかお別れしなきゃいけないって分かっていたけど…」
── ダメだ泣いてしまう。モニカ狼が私の涙をペロっとした。いつもの優しいモニカ狼だ。
「カレンたちの頑張りを無駄にしないとウィルコも思っているはずですよ」
「そりゃあ…台無しになんて出来ないよ」
「ウィルコ…」
「では行きますよ」
「もう!?」
「仕方ないのです。ポイントが上限を超えてしまいましたので猶予がありません。西の王国だった国で農業が思いのほか順調で今年は豊作の見込みであることや、選挙で選ばれたリーダーたちの指導力が想定外に高く、予想を超える成果を出しているのです」
「それは嬉しいよ……でも突然すぎて…ひっく」
情け無いけど泣いてしまって、ちゃんと話せない。
「カレンちゃん。ごめんね、でも理を曲げることはできないの」
「テラしゃま…」
「さあ、お別れして」
「ウィルコ、私にチャンスをくれてありがとう。ウィルコと一緒で楽しかったよ」
「僕もカレン一緒で楽しかったよ。僕の世界のためにありがとう」
ウィルコに抱きついたらぎゅっとハグしてくれた。
「モニカ大好き」
ふかふかの毛皮に抱きついたら耳元でモニカ狼のピスピス音が聞こえた。
「ルイスもありがとう」
「カレン…」
ルイスの毛皮にモフっと抱きついたら頬毛ですりすりされた。このすりすりも今日が最後だ。
「じゃあ行くわよ」
テラ様に抱き上げられた。
「以前カレンさんから申請のあった内容全て実現します。どの項目も最高レベルを満たした状態で地球に転生となります」
地球に転生だからテラ様が迎えに来てくれたんだ、ありがとうテラ様。
最後にウィルコとモニカ狼とルイス狼の姿を目に焼きつけたかったけど泣き過ぎて無理だった。




